待機児童問題が深刻化する中、「子連れ出勤」を認めるある会社が現れました。どんなことになっているのか?3月12日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
日本経済新聞の調査では、待機児童の多い首都圏の東京23区と政令指定都市で、今年4月に認可保育所に入所を希望する人が、受け入れ枠を2万人余り上回ることがわかったということです。社内に託児所を作る会社も出てきていますが、そこまでできる企業は少ない状況。そうした中で、職場に「子連れ出勤OK」という取り組みを行い、成功している会社がありました。どういうことか?導入しているソウ・エクスペリエンスの代表・西村琢さんお話です。
★親と子が一緒に居ながら働く「子連れ出勤OK」な会社
- ソウ・エクスペリエンス・代表 西村琢
- 「子連れ出勤とは文字通り、子どもを連れて出勤できるという状態です。毎日連れて来る人もいるし、たまに連れて来る人もいる。子どもの年齢も3歳ぐらいまでにしようというルールはあるが、慣れた子どもであれば4~5歳のケースもあったり様々。今も何人かいますが、おんぶされて寝ちゃってる子もいるし、机でパソコン作業している大人の間に子どもが座って並んでて、イスに座って絵を描いてる事も普通にある。」
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ソウ・エクスペリエンス・代表の西村琢さん
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社内の一部スペースに設けられた土足禁止エリアでは、子供たちも自由に動き回っていました。机の角をスポンジで覆うなどの配慮もされています
取材したオフィスの広さは80坪程度。そこでは30人くらいが働いており、毎日、子どもは3~4人いるそうです。親の勤務時間に合わせて1~2時間くらい滞在する子や、朝~夕方まで過ごす子もいます。基本的には子どもたちは会社の4分の1のエリアにある「土足禁止エリア」にますが、大人が働いている作業机に一緒に並んでお絵かきしたり、親御さんのひざの上に乗っていたりと比較的自由に動いていました。
子どもを連れてきている理由は、保育園に入所できない状態の子ども(待機児童)を持つ親御さんが、「保育園に預けられなかったけど働きたい」ということで連れてきているケースや、「保育園には入ってるけど帰りが遅そうで迎えにいけないので、今日は連れて行こう」というケースなどがあるそうです。事前に申請などの必要がないのも、働く親にとっては嬉しいポイントかもしれません。
★生産性は下がるが、長く働いてもらうことに価値を置く
そこで気になるのは、果たして仕事がはかどるのかどうか、という点です。西村さんに聞いてみました。
- ソウ・エクスペリエンス・代表 西村琢
- 「生産性が落ちるか落ちないか聞かれれば、多少は落ちると思う。オムツしている子であればオムツ替えが必要だし、誰かが時間を割いているケースはあるので、その時間は目の前の仕事はできていないので生産性は下がる。ただ、僕らとしては短期的にどうこうというよりも、子どもがいても気持ちよく安心して働けたり、ある程度長く働いてくれることが会社としての価値だと思う。単純に採用にかける手間も省けるので、目先の生産性は下がるけど、長い目で見たら結構得してる印象。」
新たに採用すると言っても、コストや時間など、会社にとって負担があります。その面で、今まで働いていた人に長く働いてもらう方が、会社にとってはプラスに動くとのことでした。
★子育て世代は賛成派多数!一方で心配も…
では、こうした取り組みについて、街の人はどう思うのか?聞いてみました。
- ●「僕はいいと思いますよ。保育園とか託児所とか預けられるところがないわけじゃないですか。会社が認めてくれるなら、子どもを横においておくのは良いと思いますね。心配事としては、子ども嫌いな人もいる…。」
- ●「保育園に入れない子たちも居る中で、仕事しないとお金がなくなるので、そういう所あった方がありがたい。OKにしている以上、周りも賛同しなければならないんじゃないですかね。」
- ●「3歳ぐらいまでなら運動量があまりないのでいいと思う。ただ、結婚してなくて若い方とか、子育て終わってる人など、当事者じゃないと理解は難しいんじゃないかな。」
今回は、0歳~4歳までの子どもを連れている親御さんに話を伺いましたが、「子連れOK」という取り組みについては概ね賛成でした。
★周囲の理解は必要不可欠
ただ、子ども嫌いな人や若い世代、子育てが終わった人など、職場には色々な人がいるので、周りの理解が得られるかどうかが心配という声がありました。先ほどのソウ・エクスペリエンスの従業員で、実際にお子さんを連れてきている人に話を聞いてみました。
- 1歳のお子さんを連れて来ている母親
- 「週2~3回のペースで働いているが、毎回つれてきている。最初は皆様にご迷惑にならないのかが1番心配で、仕事もはかどらないのではないかという気持ちがあった。保育園にも入れなかったしよかったと思う。」
- 2歳のお子さんを連れて来ている父親
- 「連れて来るのは週1。もちろん向き不向きはあると思うので、向かない会社の方が多いと思うが、そういう意味で助け合わないとしょうがないとみんな思っていると思う。」
周囲の理解があるからこそ、仕事に力を入れられているという声がありました。一方で業種・業態によっては向き不向きもあるので、周りの理解がないと難しいという声も出てきました。
★工夫次第で、子連れ出勤は実現できる
確かに、ほかの会社が真似するにはハードルが高い部分もあるかも知れませんが、代表の西村さんは、最後にこんな案もあるのではないかと教えてくれました。
- ソウ・エクスペリエンス・代表 西村琢
- 「実際に見学会を1~2ヶ月に1回やると、小さい会社からも、上場している大きい会社からもいっぱい来る。関心は高そうだが、そこから導入が進んでいるかというと、そうではない現実があって…。うまく進めていく会社もあるが、数百人ぐらい居ると、反対意見は絶対に出てくる。なので、フロアとか一部のスペースを使ったり、場合によっては部屋を設けるとか、子連れで来た人はここで働きましょうとか、それはすごく現実的だなぁと思う。」
託児所を作る場所はないけれど、会社の一部のエリアを「子連れOK」にして上手く回しているケースもあるそうなので、導入できる企業があればアドバイスしていきたいと話していました。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!