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Channel: 現場にアタック – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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東京新聞紙面連動企画『TOKYO発 墨田区はミニダム』

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「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」。毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は6月15日の朝刊「TOKYO発」のコーナー。『墨田区はミニダム』という記事に注目しました。

 

近堂かおりの現場にアタックhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210705073822

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

 

★40年前から取り組む墨田区

週末の大雨で熱海では土石流の大きな被害が出ました。一方、都市部では、神奈川県平塚市で金目川が溢れる洪水が発生しました。近年は、都内でも、豪雨で道路や住宅が冠水する被害が毎年ありますが、この都市部の洪水対策として、墨田区が他に先んじて雨水利用をしているということなのです。

そこで、取材をした東京新聞下町支局の記者、長竹祐子さんにお話を伺いました。まずは、なぜ墨田区が雨水利用の先進地なのか、教えていただきました。

長竹祐子記者
「あちこちに青いタンクがあって、何だろう?って思ったら、近所の方がそこから水を汲んで水遣りをしている。で、「これなんですか?」って聞いたら、「これは雨水なのよ、あなた知らないの?」って言われまして、で、色々調べていくと、墨田区の中には、雨水を活かすっていう大小の仕掛けがあちこちに隠されているっていうことが分かったんです。墨田区という場所が、江戸時代、明治時代にも、すごく治水の面で苦労していたという歴史があるんです。で、近年、短期間の集中豪雨とかで一気に雨水が流れ込んで、排水が追い付かなくなる「都市型洪水」という治水の対策も必要が高まってきたというところがありまして、墨田区は約40年前から雨水を活かす運動に取り組んでいるということがあります。」

荒川と隅田川の下流にある墨田区は、昔から浸水の被害に悩まされてきました。そして近年は、集中豪雨で一気に水が流れ込み、排水が追い付かなくて起こる、都市型洪水も起きやすくなっています。

しかし、一方で、墨田区を含む東京都内で使う水は上流のダムに頼っているため、雨不足による渇水の懸念も同時にあります。

実は、都内に降る雨の量は、我々が年間に使用する水道水の量を上回る、というデータもあり、この雨水を利用することで、洪水と渇水の対策にならないかと考えた墨田区は、雨水の利用に動き始めたのです。

★雨水利用設備「路地尊」と「天水尊」

では、具体的に、墨田区にはどのような雨水利用設備があるのでしょうか。長竹さんは、雨水を活かす運動を進めるNPO団体「雨水市民の会」の会長の案内で街を取材したそうです。

長竹祐子記者
「井戸のような設備がありまして、それが近くの家の屋根に降った水を、雨どいを使って地下のタンクに溜めて、それを手押しポンプで汲み出す仕組みの施設がありました。それは「路地尊」という名前なんですけれども、区内に21か所あって、それぞれ3トン~10トンの貯水槽があるそうなんです。もう一つが、「天水尊」という設備なんですけれども、軒先に円い高さ1mほどの青いタンクが区内で見られまして、それは雨どいからの雨水が蓋が付いたタンクの中に入って、それを下の蛇口から水が出る仕組みになってまして、各家庭で簡単に雨水を利用できる設備になっています。一度に水を流すのではなくて、時間差で水を流すことで、排水のピークをずらすというメリットがあります。」

地下に貯水槽を埋め込み、その水を手押しポンプで汲み上げる「路地尊」

「路地尊」/東京新聞紙面より

これは、江戸時代の防火用水「天水桶」を模したデザインで、風情があります。
そして、もう一つが、家の軒先などにドラム缶のようなタンクを置いて水を溜めて使う「天水尊」

「天水尊」/東京新聞紙面より

こういった設備が、区内のいたるところで目に付くのだそう。雨水なので、飲むには適していませんが、植物への水遣り、打ち水、洗車、子供の水遊び、さらには、火事の時のバケツリレーでも、活躍しているそうです。(墨田区には細い路地も多く、消防車が入りにくい場所も多いですからね。)

降った雨を「一旦溜めて、住民が使いながら流す」ということで、排水のピークをずらして、都市型洪水を防ぐ、つまり、都市が「ミニダム」になっている、ということなのです。

★『流せば洪水、溜めれば資源』!

そして、都市のミニダム化は、広がりを見せている、と長竹さんは話します。

長竹祐子記者
「今は、区内のミニダムは600箇所を超えまして、総貯水量、すべて合わせると、2万3千トンを超えるまでになりました。区内にあちこちミニダムが増えてきたことで、それ以降は大規模な洪水は起きていないようです。最初は国技館や区役所などの区の施設から、今度は民間のビル・マンション、それから地域にどんどん雨水利用の取り組みが広がっていっています。で、国際会議が開かれたり、それから活動が海外に広がったりして、国内外からも注目を集めています。雨水市民の会の方がおっしゃっているのが、『流せば洪水、溜めれば資源』ということをモットーにして、雨水を含めた水循環に目を向けた暮らし方を紹介していく、ということをおっしゃっていました。」

日本では、一人当たり1日およそ300リットルの生活用水を利用していると言われています。(この数字は世界平均の2倍!)墨田区のミニダムの総貯水量2万3千トンは、区民一人当たりに換算するとおよそ88リットル。「一旦溜めて、使いながら流す」には十分で、区役所などではトイレの洗浄水に使ったり、している。水道代にも嬉しいですよね。

墨田区では、家に天水尊のタンクの設置を希望する人には助成金を出したり、新しく一定規模以上のビルやマンションを建てるときには、貯水槽の設置を指導したりしており、ますます、墨田区のミニダム化は充実しそうです。『流せば洪水、溜めれば資源』まさに、その通り!

渋谷区も、駅の下に雨水貯水施設を作って使い始めている、というニュースがありましたが、こうした都市型洪水の対策は、各地でもっと広げていければいいですよね。(私も、まずは雨が降ったらバケツに雨を溜めて使ってみようと思います。みなさんもぜひ!)


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