このコーナーで何度か取り上げているデジタルメガネ「MW10 HiKARI(エムダブリューテン・ヒカリ)」の続報について、12月18日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
〜過去の放送はこちら〜
▼製品が完成した時(2017.10.10)
「夜盲」を助ける画期的めがねが誕生!見えないものが見える!
▼全国発売になった時(2018.11.5)
「暗くても見える!」夜盲症を救うメガネが発売に!
▼性能が進化した時(2019.6.17)
夜盲症でも視野狭窄でも見える!HOYAの眼鏡「WM10 HiKARI」
▼プレゼント企画の体験会を行った時(2019.8.5)
夜盲症を助ける!HOYA「MW10」プレゼントしました
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「HOYA MW10」
HOYAが開発したこのメガネは、夜、暗いところで見えなくなる目の病気「夜盲症」の方向けに作られました。表側にはカメラが付いていて、レンズの内側にディスプレイが浮かんで見えるんですが、外の景色が夜でも明るくカラーで映し出されるという、ハイテクなメガネです。
番組では今年、この「MW10」のプレゼント企画を実施。6組の方が当選し、7月には当選者を集めて体験会を行いました。今回は「当選者の方々のその後」を取材したので、約5ヶ月使ってみてどうなのか伺いました。まずは一人目の当選者、小国さんのお話。
★「避難所に行ける」という安心感
- 小国さん
- 「基本は、すり足や手探りで暗い所を歩く中で、MW10があれば、壁伝いじゃなくても歩けるようになってきました。ただ癖があるので、慣れて練習していけば、もうちょっと歩けるようになるかもしれないという感じです。このあいだ、大きい台風が来たましたが、ああいう時にこれがあれば逃げられるという安心感がありました。子供ができてからは、見えない中でも行くしかないと不安だったので、これをつけたら避難所までいけるぞと、持って初めて実感できました。」
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7月の体験会の様子(小国さん)
夜盲症は、ちょっと薄暗くなる夕方ごろから見えなくなるので、万が一台風や地震で避難が必要になった場合、どうやって逃げようと思っていたそうですが、このMW10が手元にあることで、心理的な安心感が生まれたと仰っていました。
★彫刻の作品づくりに活用
続いて二人目の当選者、高見直宏さんのお話。
- 高見直宏さん
- 「子供がいてお月様が好きで、お月様を一緒に眺めに行くのに使ったりしています。あと、彫刻を制作していて、当初期待していたような手元の作業については、まだまだかなと思いますが、やはり暗い場所での作品全体のチェックなどでは、すごく力を発揮してくれている印象です。」
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7月の体験会の様子(高見さん)
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高見さんが彫刻活動を行うアトリエにお邪魔しました ※このサングラスはMW10ではありません
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こんな感じで作品を組み立てて、夜、全体像を眺める時にMW10が活躍するそうです
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アトリエにはMW10がしっかりと置かれていました!
高見さんは、彫刻家として活動している方。MW10は、目の前に浮かんで見えるディスプレイが視野の上の方に来るので、真下を向く作業には不向き。ただ、薄暗い中で行う全体像のチェックには大活躍しているということで、お二人とも試行錯誤しながら、MW10の使いどころを模索していました。
★MW10を補助金支給対象に!リスナーが狛江市へ直訴
そして、この高見さんが、番組をきっかけにある行動を起こしたようなんです。
- 高見直宏さん
- 「狛江市議会に陳情書を提出しました。「MW10」が補装具として認可が降りて、市から補助金が降りるように陳情しました。視野が削られてきたり見えなくなって困っている方はたくさんいます。同じ苦しみを味わっている仲間なので、少しでも力になれるようなことがあればと。金額的にも安いものではないので、安価に手に入れば使えると思いますし。小さい市ですが、ここから東京、日本中に広がっていく一つのきっかけになればと思っています。」
狛江市民である高見さんが、市に直訴。MW10は、お値段約40万円と高額なんですが、補装具(日常生活用具)として認可を受ければ、補助金が出て、原則、購入費の1割の負担で購入できるそうです。ただ、今までなかったジャンルの製品というのは前例がないので、補助の対象に加わるのがすごく難しい…。ですが実は今年、熊本県天草市がMW10を初めて認可し、その前例を受けて、新宿区も認めたという動きがありました。
★狛江市では前向きな検討が進む
となると、今度は狛江市がどうなるかということですが…、先ほどの高見さんの陳情はどうだったのか。狛江市、高齢障害課長の加藤達朗さんに伺いました。
- 狛江市・高齢障害課長 加藤達朗さん
- 「TBSラジオさんで当選された方で狛江市にお住まいの方がいて、実際にこの製品を使っているご本人の話を聞く機会がありました。実はその時私も体験的に装着して、本当にすごいというのが率直な感想。既に熊本県天草市のように、先進的に対象品に追加していることが参考になっています。今後についてはまだ確定はしていないが、なるべく早い内に対象製品として追加したいと考えていて取り組みを進めています。是非、若い方たちに使ってもらえる状況が広がっていくと、本当に助けになるのは間違いないと思います。」
狛江市に住んでいる当選者とは、もちろん高見さんのこと。日常生活用具として認められるためには「有効性」が肝になるのですが、今回、天草市で既に実績があったことに加えて、市民である高見さんが自分の体験に基づいて訴えたことで、市も前向きに動き出したようです。今後、議会で承認を得て予算が確保できれば、加藤さんの気持ちとしては、早ければ来年度から承認されて欲しいということでした。
プレゼントをきっかけに、当選された方の暮らしが改善されて、その方が市に働きかけて、それがきっかけで市が動き出して、そして今度は狛江市民にもプラスに働いていきそう…。このようなサイクルが起きていることが、今回取材してみてわかりました。
★HOYA「今後は周りへの理解も広げたい」
ではこの動き、HOYAはどう見ているのか。MW10を開発した、HOYA株式会社の石塚隆之さんに伺いました。
- HOYA株式会社 石塚隆之さん
- 「当選者の方が、自分のことだけでなく、自ら働きかけたのがとても嬉しい。困ってる人を助けたいという“想いの伝播”を感じた。実は、このような方が全国的に、患者・医者の動きがあって、むしろ支えられているのは私達の方なんだなと。あと、患者だけでなく、周囲の方の啓発もしなければいけないと思う。目の不自由な方が困っていることの一つに、「周りへの理解、社会が受け入れてくれているか」というのがある。健常者含めて、全員に情報発信するのも私たちの役目であり、そのことが視覚障害者の期待に応えることだと思うようになった。」
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HOYA株式会社 石塚隆之さん
今まではMW10を患者さんに売るという活動が中心でしたが、今後は、この機器に対する理解を深めつつ、夜盲症そのものの理解も広げられるように、患者以外にも訴えていきたいと話していました。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!