東京都では、7月11日~25日までの2週間限定で、「時差Biz」が行われています。「満員電車ゼロ」を公約に掲げた小池都知事“肝いり”の企画で、「朝の通勤ラッシュを避けて快適に通勤しましょう」という東京都主導のキャンペーン。スタートから一週間が経った昨日、「時差Biz」がどのくらい広まっているのか、7月19日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは、「時差Biz」とはどんな取り組みか?東京都・都市整備局・交通企画課長の谷崎馨一さんに伺いました。
★鉄道会社と一般企業、合わせて300社が参加
- 東京都・都市整備局・交通企画課長 谷崎馨一さん
- 「鉄道が混んでいる時間帯が7時半~9時までの約1時間半。その前後にずらして頂く形で企業・団体から社員の皆さまに周知をお願いしている。
現段階で約300社賛同頂いてます。例えば、勤務時間を13パターンから選べるような時差出勤とか、今週忙しくてすごく働いたら来週は勤務免除になるとか、そういう極端なフレックスタイム制など。それぞれ特色的な方法でやっていると認識しています。
また、鉄道会社は、朝の早い時間に電車を臨時的に運行して頂いたり、スイカ・パスモをタッチするとポイントがついたり景品が当たったりと、時間をずらすインセンティブを頂いてます。」
企業側は、フレックスタイム制(出社・退社時間を自由に決められる働き方)や、テレワーク(テレビ電話などを活用して、自宅でも仕事が出来る働き方)など、柔軟な働き方を推奨していくということです。ちなみに谷崎さんも自ら実践しているようで、昨日は10時出社と、いつもよりも遅い出勤時間だったようです。
そして首都圏の鉄道各社11社は、混雑する時間帯を避けて通勤した人に対して、コンビニやカフェの飲み物を割引にするなど様々なクーポンを配布するほか、東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東西線は、6~7時台に臨時列車の運行を始めたりして、朝出社を促しています。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/07/4d5350da8c78c68aec6ea6c9507eba6f-600x144.png)
【東急電鉄】早朝臨時列車「時差Bizライナー」停車駅。「6:04に中央林間を発車し、長津田、あざみ野、溝の口、渋谷、半蔵門線内の各駅に停車します。渋谷駅には6:43に到着し、渋谷到着8時台の準急電車と比べて、長津田駅~渋谷駅間で約13分通勤時間を短縮し、オフピーク時間帯に短い所要時間で都心に向かうことができます」とのこと。
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【東急電鉄】「グッチョイモーニング」。飲食店やゴルフなど、様々な割引サービスがあります。詳しくはこちら
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/07/IMG_4747-536x400.jpg)
【都営交通】「朝活応援・時差Bizキャンペーン」。期間中に都営大江戸線「都庁前」または、都営三田線「巣鴨」の駅でパスモやスイカをかざすと、豪華商品があたるようです。詳しくはこちら
★「時差Biz」を機にフレックス勤務を導入
そんな「時差Biz」、どれくらい浸透しているのか?街で50人に聞きました。まずは、「時差Biz」実践してます!という方たちの声です。
- ●「先週から、9時~17時を8時~16時にしている。会社全体でやりたい人はどうぞって。フレックスという制度があって、それをもっと積極的に活用しましょうよという。そういう制度があっても皆利用しにくいじゃないですか。『時差Biz』とか行政が呼びかけすると、皆利用しやすくなる。そういうことだと思う。」
- ●「普段から早く来ている人に、早く帰っていいよっていう感じで、『時差Bizっていうのがあるからやったら?』って会社が。先週からですね。」
これまでは、いくら早出しても退社時間は変わらなかったけど、先週から、「早く出社した人は、その分早く帰れるようになった」ということでした。
★「時差Biz」は知らないけど、早めの出勤ならしています
ただ、50人聞いた中で、先週始まった「時差Biz」で明確に働き方が変わったというのはこのお2人のみ・・・。実は意外と多かったのは、こういった意見でした。
- ●「『時差Biz』?わかんないです。ビザに時差が出るってことですか?
(通勤時間に時間差をつけるということです)あー、10年とは言わないですけど結構ずっとやってます。」
- ●「私はもう数十年前から、定時の1時間ちょっと前に来てますね。」
- ●「ごめんなさい詳しく知らないんですけど、既にちょっとやってるかも。定時に着こうとするとすごい混んでるんで30分ぐらい早く出たりとか。それですかね?
(じゃあやってますね!)わかんなかったです。会社が声かけてやれやれってなんないと、テレビで小池さんが言ってるだけだと他人事かな、みたいな。」
わざわざ「時差Biz」なんて言われなくても、既にやっているという方は、50名中20名。でもその20名のうち半数は、「時差Biz」という言葉自体、聞いたことがないらしく・・・。駅中の広告や、小池都知事が出ているCMは見かけるけど、結局のところ何なのか分からないという反応でした。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/07/b45a8ab44232c0244e46e6bd760f1df1.jpg)
「朝が変われば、毎日が変わる。」時差Bizポスター
さらに、「周りで、朝早く来ている人はこの1週間で増えましたか?」と聞いてみても、皆さん「電車内の朝の顔ぶれは変わってない」と言ってました。
つまり「時差Biz」キャンペーンを受けて明確に出勤時間を変えたのは、50人中2人くらいなもので、思ったほどの効果は出ていないようです…。
★企業の理解がないと「時差Biz」の実現は難しい
では、変わらず満員電車で通勤している残りの28名が「時差Biz」を始めるためには、何が必要なのか。街で聞いたところ、やりたくてもできない事情があるようです。
- ●「朝、保育園に子供を預けに行くので、そこの時間帯が変わらない限りは難しいです。」
- ●「職場が時間変えて良いと言ってくれれば考えるかもしれないけど、早く行ったら行ったでそれも残業にカウントされて、早出もやりすぎると会社から文句言われる。」
- ●「一回、会社で朝食を無料で食べられるサービスがあったんですけど、無くなっちゃいましたね。あんまり人が集まらなかったので。結構残業が多い会社なので、朝早く行くと、夜も遅くなっちゃうというのが多いと思います。」
保育園に子供を預けているパパママは出勤時間を変えづらいし、朝食無料サービスを行っていた会社の従業員でも、夜に残業がある限り、早く出社しようとは思わないようです。鉄道各社も実施している、カフェの割引などのお得なサービスよりも、働き方の見直しがいかに大事かということが今回取材して分かりました。
東京都の谷崎さんは、「時差Bizは会社の理解が必要で、これが根付くには一定の時間がかかると思っている」と仰っていて、この取り組みは、今年の実施状況を検証した上で来年以降も行う予定ということです。
![田中ひとみ](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/09/sump_tanakahitomi-400x400.jpg)
田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!