きょうは、高齢化や核家族化が進み、社会的な課題となる「孤食問題」について、11月11日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
一人で食事を食べる「孤食」。反対に誰かと一緒に食事するのは「共食」と言われますが、孤食は健康長寿の阻害要因と指摘されていて、孤食が死亡リスクを高める事や、食欲減退、栄養バランスの偏りなど様々な問題が指摘されています。
そうした孤食問題の解決に向けた様々な研究が進んでいるんですが、手軽に食事の質を高められるかもしれない研究結果がありました。研究をした名古屋大学大学院・特任講師の中田龍三郎さんにお話を伺いました。
★「鏡」を見ながら食べると美味しく感じる
- 名古屋大学大学院・特任講師 中田龍三郎さん
- 「1人でポップコーンを食べて味の評価をしてもらう。その時にいくつか条件があり、1つの条件では上半身の映る鏡の前で食べる。もう1つはモニターを置くが人は映らない。その2つで食べていると、鏡の前だと美味しくなった。さらに食べる量も増える結果が出た。日頃は鏡を見て食べる事は無いが、実験的にやると美味しくなったという事になる。」
鏡を見つめて食事…。少し寂しい感じもしますが、研究では高齢者と大学生を対象に行われ、どの年代でも同じ結果になったそうです。
もともと中田先生は高齢者の行動や心理を中心に研究を進める中で、高齢者の孤食問題を考えるようになったそうなんですが、「人と一緒に食べると食事が美味しく感じる」という事に着目して、その相手が自分でも同じように美味しく感じるんじゃないかと鏡を置いてみたそうです。
★孤食・共食、どちら?
では、実際に高齢者の方で孤食の人は多いのか、街で聞いてみました。
- ●「亭主殿と。この年になるとテレビ見ながら。子供が独立して2人だと話の種はない。」
- ●「1人暮らしで1人が多い。寂しいでしょ~でもちゃんと作る。」
- ●「朝は息子とで昼と夜は1人です。寂しいと言うより面倒くさい1人で食べるのは。だからどうしてもパンを買ったり、夜なんかは有り合わせで朝の息子のために作ってつまんでって感じ。」
意外と孤食の人が多い印象で、一人だとどうしても簡単な食事で済ましてしまうという方もいました。また、共食でも夫婦間の会話が少なくなってしまう方も…。
★テレビ電話の“遠隔共食”で、幸福感が向上
そして、そんな問題を解消できるかもしれない研究結果もありました。こちらは東京電機大学の研究グループの研究結果という事で、共同研究員の徳永弘子さんに詳しいお話を伺いました。
- 東京電機大学・研究グループ・共同研究員 徳永弘子さん
- 「離れて暮らす親子の両方の家にタブレットを置いて、好きなタイミングで遠隔共食でお互いの食卓を共有しながら食事をする。高齢者の方で大きな変化が出た部分では、夫婦間の会話が増えてきたと。あとは心理状況を日記で測ったら、意欲や体調など主観的幸福感が向上するという結果が遠隔でも可能だった。」
この研究は文部科学省の支援を受けて行われて、一定期間、タブレットを使ったテレビ電話のような形で遠隔共食をしてもらったところ、一定の効果が確認されたそうです。スマホでもテレビ電話はできるので、親子に限らず、友人同士でもすぐに出来そうです。
★遠隔共食で、食事の内容も変化
他にも、遠隔共食には孤食問題の解決に向けたメリットがあるようです。
- 東京電機大学・研究グループ・共同研究員 徳永弘子さん
- 「遠隔共食の場合は、相手に自分の食べている物を見られる。ある程度の物を作らないとお母さんそんな物食べてるの!今日もカップ麺なの!とかの会話がたまにある。あとは子供側で多かったのは、買ってきたトレーそのままである事を指摘する会話もあった。会話が途切れた際にも相手の食卓の物を話題に会話を復活させる事もあった。」
今後は、事前に連絡を取り合わなくても、「冷蔵庫の開閉」や「水道の利用状況」などをセンサーで感知する機能を搭載し、「そろそろ夕食の準備を始めた頃かな」という風に、相手の食事のタイミングが分かるような研究を進めていくそうです。
★大皿を取り分ける作業でコミュニケーションが活性
さらに、徳永さん達は、遠隔共食を発展させた研究をしていると教えてくれました。
- 東京電機大学・研究グループ・共同研究員 徳永弘子さん
- 「今は、地域の高齢者の横の繋がりとして複数の高齢者が外食する時に、“御膳スタイル”の食事と同じメニューを大皿で取り分けるスタイルで提供した場合に、たくさん会話が出来る場を食事の形式からサポートすると、コミュニケーションの行動がどう変わるかという実験を終わらせて、解析してる。」
食事の形式で会話の形を変化させていくといった研究の可能性は、ますます広がっていきそうです。