忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」。4月26日(火)はレポーター近堂かおりが『70ミリでタランティーノが観たい!!』をテーマに取材しました!
クエンティン・タランティーノ監督の最新作「ヘイトフル・エイト」。前作「ジャンゴ 繋がれざるもの」に続いての西部劇。しかも猛吹雪の雪山の西部劇。8人のワケあり、曲者たちのドラマ。日本でもコアなファンが多いタランティーノ作品、観ていない方は気になるでしょうが、実はこの映画、観た人でも、ある意味、もう一度観たくなる映画。というのは、「ヘイトフル・エイト」には、2つのバージョンがあるからなのです。今週末からこの映画を上映する横浜のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」の支配人・梶原俊幸さんに伺いました。
★OVERTURE~序曲
- 梶原俊幸さん
- 70ミリのフィルムとデジタルの上映素材があるという話は聞いておりました。映画館の映写機の環境であるとか、日本語字幕がついた上映できるものあるのならば、本来であれば70ミリフィルムでやってみたいという思いはありますけれども、なかなかその環境が揃わないというのが正直なところなので、致し方ないかなというところもあるんですが・・・。
公開前から話題になっていましたが、70ミリフィルム版とデジタル版の2つのバージョンがあるのです。今回、タランティーノ監督は「70ミリ」という、普通の映画の画面よりかなり横に広いサイズのフィルムを使った撮影にものすごくこだわったという。今の映画はデジタルカメラでの撮影が主流で、フィルムはほとんど使われていない。なおかつタランティーノは50年間行われてなかった撮影方法(ウルトラパナビジョン70方式)を復活させたというこだわりぶり。一体どんな映像になるのか?そして、そんなに上映するのが難しいのか?この映画の配給元、ギャガ株式会社の渡辺智子さんにお聞きしました。
★第一章:日本では1館も上映できないなんて!
- 渡辺智子さん
- 70ミリで撮っているものは焦点が合っているところ以外はすごくぼけるらしく、奥行きがすごく出ていると聞いています。なので結構長い密室劇なんですが、ワンシチュエーションでも映ってくるものが全然飽きさせないという効果もあるかと思います。70ミリフィルムは元々60年代にはやった『ベン・ハー』などの作品が70ミリフィルムで上映されていた映画なんですけど、物理的に70ミリフィルムを上映できる映画館というのが、私たちが探した限りだと、もう日本には1館も存在しないんです。
上映できる映画館が1館もないの??びっくりしました!
まずスクリーンは70ミリフィルムを映すなら大きくないと面白くない。次に70ミリフィルム用の特殊な映写機で、なおかつまだ動くものを探すのが大変。ギャガの渡辺さんもなんとか70ミリの上映ができないか探し回ったそうです。
★第二章:もちろんGAGAだって!
- 渡辺智子さん
- 70ミリフィルムをかけられる映写機というのが、国立近代美術館のフィルムセンターという映画関係資料などを保存しているところにあることが分かったんですけど、70ミリフィルムを上映するためにはすごく高額なレンズ、1個何百万円もするらしいんですけど、それを2個取り寄せて買わなければいけないということが分かり・・・買ったらどうなるか試算もしました。それと字幕は別の映写機で映し出す方法しかないな、とか具体的にも検討しました。でも、やはり、結構各国で苦労しているみたいなことは聞きます。それとどこの国もデジタルに移行しているので、映写機の技師が不足していて、各地で上映のトラブルが続出したという話も聞きました。
じゃあ、どうやって上映しているかというと、70ミリフィルムで撮影した映像をデジタルに変換したもの(つまりフィルムではない)で上映している。アメリカでは全米を探し回って70ミリフィルム用映写機を100台集めて、100ヵ所限定で70ミリフィルム上映を実現した。なぜ70ミリフィルム版を多くの人が観たがるのか?タランティーノのこだわり通りの映像だということに加え、この70ミリフィルム上映に限って、本編が始まるまえにエンニオ・モリコーネが作曲した「序曲」が流れ、上映の途中でも12分間の休憩時間が入って、そこでもモリコーネの曲がかかる。モリコーネはこの映画で初めてアカデミー作曲賞を受賞している。それなのにデジタル上映では一部の曲を聞くことができない。・・・それでみんな悔しい思いをしているのです!
そうなると、ますます諦めきれず、我々もいろいろ探してみました。大型スクリーンを持つ古い映画館はみんななくなったか、デジタルに切り替わってしまった。映画館以外では、プラネタリウムが70ミリフィルムと映写機を使っていると聞いて取材したが、そこにもやはりデジタル化の波。もうだめかと思ったら、なんと、遠く青森と秋田にまたがる白神山地にあるビジターセンターで、上映できるかもしれないという情報を知って、聞いてみました。白神山地ビジターセンターの相馬光春さんのお話。
★第三章:どうやってもその70ミリフィルムは日本では見られないのか!
- 相馬光春さん
- スクリーンの幅はヨコ20m、タテ15mでフィルムはやっていたんです。(このスクリーンなら70ミリフィルムはかかるんですか?)はい、全部かかります。(70ミリの映写機はあるんですか?)ありますぅ!(使ったことはあります?)3年前にデジタルに変更するまでずっと70ミリでやってきました。(音もつなげば出る?)はい、そうですね。
(じゃあ、もう一度組み立てれば?)・・・それなりの費用と日数がかかりますけど、必要なものは廃棄しないで残ってますので、絶対使えないということは言えないですけどね
おお!これは観られるかも!!ところが、現実はそんなに甘くありませんでした。再び、相馬光春さんのお話。
- 相馬光春さん
- うちの場合、当時の70ミリフィルムの上映時間はだいたい35分でしたが、その35分のフィルムを巻き取るためにはかなり大きな巻取り用円盤になっています。大人が両手を広げてもちょっと足りないぐらい。1m40~50㎝あるかもしれませんね。巻き取った後のものを持つのは一人ではちょっと無理な感じ。35分の作品でもかなりの重さになります。(タランティーノ監督の映画が3時間以上あるんですけど・・・?)それじゃあ、6倍ぐらいですか(苦笑)。ちょっと想像できないぐらいの感じになりますね。
70ミリフィルムというのは大変大きくて、置いておくスペースも、交換する人手も大変。実は相馬さん、大変な映画好きで、フィルム映画も大好きだそうだが、「あのフィルム交換だけは、かぁなり大変ですね~」と。・・・それ以上、お願いはできませんでした。
フィルム作品にこだわる映画関係者も少なくないでしょけど、なんとか見られる道は、ゼロにするのではなく、残しておいてほしい気もしますね。
(取材・レポート:近堂かおり)
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