全国の特産品が気軽に買える「アンテナショップ」。東京都内の出店数が去年、過去最多を更新しました。その多くは有楽町・銀座あたりにありますが、最近は都内でも意外な場所にお店を構えるアンテナショップが増えています。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で、レポーター真野淑實(まのよしみ)が取材報告しました。
★下高井戸商店街と北海道中川町がタッグ!
まずは、北海道中川町の「ナカガワのナカガワ」こちらは世田谷区の京王線・下高井戸が最寄りです。なかなかシブイ場所にあると思ったのですが、一体なぜこの立地なのか?店長の村上和さんに聞きました。
- 「ナカガワのナカガワ」村上和さん
- 下高井戸商店街とは18年位の仲になっていて、ずっとここのお祭りに出させてもらったりとか、商店街の人が中川町に来てたりもしてたので、そのつながりで今ここに出してます。商店街なので、声を掛け合って気にしてくれていることも多いですし、商店街内で中川町の何かを使ってくれてる所も何軒かあったりするし、商店街の特有のイベントにも参加させてもらえるので、密着してみんなに助けてもらって活動できているということは思います。
中川町は、旭川市から北へおよそ160キロ、住民はおよそ1500人。町の87%が森林。北海道の中でもあまり知られていない町ですが、アンテナショップの誕生を機に下高井戸商店街との交流がより活発になり、中川町の豚肉を使ったソーセージが居酒屋メニューになったり、中川町のそば粉がお蕎麦屋さんで使われたり。また中川町で育った牛の「モゥモゥソフト」が人気メニューで取材中も下高井戸の地元の方が買っていました。実際、アンテナショップ効果で知名度が上がり、北海道旅行で中川町に立ち寄る方も増えたそうです。
★日本大学文理学部とのコラボレーション
そして「ナカガワのナカガワ」は、下高井戸の商店街という立地以外にもメリットがあります。再び村上さんのお話です。
- 「ナカガワのナカガワ」村上和さん
- 下高井戸商店街と、世田谷区と、日大文理学部と中川町の4つの団体でこのお店を運営することになっているので、日大生も会議に入っていたりだとか、学生さんが中川町の地域調査をしてくれて、中川町のお祭りにどういう人が来ているのか調べて、それを卒業論文で発表したりとかもしてくれているので、常に交流はとっていますね。
下高井戸の商店街を抜けた所に日本大学文理学部のキャンパスがあり学生さんとの交流も活発に行われています。今は日大の学生さんがパフェの新商品を考え、その人気投票が行われています。ツイッター上でも投票できて今の所得票数が多いのは中川町で採れるアンモナイトや化石を形どったチョコレートを発掘する!というコンセプトの「化石発掘パフェ」です。
★「裏渋谷」神泉に徳島のアンテナショップ
地元の商店街そして大学生に親しまれている「ナカガワのナカガワ」ですが、続いてもなかなか面白い立地にあるアンテナショップです。京王井の頭線・神泉駅が最寄の徳島県のアンテナショップ「ターンテーブル」。なぜ神泉なのか?代表の渡辺トオルさんに聞きました。
- 「ターンテーブル」渡辺トオルさん
- この土地というのが、渋谷の繁華街と違って、一つは地元の住民の方々がいらっしゃるということ。住宅地が割とこの辺には多い。2つ目が、オフィスワーカーが非常に多いですね。事務所が結構あります。それから、ここでホステルもやってますから、観光旅行の方々も多い。実は青山大学、大学生の皆さんが徳島のターンテーブルという場所の在り方に興味を持って頂いて、ここでいろんなワークショップをされた。神泉町の音を録って演奏する発表会もここでして頂いてる。その発表会を徳島に行って徳島の方にも見て頂いたという流れも作られている。
青山学院大学が近くにありますので学生とのコラボレーションや、地域住民の方がふらっと立ち寄れるという点でも「ナカガワのナカガワ」と共通していますね。特に神泉の駅周辺は「裏渋谷」と呼ばれるエリアでおしゃれなカフェや飲食店が多く、ターンテーブルもその雰囲気に馴染むような造りになっています。見た目には徳島のアンテナショップとは分からず、入ってみるとカフェスペースで徳島名物のそうめんや、徳島の阿波牛やすだちブリなどが食べられる6500円のフルコース。2~5階はホステルになっていて、徳島産の杉の木を使った家具がいたる所に置かれています。
★今後のアンテナショップは、集客より地域密着重視?
「ターンテーブル」代表の渡辺さんは「体験を通じて徳島のことを知ってほしい」と強調していました。そして、そのコンセプトにおいては銀座や有楽町より神泉が良かったいうことなんです。
- 「ターンテーブル」渡辺トオルさん
- 例えば銀座の真ん中に店を構えるとなると、まず1つは土地代の問題。維持費が非常に高騰する、高くなってしまう。本来いろんな取り組み、イベントや人を集めるような工夫で交流させていくんだけども、利便性はあるにしても、予算措置というか取り組みの回数がある程度限定的になってしまう。それを、そこの場所を目指して「ちょっと面白い場所だよね」ということを認識して人があえて意識的に集まって頂くような空間、ということでこの場所を選んでます。
例えば、新橋にある福岡県東久留米市のアンテナショップが「経費に見合う効果が期待できない」という理由から今年7月に閉店することが決まっています。これからのアンテナショップは、高い土地代を払って一等地にお店を出すより地域密着重視になっていくのかもしれませんね。