人生100年時代(!!)と言われます。定年が延長されたり、年金の仕組みが変わり・・・これまでよりは、幾分長めに働かないと、暮らしていけない、という時代かもしれません。シニア世代の雇用も積極的に、という動きも盛んに。そうした中、耳にするのが”年下の上司””年上の部下”という関係性。当然増えてきますよね。今回はそんな関係がうまくいくための取り組みについてのお話です。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!2月21日(水)は、レポーター近堂かおりが『”年下上司””年上部下”、立場逆転!うまくいくため、どうしてる?』をテーマに取材してきました。
★年下上司向け研修
企業向けの、新しい研修プログラムを始めるという、パーソル総合研究所、取締役副社長の櫻井功さんのお話です。
- 櫻井功さん
- 「年が下の上司が、年上の部下をどのようにマネジメントするか、年下上司の方々にポイントについて教えるというのが目的の研修をスタートする予定です。どういう行動・言動をとるべきなのか、理論とそれからロールプレイのようなもので理解してもらうと。だいたい年齢逆転が50代の前半に多く起こると。ちょっと前自分の上司だった方が、役職定年で部下に来ると、今までの上下関係から、よくありがちなのはもう触らぬ神に祟りなしとかいうこともありますし、自由にやって頂いていいですよ、みたいな形ですね。全くマネジメントが存在しないみたいなこと
が多々発生してたんだろうという風に理解しています。」
年下の上司は、『最近まで上司だった、先輩にお願いするのもなんだな~難しいな~』、逆に年上の部下は『後輩に言われなくたってわかってるよ!』という心境もあるでしょう。両者の気持ち、よく分かります。しかし、そういったすれ違いで、年下上司が年上部下をマネジメントできていない、すなわち、充分に活用できていない現状があるため、それを変えようというもの。研修内容は、年下上司が年上部下に対して、どう声をかけ、行動をすべきなのか。例えば、評価や異動を告げるなど言いにくい事を、どう伝えるのか。実際にロールプレイ=演技してみる。一度でもやってみると、実際のときにおおきな違いがでるはずですよ、と櫻井さんはおっしゃっていました。
★年下部下の気持ちも知っておく
声の掛け方、伝え方など言動も大切ですが、同時に櫻井さんは”年上の部下”のメンタルを知っておくことも必要だといいます。
- 櫻井功さん
- 「現実的にはですね、今日本の雇用の中って、消極的に選択して中に残るという人が多数いる。直感的に言えばローンの問題だったりとか子供の教育の問題だとか、それからあとは、ご自身のスキルの問題ですね、社外で通用する普遍的に求められる専門的なスキルを教育されていきたかというと必ずしもそうでない。ですから役職を解かれた瞬間に、例えばメールが来なくなる、ミーティングに呼ばれなくなる、それから年下の上司に指示命令を受けなきゃいけなくなる等々が発生した時の等々、年下上司をもつ瞬間に自分の居場所がなくなっていった。その喪失感が大きい。やはり居場所感というのが必要だと今回わかってきました。」
定期的な会話や、責任のある仕事の割り当て、などが、居場所作りにつながり、プラスに働くそう・・・。仕事を任せられたら、やる気が出る!というのは、どの世代も共通ですよね。この研修内容を発表したところ、反響は大きいそうです。同じように立場逆転の状況を迎えている企業が多いんですね。
★リバース・メンター制度
こうした研修が出てくる一方で、多くの企業が行ってきている、ある制度に変化が出てきています。P&Gジャパン 広報部の、田上智子さんにお話を伺いました。
- 田上智子さん
- 「一番最初の出だしプログラムは、メンタープログラム。上司以外の先輩から後輩という矢印からスタートしているプログラムなんですが、リバースメンターという逆の矢印のも増えている。年代でも若い人も自分のよく知っている領域に関して、自分よりも年上の人に、相談に乗ってあげる。最近では自主的につながっているペアが多い。弊社も45年ほど前に、日本に上陸して以来、社員の多様性が増えた分、変化の時を迎えた社員に関しては、プログラムの名前があることで声がかけやすいというのがある。先輩だろうが、後輩だろうがメンターになってその人のために貢献したということがあれば、自分の人事評定の評価につながる。」
メンター制度というのは、新入社員を中心に、直属の上司ではない先輩に、知識や経験・悩み事などを聞いてもらう制度。P&Gでは1990年頃から、人材育成のため行っていました。この矢印の向きがリバース=逆になる仕組みの活用が増えているそうです。外資系という社風から、個別で『私のメンターになって!』と直接頼むことも多く、途中でやっぱりこの人に替えます!なんていうのもアリ、だそう!人事部に適切な人を紹介してもらうのも、もちろんあり。
しかも、ビジネス上で自分の評価にもつながるという仕組みとなっていて、利用しやすいですよね。今では、外資系を中心に、日本でも資生堂などが導入しています。
こういった、仕組みがあることで、若い人へ相談したり、教えてもらうことも少しハードルが下がりそうだな、と感じました。
★わが社は、最高齢は90歳!60~70代の社員が半分です!
そういう制度とはまた違う方法でうまくやっている会社もあります。
東京足立区の横引シャッター代表取締役 市川慎次郎さんのお話です。
- 市川慎次郎さん
- 「最高齢が90歳で、70歳とか60代が半分くらいいます。うちの会社は年齢には全然関係なく社員として働いてもらっています。90歳まで高齢になると、雨の日は通勤が、一番怖いので雨の日は休んでくれと万が一があったら怖いので。冬場も夕方5時くらいになると暗くなっちゃうので、社長からは3時って本人に言うとヤダっていうので、冬場は、4時上がりなんですよ。」
こちらの会社では、積極的にシニアを社員として迎えていて、大半が60・70代。お話を伺った社長の市川さんは42歳!!まさに年下上司になるわけですが、シニア社員のメリットは、ずばり即戦力!!そして熟練の技術力!!結果的にシニアが多くなっている。90歳の社員には、天候など細かな配慮をする、というかたちで、働きやすい環境を作っているわけですが、他にも、それぞれに合わせて、違った配慮もしているそうです。
- 市川慎次郎さん
- 「営業部とかで外に出歩く部署は、役職がないと外で歩けないって言って、社長直轄だとか、役職つける時とかは、本人とどの役職がいい?って相談しますので、本人はイケイケブイブイで。全然変わります。入れる前とかは頑固じじいが来られても、なんて思っちゃうんですけど、案外そんなことないんで、採用してみると、結構楽しいもんです。うまく気分よく働いてもらう、のせちゃうと、元々のキャリアは持っているんで、いい回転で、回っていきますね。」
肩書を作ることで、イケイケに・・・(笑)しかし、前述の櫻井さんのお話にもあった、居場所を作るという点ではポイントを抑えています。実は、先ほどの90歳の社員さんは、なんと78歳で入社したそうです!つまりもう10年以上も年下上司と年上部下、という環境なわけですが、市川社長は、中小企業では、シニアの技術が必要なことが多いから、そういう環境は普通だよ、ともおっしゃっていました。つまり、そういう環境に慣れているし、みなが気持ちよく働ける術を手に入れているのでしょうね。
会社にとって、その採用が戦力となるか、人材を活かせるか、その方法はさまざまありそうですね。