日本気象協会の「桜の開花予想」が先週発表されましたが、「桜の歴史」を変えるかもしれない大きな発見について、2月15日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました(ちなみに東京の開花は3月24日とのことです)。
桜についての大発見とは、何なのか。森林総合研究所のチーム長・勝木俊雄さんのお話です。
★100年ぶりに発見か?新種の桜「クマノザクラ」
- 森林総合研究所 チーム長・勝木俊雄さん
- 「国内の“野生の桜”は、これまでほとんどが発見し尽くされていて、新しい種(しゅ)はまず見つからないだろうと考えられていました。そうした中、紀伊半島で新しい野生の桜が見つかったというのは大きな発見です。最後に日本の桜の中で種として発表されたのが『オオシマザクラ』なのですが、これが1915年。ですからほぼ100年ぶりに、日本の桜に新しく種の学名が付く可能性があるということです。通称名は『クマノザクラ』と言います。」
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新種とされるクマノザクラを発見した、森林総合研究所の勝木俊雄さん。
新種と見られる桜は勝木さんのチームによって発見され、「クマノザクラ」と名づけられています。正式に新種と認定されれば約100年ぶりの発見。野生の桜としては、10種類目の桜となるそうです(分類方法によって11種類目という考え方もあるそう)。勝木さんは現在、論文を学会誌に投稿しており、掲載されれば晴れて「新種」となります(場合によっては「新種」ではなく、現在ある桜の仲間「変種」になる可能性も)。
専門家の間では、桜は「調べ尽くされた」分野だということで、勝木さんも、「25年やってきて初めて。新種があるわけないと思っていた」と話していました。
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クマノザクラ(写真提供 森林総合研究所)
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ヤマザクラ(写真提供 森林総合研究所)
クマノザクラで特徴的なのが、花びらの色合いです。一般的な野生の桜のヤマザクラの純白に対し、グラデーションがかった綺麗な薄ピンク色をしています。また、葉や根元の部分の形が違ったりと、よく見ると細かいところが異なります。
★地元に流れる不思議な噂「ここの桜は2度咲く」
さらに最大の特徴が、「他の桜に比べて咲くのが早い」こと。この最大の特徴が、地元では不思議な噂になっていたんです。再び森林総合研究所の勝木さんのお話です。
- 森林総合研究所 チーム長・勝木俊雄さん
- 「紀伊半島の南部には大体、ヤマザクラが分布しています。ヤマザクラは西日本や東日本の里山に非常に多い種で野生種の代表なんですが、クマノザクラは、ヤマザクラと比べて開花時期が早いんです。個体差もありますが1~2週間ほど早く、開花時期が重なりません。なので地元では、クマノザクラのことをずっとヤマザクラだと思っていたらしくて、『うちのヤマザクラは2回咲く』と言っていた、という話を聞いています。(実際に2回咲いてるように見える?)そうですね、山に比較的似たような形の桜が咲くわけですから、2回咲いているなと思うのは無理もないと思います。」
「どういうわけかここの桜は2度咲くんだよね」と、長らく地元の方に不思議がられていたそうです。実際、ヤマザクラが4月中旬~咲くのに対して、クマノザクラは早いもので2月下旬~咲きます(クマノザクラが散ったあと、ヤマザクラが咲き始めるという順番)。見た目も似ている、同じ場所に生息している。でも、実は全く別の品種だったんです。
★新しい観光資源として、和歌山県も期待
この事実に、地元の人は驚いたと思いますが、正式に「新種」と認定される前に、自生地の紀伊半島では早くも期待する声があがっているようです。和歌山県庁・自然環境室・室長、岡田和久さんのお話です。
- 和歌山県庁・自然環境室・室長 岡田和久さん
- 「驚きましたね。地元の人は変わったヤマザクラだなと言っていて、普通の身近な桜だったんですね。この熊野という地域には、まだまだ明らかになってない自然の色んな秘密が隠されているのかなとワクワクするような楽しさもありました。クマノザクラは、和歌山県の南部でどこにでも咲いている綺麗な桜。東京から飛行機で白浜へ来て頂いたら、パンダも5頭いますし、クマノザクラも楽しみにして頂けたらありがたいと思いますね。」
クマノザクラが新たな観光客を増やすキッカケなるかもしれないということで、地元もすごく盛り上がっているようです。ちなみに3月に開かれれる現地説明会は既に満席で、キャンセル待ちも出ているということでした。
★クマノザクラはソメイヨシノに匹敵する美しさ
このように、100年ぶりの新種に大きな期待をしている和歌山県ですが、ただ、勝木さんは「クマノザクラがすごいのは新種かもしれないということだけじゃない」と話してくれました。
- 森林総合研究所 チーム長・勝木俊雄さん
- 「どうしても『クマノザクラが新種ではないか』というところにみなさん興味があるようですが、個人的には新種であるかどうかということよりも、クマノザクラの鑑賞価値の高さに注目している。もちろん個体差はありますが、中にはソメイヨシノと見間違うくらい非常に綺麗で、場合によってはソメイヨシノも上回るのではないかと思う個体もあります。ですので、この先クマノザクラが自生してる地域ではソメイヨシノに代えて使っていくことができる。その点で、非常に大きな発見じゃないかと思います。」
このクマノザクラ、お花見の定番であるソメイヨシノに代わりうるほど、鑑賞に向いた美しさがあるそうです(気になった方は是非現地でご覧下さい)。今回のクマノザクラが新種と認められるかどうかは、今年中をめどに決まるそうです。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!