東京などで3度目の緊急事態宣言が出てから1か月。再度の延長論も浮上していますが、この間東京都は商店街などに対し「夜8時以降は明かりを消して」という要請をしています。人の流れを抑制して感染拡大を防ぐ狙いがあるようですが、人が集まる新宿、渋谷などの繁華街とそうでないところにいっしょくたにして意味があるのかという疑問の声も出ています。
そこで今、現場はどう対応しているのか。TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
★通行人の安全面に配慮し、段階的な消灯
まずは、東武東上線大山駅直結の「ハッピーロード大山商店街」の対応について。
- ハッピーロード大山商店街振興組合 事務局長 小谷裕二さん
- 「一挙に消すと、通勤通学お買い物も含めて通行量があるもんですから、コロナ禍で照明を消してくださいということであっても、全部消してしまうというのはちょっといささか心配がありましたので、女性の方も非常に多いですから、段階的に消灯していったということでございます。」
ハッピーロード大山商店街は全長560mのアーケード商店街。道の両側には商店が建ち並び、見上げればアーケードの屋根があって、外の明かりがあまり入らないため、商店街の中の明かりが通行人の頼りです。
通常は夜11時までは主な照明を点けているのですが、それを3時間前倒して夜8時に一気に消してしまうとなると、電車を降りて商店街を通って帰宅する人達の安全面の心配があります。そこで、まず8時に一段階暗くし、9時にもう1段階暗くし、通行する上で心配ない程度の明るさは一晩中保っておくという対応をとっています。
特に今は、酒類を提供しない飲食店に夜8時までの時短要請が出ていますから、普段より店頭の明かりが消えるのが早く、アーケードの明かりがより重要ということもあり、柔軟な対応をとっています。
★明かりを消しても、通行量は減らず
ところでこの消灯要請のそもそもの目的は、「人の流れを抑制する」ことですが、1か月たって効果は表れているのでしょうか。
- ハッピーロード大山商店街振興組合 事務局長 小谷裕二さん
- 「通行量の減少はですね。明かりを消したからという所では、どうなんでしょうね。実は、通行量調査用のカメラを使ってるんですけども、20時から明らかに減ってるかというとそうではありません。従来通りの減り方をしているという状況です。要するにご自宅と近い場所にある商店街のアーケードでございますので、例えば繁華街で消すのと訳が違うんですね。ここに来るのは帰宅をするためにお通りになるというぐらいですから、明かりを消したからといって少なくなるかというとそうではないと思います。」
ハッピーロード大山商店街は大山駅を利用して通勤・通学する人が帰宅する際の通り道でもあり、明かりを消したからといって通行量が減るわけではないということが、調査結果にも表れているということなんです。新宿、渋谷、池袋など外から人が訪れる繁華街とは性質が異なるということが言えます。
★「導線としての商店街」にまで消灯要請をするのか
こうした中、中野駅南口の「レンガ坂商店街」「桃園商店街」は独自の対応をとっています。任意の店舗20店舗ほどが休業要請ないし時短要請に従いつつも、お店を閉めた夜20時以降も、通行人が安心して帰れるように表の看板をつけ続けるというもの。特にレンガ坂は植栽のイルミネーションも相まって非常に明るいです。
この取り組みを主導した店舗の1つ、レンガ坂の日本酒バル「青二才」は現在飲食店営業は休み、昼間に料理教室やテイクアウトを行い夜は店を閉め看板の明かりをつけています。株式会社青二才 代表取締役 小椋道太さんにこの活動への思いを聞きました。
- 株式会社青二才 代表取締役 小椋道太さん
- 「飲食店が早く閉めているから。それがコロナ収束への最短の道筋だって、そうはなかなか思えないんですけども、それも1つ原因なのであれば今休業しておくというのは一つの私たちが選べる道なのかなと思って休業要請には従っているような状態です。飲食店に対する協力金が一律で大きいところと小さい所の差が激しいというのも同じだと思うんですけれども、全て、おしなべて一律で全部「消灯せよ」っているのはちょっとなかなか理解しかねるというか。私たちの住んでる方が通る導線としての商店街においては電気を消すということが何も生まないのではないかと思ってしまいます。」
レンガ坂商店街と桃園商店街は、中野駅南口の大通りの脇を入った細い路地に位置していて、地元住民の導線の側面が強いです。そういった場所と繁華街をひとくくりにして「消灯要請」でいいのか?と小椋さんは仰っています。緊急事態宣言の再延長が検討されていますが、この実情に合っていない消灯要請もこのまま続くのでしょうか…。