この春の東京六大学野球のリーグ戦で、東大野球部が3年半ぶりに勝利しました。4位の法政大学に、2対0!投手3人で4安打に抑える完封リレーでの勝利でした。そして、この勝利には、実はアナリストの活躍があった、ということなのです。
スポーツでアナリスト、というと、ブラットピットの映画「マネーボール」を思い出す方も多いと思いますが、まさに、あれです。いわゆる分析家。神宮球場に、トラックマンという新しい弾道測定器が設置されたのを機に、そのデータを活かそうと、東大野球部では、アナリストを新設しました。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日6月21日(月)は、『東大野球部。3年半ぶりの勝利とアナリストの活躍!』、というテーマで取材しました。
★データを全部可視化して分析!
そこで、アナリストになった学生コーチ、4年生の斎藤周くんにお話を伺いました。
- 斎藤周くん
- 「これまでだと、ピッチャーの球の速さ、とかしか分からなかったんですけど、今は、投げた球がどのくらい変化してるとか、どのくらい回転してるとかが分かるので、かなりたくさんのデータが来るので、ある程度分析するためのアプリみたいなのを作って、対戦相手の情報なんかを、自動で全部可視化するようなものを作っています。狙い球を決めたりとか、こういう作戦が、相手に隙があるから有効だよ、とか、そういうのは伝えてはいました。やっぱり、試合の中で実際に信用してもらえなければ、居ても意味が無い、と思っているんですけど、特に今シーズンなんかは、選手が信用して試合でも、その裏付けを元に、勇気をもってプレーしてくれたので、そのあたりは、少しづつアナリストが貢献出来てきているのかな、と思っています。そうですね、東大の中では、野球部は頭良くないんですけど、何かを説明するときは、ちゃんと裏付けがあった方が、聞いてくれる感じはします。」
アナリスト新設、と聞いたときに、プロを呼んだのかと思ったのですが、さすがは東大。学生ができます!斎藤君は、専攻も違うしデータ分析はそれほど得意ではない、と言いながらも、分析用のアプリまで自作し、3年半ぶりの勝利を呼び込みました。斎藤君のデータを活かして、この法大戦では、先手の継投策が打てたのです。また、東大はこれまでとは違ったスタイルの攻撃をしたり、今シーズン六大学の中で、盗塁が一番多かった、など、チームとして変わってきているな、と斎藤君は話していました。
★データを活かした練習も!
一方で、データはあるのだが、というところもあるそうなのです。
- 斎藤周くん
- 「ホントに最終戦だったので、勝ててホッとしたんですけど、一方で、もっと勝てる、と思っているので、そこは秋に向けてまだまだできるな、と思っています。まだ、接戦の中で勝ちきれない、みたいな試合も何試合かあったので、あ、まあ、ホントに、選手は一生懸命やってくれてるんですけど、相手も上手なので、さらに上を行かれる、みたいなことはやっぱりあると思います。まあ、こういうデータがあるって言っても、例えば「低めに変化球が来るから、それは気を付けよう」みたいに言ってても、やっぱり試合に行ったら振っちゃうみたいなことはあるので。そうですね、まずは技術ありき、だと思ってます。なので、ある程度練習の中から、やっていかないといけないな、と思ってます。やっぱり選手がデータを信頼して、データを活かした練習、試合だけじゃなくて練習から、そういう風な練習をやってくれるっていうところは、すごくありがたいな、と思っています。」
データも作戦も、ばっちり・・・なのですが、そう動けなければ勝てません。つまり、データを体現する技術!!野球の上手さ、ということです。失礼ながら、これもある意味、東大ならでは・・・。相手も野球が上手ですからね。ということで、データに従って立てた作戦通りに、投げる、打つ、ができるようになることが、今の東大野球部の課題。そこで、今は、秋の大会に向けて、『データを活かした練習』に力を入れているのです。
★「データなんて」って思ってたはずなのに?
東大だから。東大ならでは。を表しているこのアナリストの活躍なのですが、『東大なのに?と思った』という感想もありました。番組でもおなじみの、東大野球部出身の、喜入友浩アナウンサーのお話です。
- 喜入アナウンサー
- 「私はキャッチャーだったんですけど、このバッターはこのコースが苦手だ、っていう分析はできたんですけど、そのサインを出してもそこに来る確立の方が低いので、分析したけどダメだった、っていうことが多かったです、正直。だから、東大野球部弱いんですけど、データなんて、ってどっかで思ってるところがあるんですよね。頑固なんですよ、東大生は。だから、一つは、データなんて要らないよ。プレーでやっちゃえよ、っていう頑固さと、もう一つは結局諦め、データなんて使っても相手はどうせ強いから、っていう。勝っても負けても、その理由が分析にあったとは思わないんですよ、私たちが下手だったから、たまたま上手くいったから、っていうのを、勝ち負けの理由にしてたんですけど、今回、分析が功を奏して勝った、って言える、データを受け入れて練習に取り入れられる、相当説得力のあるデータ、かつ、彼に対する信頼が高いんだと思います。」
東大生はデータが好きなのかと思ったら、そうではなかったんですね。頑固な東大生がデータを使って、練習までしていることに、驚いていました。喜入アナウンサーが言う通り、本当に「それだけ、斎藤君の分析と人柄が信頼されている」ということですよね。ちなみに、アナリストの斎藤君は4年生。まもなく引退です。学内で、データ分析が得意な1・2年生を募集しています。ちなみに、斎藤君。卒業後は、このアナリスト経験を活かして、データ分析など、新しい技術で、選手に貢献するような仕事で会社が作れたら、と話していました。(就職先、じゃないところが、これまた東大生ならでは、なのでしょうか?頼もしいですね!)秋の大会、頑張ってください!!