今年のお盆は、盆入りが8月13日・盆明けが8月16日で、この時期実家に帰省されている方も多いと思います。そこできょうはお墓参りについて、8月12日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
お盆休みに入り、きょうは帰省ラッシュがピークを迎えていますが、まずは街の皆さんに、「今年お墓参りに行く予定はありますか」と聞いてみました。
★遠くてお墓参りに行けない人も
- ●「行かない。車がないから行けないんだよ。」
- ●「私は行きます。毎年15日に家族でそろって行くって決めているので、15日は仕事も休みを取って行くようにしてます。」
- ●「もう行きました。1年に3回行ってます。」
- ●「行けないですね。おじいちゃんおばあちゃんが亡くなっているんですけど、写真が家にあるので、それでお墓参りではないけど感謝を伝えようかなと思っています。地元が福島なので、帰るのもちょっと大変なので、離れてるからこそいいかなってなってしまう。」
東京で働いていて実家が遠方にある人は、日帰りでは帰れないので、お墓参りは数年に1回のペースになってしまう方もいました。最近は特に猛暑ということもあり、屋外のお墓参りは体力的にも厳しく、足が遠のいてしまう方も少なくないのではないでしょうか。
★お参りはカードで“ピッ”!
そんな中、近年、お墓参りの形が変わってきているようです。眞敬寺(しんきょうじ)「蔵前陵苑」の住職、釋朋宣(しゃくほうせん)さんのお話です。
- 眞敬寺「蔵前陵苑」・住職 釋朋宣さん
- 「眞敬寺「蔵前陵苑」の納骨堂は、“搬送式納骨堂”です。これは、亡くなられた御遺骨が入ったお箱=「お厨子(ずし)」が、お参りに来たお墓に運ばれてくる納骨堂です。蔵前陵苑にご縁を繋いでいただいた方には、参拝カードをお渡しします。そのカード1枚お持ちいただければ、墓所にカードをかざすだけで、お骨の入ったお厨子が皆様のところに運ばれてきます。」
「蔵前陵苑」は7階建てのビルで、その3階と6階に室内墓所が設置されています。“搬送式納骨堂”なのでお骨が搬送されてくるんですが、お墓自体が運ばれてくるわけではありません。お参りに来た人はICカードをピッとすると、遺骨が入った箱=「厨子」がオートマで運ばれてきて、名前の部分がくりぬかれた暮石にガッチャンゴッチャンとはめ込まれる、という仕組み。お墓に供えられた花はプリザーブドフラワー、そして焼香も完備されていて、室内の涼しい環境の中でお墓参りができるので、カード1枚持ってくれば手ぶらでお参りができるんです。
また、宗派を問わず入ることもでき、場所も都内で行きやすい為、ちょっとした時間でもお参りに来られると話している利用者もいました。
★インターネットでお参り
「IT」と「お墓参り」、異色の組み合わせに感じますが、実は、このようなお墓参りのスタイルは他にもありました。すがも平和霊苑の住職、松島龍戒さんのお話。
- すがも平和霊苑・住職 松島龍戒さん
- 「インターネットを利用したお墓参り。お墓というと、①お骨を納めておく場所 ②そのお墓に誰が入っているかを記録を残しておく場所の二つの役割があるが、「②記録」の部分をインターネットに保存して、遠くにいる方でもスマホや自宅のPCから閲覧できる。普通のお墓には、亡くなった方のお名前・戒名・享年何歳というような情報しか刻まれていないが、インターネットのお墓はそれに加え、写真や、残された人に託したい言葉や、絵描きさんが絵を取り込んだり、卒業証書など、生前の記録を残すことができる。」
このサービス、すがも平和霊園の中に実物のお墓はあります。ただし、墓石に刻まれる亡くなった方の情報=墓誌をネット上に記すことで、自宅にいながらでも手軽にお墓参りができるシステムなんです。ページには、生前の写真や動画を載せることも可能です。例えば生前、本人の希望で散骨した場合お墓を持たないので、どこにお参りをすれば良いかわからず困っている遺族の方に需要があるそうです。
★ハイテクなお墓参りが求められる
このようにITの進歩により、お墓参りもハイテクになってきています。ところが従来型のお墓参りのように、「実際に足を運んで手を合わせたり、雑草取りや掃除をした方が、亡くなった方のためになるのではないか」と思う気もしますが…、最後に、松島さんはこう話してくれました。
- すがも平和霊苑・住職 松島龍戒さん
- 「供養したいという思いを起こして実際に体を動かして、大変な思いをしてお墓に来て、お骨の近くで手を合わせる、もちろんそれに越したことはない。だけど、それができない方が供養の気持ちが足りないかとなると、絶対それは違う。私自身が寺でお墓というものに携わる中で、お子さんがいないのでお墓どうしたらいいんだ、あるいは娘しかいない、嫁いでしまえばなくなってしまうんだという相談を目の当たりにしていると、多様化する家族の形態にお墓の側が合わせていかなければいけないという実感があった。お寺というのは、檀家制度や、お墓の維持の制度など、伝統的でなかなか変え難いものがあって、一般の方がその制度に合わせなければならないという状況があるけれども、むしろお寺の側が、変わっていく価値観や家族の形態に合わせていく大事さは、現場での実感で感じます。」
これからの時代はお寺側が、お墓参りに行けなかった人たちや、残された遺族の方たちのために、お墓参りを身近なものにする工夫が重要になるということです。