コロナで、そしてコロナ以外でも、多くの方が入院している中、入院患者の環境をさまざまな形で改善する動きが広がっているので注目しました。6月2日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは、今日6月2日にオープンするという全国でも珍しい取り組みについて、葛飾区立中央図書館の長尾形保男さんに伺いました。
★院内区立図書館
- 葛飾区立中央図書館長 尾形保男さん
- 「葛飾区の新宿(にいじゅく)地域に「東京葛飾赤十字母子医療センター」という産院が移転をします。この病院の中に、「にいじゅく地区図書館」が6月2日にオープンいたします。小児科と産婦人科になりますので、児童書の割合を半分ぐらいまで児童書を用意しまして、一般の本が1万冊、児童書が1万冊をそろえて、産院の行う事業と一緒になって、子供たちを育てていく上での情報提供ができる場所と考えています」
公立図書館が病院の中にできるのは全国でも珍しいということ。元々図書館があったところに、この病院が移転、新築するということになり、また病院の院長が、本への理解があったことから、院内図書館が誕生したそうです。
病院内と言っても、区立図書館なので、区民であれば、通院・入院の人でなくても利用可能。また区民でなくても、通院・入院の方なら利用できます。
区民の方が利用しやすいように、病院とは別に図書館用の入り口を作ったり、もちろん入院している方が直接行けるように、病院内から入る入り口も作ったり、工夫されています。
また図書館の位置は1階の「セミナールーム」の横。セミナールームでは、病院による出産後の子育て支援の講座が行われるので、今後は、図書館が連携して、親御さんに子育て本の選び方、読み聞かせの方法を教えて、出産、子育てへの不安に寄り添う活動もしていきたいということでした。
入院患者の環境を良くしていく取り組みですが、もう1つ、コロナ禍の中、今年に入って、新しい動きがありました。それは病室などに、Wi-Fiを導入してもらおうという動きです。
この運動に当初から携わっている日本骨髄バンク評議員の大谷貴子さんのお話しです。
★#病室 Wi-Fi 協議会
- 日本骨髄バンク評議員 大谷貴子さん
- 「今年の1月ぐらいに「 #病室 Wi-Fi協議会 」というのを立ち上げました。2019年の10月に、最愛の姪がスキルス性胃がんという病気で、あと数ヶ月の命と宣告されたんですね。姪は4歳の双子の女児の母親でした。どうしても子供たちと繋がりたいと思ったんですけど、 Wi-Fiがなくて、動画で子供たちと楽しもうと思うと一気ギガ数が減ってしまう。そしてなんで病室にWi-Fiがついてないのって思うことが多々あり。残念ながら姪はなくなるんですけれども、ちょうどコロナの真っ最中で、同じように苦しむ患者さんが、コロナ禍でいっぱいいるんじゃないかなと気づいたことが、私をこの活動に真剣に取り組まなければと思ったきっかけだったんですね」
大谷さんは、最愛の姪御さんの辛い体験をきっかけに、今年の1月に「#Wi-Fi協議会」を設立。すると賛同の声が広がりました。
調査では、患者さんにWi-Fiを開放している病院はわずか30%未満。Wi-Fiについては、電波を棲み分ければ医療機器と干渉しないで使えるのですが、多くの病院は、導入費用に悩むことも多いようで、「#Wi-Fi協議会」では、国に費用の補助を付けてもらうように、働きかけたそうです。
その結果、4月14日に、それまでは認められていなかった「新型コロナ感染拡大防止と医療体制支援の補助金」の使い道の1つとして、「Wi-Fi整備」が新たに付け加えられた=「Wi-Fi整備にこの補助金を使ってもいいですよ」となったそうです。
ただ、こちら「9月30日までの申請制」ということで、早く申請しないとなくなってしまうとして、大谷さんは「早急に申請して」と訴えています。というのも、コロナに限らず、病室Wi-Fiは重要なインフラだということです。再び大谷さんのお話。
★病室のWi-Fiはライフライン
- 日本骨髄バンク評議員 大谷貴子さん
- 「聴覚障害の方が、遠隔手話通訳というシステムがあるそうなんですけれども、お医者さん、患者さんと外にいる手話通訳者さんと三者で繋ぐんですが、入院しても病室に患者さん向けに Wi-Fi を開放してくれていなければ、手話通訳すらもできないってことは患者さんは今これから自分はどんな治療を受けるのかっていうこともわからない。これから必要だなと思ってくださればついていくのではないかなというふうに期待をしております」
聴覚障害を持つ患者さんにとってもWi-Fiはいわばライフライン。多くの病院に制度を利用して、環境を整えて欲しいということでした。
この補助金は、病院のコロナ対策全体の補助金で、「1病院あたり25万円」+「1病床につき5万円」。厚生労働省に「医療支援体制支援補助金のコールセンター」があるので、問い合わせできます。
国は今回、急いで補助するために、すでにあった期限付きのコロナの補助金を使った形ですが、大谷さんは、期限の後も、Wi-Fiが当たり前の状況を目指して、新しい支援の形を求める活動を続けたいということでした。