公開から半年以上たった今もロングランヒット中の「君の名は。」を含め、春休みを前に、続々と新作が出ている「映画」についてですが・・・いま、新しい上映の仕方が話題になっています。3月16日、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
★インターネット配信での上映サービスの提供
誰でも手軽に映画を上映できることを目指す新プロジェクト、「ポップコーンシアター」のナカムラケンタさんのお話です。
- 「ポップコーンシアター」 ナカムラケンタさん
- 「ぼくらのポップコーンは、映画を多くの人に見てもらいやすく気軽に上映してもらえるように考えた結果、インターネット上で『ストリーミング配信』するということにしました。例えば映画を上映したい方は、映画を選んで、当日は再生ボタンが表示されるのでそれをクリックするだけですぐに簡単に再生できるようになります。そのときに、映画を上映する方は、パソコンとかインターネット環境とかプロジェクターとかスピーカーは用意頂くが誰でも上映できるサービスになっています。」
この方法は、いわゆる「シネコン」など大型のシアターじゃなくても、誰でも気軽に「自宅」でも「カフェ」でもどこでも上映会ができるサービスなんです。現在は試験上映中で、4月から本格始動します。普通の映画の場合は、映画会社側がシネコンなどにフィルム提供して、大掛かりな仕組みを使って上映します。
ですが、こちらの「ポップコーンシアター」は、「映画の権利を持っている側」と、その「映画を上映したい人」を「インターネット」でつなぐ仕組みなんです。「上映したい人」は、特別な施設がなくても、パソコンで「ポップコーン」のサイトにつながれば、モニターで仲間と観たり、プロジェクターにつないで壁に映して観たりできるんです。よくスポーツバーで、大きなモニターでサッカー中継を映していますが、ああいったバーで、上映会を開くこともできるんです。
★観客「0」なら費用も「0」
では、お金はいくらかかるのか、聞いてみると、ここにも「映画の仕組み」と「ネット」を利用した工夫がありました。再びナカムラケンタさんのお話です。
- 「ポップコーンシアター」 ナカムラケンタさん
- 「今までは、たいてい「上映料」が設定されていました。例えば、『1回上映するごとに10万円』みたいなものがあったので、仮に映画館と同じように『1800円』の入場料を設定すると60人近い集客をしなくちゃいけないからそんなキャパがない場所は、始めから赤字前提で・・・僕らは、最低限の上映料をなくして、一人入るごとに手数料が発生する仕組みを作りました。仮に『ゼロ人』だったとしても、何か費用がかかるというものはなく、上映する側にとってみればリスクのないカタチで上映するというものを映画の権利をもっている方にもご理解いただいております。」
実は、ここに2つの工夫があって、1つ目は「ネット配信」なので「フィルムの郵送料や人件費」がかからないことです。お客がゼロなら、配信されない=何もお金がかかりません。2つ目は「すでに映画館での上映が終わった後」だけど、まだDVDになっていない作品なんです。そのため「映画の権利を持っている側」からすると映画がDVDになるまでの収入のない「スキマ期間」だから「プラスアルファの利益が出るならば」ということで格安で提供していて、つまり、お客さんが一人でも入ればラッキーという感覚なんです。
だから、料金設定は、固定料金ではなくて「観客が一人いるごとにいくら」で決まっています。例えば、ある作品は「一人につき800円の手数料」をポップコーンに支払うと、残りの利益は「上映する人」が決めて、上乗せしてチケット代としています。
★製作者に貢献できて、交流の場にもなる!
それでは、実際に試験上映を見た人はどう思ったのか、外国人の女性にお話を聞くと、こんな感想が返ってきました。
- 「清澄白河にあるバーで観ました。大きいヒット映画だったら映画館で観たい、でも、インディーズみたいな感じなら、インディーズの歌手を見に行くときは小さいライブハウスで話し合えるような空気感なんですけど、それと似たような感じ。グループで観てそのあとで話し合って、ビールを飲めるような雰囲気が楽しいよね。DVDで観ると、このDVDを買ったお金が作家さんにいくかわからないけど、このポップコーンというサービスは作家さんに直接お金が届くのもわかるしコミュニティに参加している感じがする」
埋もれている作品を発掘する感覚もあるし、バーとかでやっていると皆でお酒を飲みながら映画が観られるので自宅でDVDを見るときとはまた違った楽しみ方ができると言っていました。しかも料金システムの手数料は、ポップコーンシアターと「製作者」に入るため、ケースによっては、何割が「映画側」に入るか説明があったりもするそうです。
★映画業界は、いまとても環境が厳しい
実は、こうした仕組みをナカムラさんが始めたきっかけは、映画製作者の現代ならではの事情もありました。映画業界にも詳しく、映画制作費を「クラウドファンディング」というネット募金で集めて上映に向けての仕事をしている「モーションギャラリー」の大高健志さんのお話です。
- 「モーションギャラリー」 大高健志さん
- 「上映する期間はどんどん短くなってきていて、『君の名は。』みたいに大ヒットするとロングランですが、そうでない映画、初週の土日の観客動員があんまり芳しくない作品は、どんどん打ち切りになっている状態が今あって・・・『国際映画祭』で数々の賞をとって、日本で公開しているにもかかわらず観客動員が延びなかったり、もっと言うと上映期間が短かったりさらに言うと、地方の興行はなかなか難しくて人が入らないということで、そこをもうちょっと埋めていかないと多様な映画は生まれないしこのまま放っておくと、どんどん減っているので違う切り口で皆さんに観てもらうことで広がりが出てくるんではないかなと思います。」
大高さんいわく、いま、大型シアターで上映されている作品は1年間に日本中で上映されている映画の「1%程度」にすぎないそうなんです。というのも、いま、映画館も苦しいので、人気の作品を多く上映して稼ぐことが映画館の優先順位になってしまっているからです。でも、大ヒット作品だけじゃなくて、小規模でも素晴らしい作品があるので、そういうのも応援したいということでした。