先月の放送で取り上げた工学院大学の世界一への挑戦「2019 Bridgestone World Solar Challenge」が行われました。このレースはオーストラリアを縦断して、3000キロの距離をキャンプをしながら走破すると言うものです。このレースに、工学院大学は学生が主体となって、車体の設計から制作まで2年の歳月を掛けて、オリジナルのソーラーカー「イーグル」を完成させて挑戦していました。ただでさえ過酷な環境で行われるレースですが、工学院大学の結果は27チーム中、5位入賞!しかし、今年のレースは波乱含みのレースとなっていたそうなんです…。10月28日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
レースはどんな具合だったのか?まずは工学院大学・教授でソーラーカーチーム監督の濱根洋人さんに詳しいお話を伺いました。
★半分以上がリタイア!「風」に翻弄された今大会
- 工学院大学・教授 濱根洋人さん
- 「今回は、日本で言う「春一番」が吹くような過酷な気候のレースで、上位チームが次から次と風で吹き飛ばされた。直せたチームは復帰できるけど、27チーム中11チームのみ完走、半分以上がリタイアした。我々の車も風で2回、道路の外に弾き飛ばされた。毎日毎日が試練で、よくどん底から這い上がった感じ。学生の気持ちが凄かった。」
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オーストラリアの大地を駆け抜けた工学院大学の「イーグル」
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砂嵐が吹き荒れると一時避難し、トラックの車体で「イーグル」の車体を守ります
今年のレースで、各国チームの行く手を阻んだのは風。レース中、砂嵐や竜巻、突風が吹き荒れるといった過酷な環境が続いたそうなんです。そんな中、前回大会優勝の強豪、オランダのチームは横転して車両が炎上、リタイアに追い込まれました。他にも、風で横転する車が相次いだそうです。
★風で吹き飛ばされて車体が大破!
そこで、メカニックを担当した修士2年の相原創治さんに、レースを終えての感想を伺いました。
- 工学院大学・修士2年(メカニック担当)相原創治さん
- 「2年間かけたレースなので、やっと終わったというのと、意外に2年が早く終わってしまった。一番印象に残っているのは車の横転や故障。毎日、横転以外にもブレーキの故障など色々とあったので、毎日12時くらいまで4〜5時間整備していた。でもレース中に壊れたのはショックもあったが、直す作業も楽しく出来た。完走出来ていなければ悔しさが残るけど、完走出来たので楽しかったと思えますね。」
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強風で横転し、破損したイーグル。ドライバーは無事だったということです
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「Never give up!!」の精神で修復完了!
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時には、夜な夜なイーグルの車体を修繕することも…。作業は深夜まで続きます
工学院大学のソーラーカー「イーグル」は、レース初日にモータートラブルに見舞われ、3日目と4日目には2日続けて強風で車体が横転。ただ、レースの最中でも夜間でも、トラブルが起きる度に学生さんたちは全力を尽くして修理に当たり、「ネバーギブアップ」を合言葉に3000キロを6日間掛けて完走したということで、相原さんとしては後悔よりも充実感の方が大きいと話していました。
★車体の実力を発揮させてあげられなかった悔しさも…
一方で、レース中にドライバーに指示を出す役目を担っていた、修士2年の安部達哉さんはこんな思いだったようです。
- 工学院大学・修士2年(エネルギーマネージメント担当)安部達哉さん
- 「自分は設計も多少はやらせてもらったが、メインはエネルギーマネージメント。メカや電気が作った車体が凄くスペックの良いモノで、初日走った時も勝てると思っていた。それなのに、スペックを最大限に出してあげられず、ゴールの時に「良く頑張ったな」という状態に持っていけなかったのが後悔ですね。責任も感じたし、純粋に自分達の車の限界を証明出来なかったのが悲しくて残念だった。」
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左から安部さん、相原さん、濱根先生
学生さんたちはイーグルの能力に自信を持っていたこともあって、全力を出し切れなかったという思いは少なからずあるようでした。ただ、1ヶ月半前よりも真っ黒に日焼けしていたお二人の顔は自信に溢れていて、頼もしさが増した印象でした。
★テクニカルイノベーションアワード受賞!
レースは2年に1度開催されるため、工学院大学も今後は2年後のレースに向けて準備を進めるということですが、今年のレースに満身創痍で挑んだ車体「イーグル」について、レースの後、こんなサプライズもあったそうです。
- 工学院大学・修士2年(メカニック担当)相原創治さん
- 「今回使った「ハイドロニューマチック・サスペンション」が、今回出場したソーラーカーの中で一番革新的な技術ということで、賞を取れたので嬉しかった。やっと完走出来てホッとして賞も戴いたので、凄い充実したと言うか良かった。このサスペンション自体は自家用車に使っている所もあるので、今後は他のソーラーカーチームが同じようなものを使うようになったら自分たちが最初だったと思えるので、2年後に他のチームが使うのかどうかも楽しみです。」
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この「サスペンション」が賞を受賞しました
今回、ソーラーカーに初搭載したサスペンションは、相原さんも設計から関わっていたこともあり、日本の学生の技術が世界で認められた事を喜んでいました。
ちなみに、現在開催中の「第46回 東京モーターショー2019」ブリヂストンブースにて、前回参戦車両が展示されています。一般公開は10月25日~11月4日ということなので、気になる方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!