東京オリンピック開幕まで、きょうで200日となりました。そんな中、陸上界で起きている大きな変化について、1月6日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
大きな変化の一つが、新国立競技場の「トラック」です。100メートルやリレーなど陸上競技で使われるトラックに、イタリアのモンド社のトラックが採用されました。その特徴について、日本で代理販売をしているクリヤマ株式会社・オリンピック推進室長の西田昌弘さんに聞きました。
★新国立競技場で採用された、ゴム製のトラックが凄い!
- クリヤマ株式会社・オリンピック推進室長 西田昌弘さん
- 「アスリートの為に作られたトラック。製品的にはゴム製で滑りにくく、衝撃吸収性、反発性に富んでいる。形状的に、下層部分に空気層が出来ていて、選手が着地した際に衝撃を吸収し、そのまま推進方向に反発するので、安全性と反発して選手を押し上げていくので記録につながるトラックです。」
今回、新国立競技場にも採用されたモンド社製のトラックは、吸収性と反発性の両方を兼ね備え、ゴムの特徴がいかされています。国内では、大小合わせて100カ所ほどの全天候型の競技場で採用されていて、鳥取市の布施にある陸上競技場や、日本のトップレベルの選手がトレーニングするナショナルトレーニングセンターなどで導入されているそうです。
★世界記録の7割がこのトラックで達成
さらにこのトラックは、「記録が出やすいトラック」とも言われています。東京オリンピックで好記録が続出する可能性もありそうですが、その実力のほどを、西田さんに聞いてみました。
- クリヤマ株式会社・オリンピック推進室長 西田昌弘さん
- 「世界ではモンド社の実績からすると4000ヵ所の実績がある。五輪の競技場ではバルセロナ大会から8回連続してモンドのトラックが使われている。それだけオリンピックに関わりのあるメーカーの材料で、現在の世界記録の7割がモンドトラックの上で誕生している。」
もしかすると、東京オリンピックで日本新記録や世界新記録が出るかもしれないと仰っていて、記録にどう影響してくるか楽しみです。
★これまでの常識を覆す「ピン無しスパイク」誕生
一方で、そのトラックを走る選手たちのスパイク(シューズ)にも大きな変化がありました。最近、陸上の長距離界ではナイキの厚底シューズを履く選手が増えていて話題になっていますが、短距離界でも革命が起きています。スポーツメーカーのアシックスが開発したスパイク革命、その名も「次世代・陸上・スプリントシューズ」。詳しいお話を、アシックス・スポーツ工学研究所の小塚祐也さんに伺いました。
- アシックス・スポーツ工学研究所 小塚祐也さん
- 「一番の特徴は、ピンを無くしたところ。従来はスパイクピンがあるのが一般的だが、そこから一線を画して、次世代の靴底は主にカーボン素材を使っていて、カーボン素材の突起でグリップ力を発揮する靴底になっている。見た目も通常と異なる。開発段階から桐生選手には40足程度履いてもらって、改善しながら今の形が出来た。」
従来のスパイクは靴底にピンが付いていますが、次世代スパイクはピンの代わりに“ハチの巣構造”と言われる突起が集まっていて、これまでの常識を覆す作りになっています。
★ピンの抜き差しは、タイムロスだった!?
次世代スパイクは桐生選手が去年9月の世界陸上で履いた事で注目を集めましたが、このスパイクの開発にはこんな経緯があったようです。再び小塚さんのお話。
- アシックス・スポーツ工学研究所 小塚祐也さん
- 「開発のキッカケは、選手の声を聴いていると「ピンが刺さって抜ける感覚がある」と聞いた。そこから着想をえて、もし感じる時間を無くす事、つまりピンが刺さって抜ける時間を無くせば、より速く走れる靴が出来ると言う仮説を持って開発を進めた。一般的に少ない時間だと思うが、100メートルを走るには45歩の歩数が必要。一歩の時間を減らせば大きく時間を減らせる。」
小塚さん達は、突起部分をミリ単位で改良するなど試行錯誤の上でこの形にたどり着き、現在も改良を続けているそうです。
★桐生選手の足元に注目!
これは「東京オリンピックでたくさんの選手が履くことになるのでは?」と思ったので、最後に小塚さんに聞いてみました。
- アシックス・スポーツ工学研究所 小塚祐也さん
- 「やはり桐生選手に履いて貰った事もあって、国を問わず履いてみたいと言う選手はいる。(五輪で使う人は増える?)代表選手が決まっていないので誰とは言えないが、候補はいる。特に桐生選手は五輪に向けて進化しているので、それに合わせて靴底も進化させています。」
代表選手が選ばれるのは、今年6月以降。実際のオリンピックでどれくらいの選手が次世代スパイクを使うか、注目です。