先日、アジアオリンピック評議会が主催する2022年のアジア版オリンピックのアジア競技大会に、「eスポーツ」という競技が採用されることになりました。・・・ってeスポーツってどんな競技なのかわからない方や初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。4月27日(木)は、レポーター中矢邦子がTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」でeスポーツについて取材報告しました。
★世界的に人気な電子スポーツ!
では、一体どんなスポーツなのか?日本eスポーツ協会事務局長の筧誠一郎さんにお話を伺いました。
- 一般社団法人日本eスポーツ協会事務局長 筧誠一郎さん
- 「スポーツというのはエレクトロニック・スポーツの略称で、電子上で行われる競技をまるっとまとめてeスポーツといいます。世界の競技人口は1億人以上います。1番はバスケット、2番がサッカー、そのあとに続いて4位か5位くらいにeスポーツは入りますね。」
eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」のことで、コンピューターゲームをスポーツに見立てたものです。サッカーやガンシューティング、格闘技など競技性の高いゲームで勝負を争うものなんですが、驚きなのはその競技人口!世界で1億人を超えていますので、競技人口が1億人弱のクリケットとテニスにも負けず劣りません。
★海外と日本でのeスポーツの扱いの差は大きい
しかし、アジア版のオリンピックに採用されたからといって、ゲームがスポーツと言われてもしっくりとこない人も多いんじゃないでしょうか。この違和感についてふたたび、筧さんのお話です。
- 一般社団法人日本eスポーツ協会事務局長 筧誠一郎さん
- 「スポーツって言葉は日本人からすると運動とか体育と言うイメージがありますが、本当の意味は競技という意味合いが強いので競技するものは全部スポーツと欧米では言います。だから、囲碁とか将棋もスポーツです。eスポーツを体験したことない人からすると、テレビゲームをやっているスクリーンを見て観客が騒いでいるというシーンが想像できないと思いますが、例えるとサッカーのパブリックビューイングみたいな感じです。海外だと2万人くらい収容のアリーナで毎月の様に試合が行われています。海外で億を超える賞金総額の大会も多く、一番大きい世界大会の優勝賞金は9億円、賞金総額22億円にもなります。韓国に行くと普通のスポーツ番組でeスポーツの結果を放送し、24時間のeスポーツチャンネルもあって、試合結果を普通にやっています。メディアがeスポーツをスポーツとして扱い始めているんです。」
実は、海外ではもう立派なスポーツとして認識されていて、何万人も観客が集まる大会がどんどん開催されています。大会の賞金額も桁違いですが、それだけ人気があってスポンサーが集まるということで、一大産業と化しているんですね。また、イギリスなどではブックメーカーがオッズを出して賭けの対象にしているので、そういった楽しみ方をしている人も多いのかもしれません。
中でも面白い動きは、実際のスポーツチームのeスポーツ産業へ進出!サッカーの「シャルケ」「バレンシア」、プロバスケットの「MBA」などのチームがeスポーツのチームを次々に買収しているんです。さらに、FIFAというサッカーゲームの世界大会で優勝すると、サッカーの年間最優秀選手を決めるバロンドールで、世界最高の選手の並びで表彰されるほど完全にスポーツとして認識されています。ちなみに、日本ですと澤穂希さんが受賞されています。
★ギャンブル禁止で優秀なゲーム機があるから有名にならない?
一方で、日本は世界に誇るゲームメーカーがいくつもあるゲーム大国なのに、eスポーツの知名度は海外に比べると非常に低いのが現状です。そこにはどんな事情があるのか。筧さんに伺いました。
- 一般社団法人日本eスポーツ協会事務局長 筧誠一郎さん
- 「日本はガラパゴス化しているからです。世界でやられているeスポーツの主流のほとんどアメリカ製で、日本製のゲームはなかなかやられなかったので日本人が目にする機会は少ないんです。海外のゲームはネットワークが繋がっているパソコンが主流なので、人と人とが対戦しやすいですね。しかし、日本は優秀なゲーム機をソニーや任天堂が出していたことで、ゲームは家庭でやるもの、友達とやるものと言う認識で、見知らぬ誰かとやるということがほとんどありませんでした。」
世界のeスポーツで採用されているものはほとんどがパソコンを使ってオンラインで他人とプレイするものです。しかし、日本は任天堂やソニーなどの据え置きの家庭ゲーム機が非常に優秀だったことから、パソコンのゲームに移行しなかったということだったんです。結果、日本のeスポーツ人口は伸び悩み、ゲーム大国にもかかわらず世界にゲームで置いていかれてしまいました。競技人口は伸びずに、世界の大会で勝てる選手も育たないという状況だそうです。また、観客に目を向けても海外のようにお金かけることは日本の法律ではできないので、そのあたりも知名度が低い理由のようです。
★親御さんも納得!大反響のeスポーツの専門学校
ですが、そんな状況を打破すべく、昨年、eスポーツの専門学校がオープンしました。東京アニメ・声優専門学校の鈴木悠太さんにお話です。
- 東京アニメ・声優専門学校 鈴木悠太さん
- 「eスポーツの学科の開設自体は今年の4月、募集は一昨年の4月からです。おかげさまで色々な人にウェブで見てもらったり、来校してもらうことができています。日本でゲームが作られてきたという歴史の中で、プレイすることが職業につながるということは皆さんの目に新しく映ったのではないでしょうか。基本的にはプロゲーマーになりたいと考えている人が入学してきています。卒業後の進路を心配する親御さんはいますが、そもそもゲーム業界が色々な人材が欲しいという声があったので、そういった旨を懇切丁寧に学校のことを説明して納得してもらっています。想像する以上に、びっくりするくらいの反響をいただいています。」
かなり反響が大きかったらしく、校舎に人がおさまりきらないために、校舎を倍以上に拡張したなんて話もされていました。
★日本でも熱狂的なプレイヤーが!
そんな人気がじわじわでてきてるeスポーツ。実際にプレイをしている人の話をきくことが出来ました。
- ●「高校2年生からですね。eスポーツをすると本当に生きてるって感じがするんです!一番楽しい時間なんですよね。負けるとすぐ辞めてやる・・・とかも思うんですけど。一番やってた時期は6時間くらいやってました。」
- ●「中学1年生からやっています。もう7、8年くらいやってますね。最近は1日8時間くらいやってます、いや、もっとやってるかな・・・。」
- ●「(eスポーツって知ってますか?)あ、知ってます。とにかくeスポーツが好き!すごい上手なプレイヤーが多いから、観てるとうわーかっこいーってなります。たぶんスーパーボウル見てるのと同じ感じかな。うわーかっこいーって!」
知ってる方は、外国人や大学生が多かったです。実は、大学のサークルでは今かなり広がっているようなんです。最初にお話しされていた男性は、早稲田の大学生だったのですが、150人規模のeスポーツのサークルに所属していて、野球のように早慶戦を行うこともあるとのことでした。主に、eスポーツをプレイできるカフェなどの施設でプレイするとも教えてくれました。
今まで先進国の中ではeスポーツ後進国だった日本ですが、ここ1、2年で状況が変化してきています。eスポーツだけで生計を立てられる選手の登場や大会のスポンサーも増えています。筧さんによるとこれから世界と戦えるようになるため、若手の育成や啓蒙活動に力を入れていくそうです。日本がゲーム大国としての威信を取り戻す日もそう遠くないかもしれません。