4/25(日)に行われた衆参3つの国政選挙。自民党の全敗が大きなトピックとなっていますが今日は「新型コロナに感染し療養中の人は選挙でどうやって投票するのか」について取り上げます。TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
★新型コロナの宿泊療養所に投票所を設置
新型コロナの陽性者は外出が制限されますが、選挙で投票することは憲法で保障されている権利です。まずは今回補選が行われた北海道2区の対応について聞きました。
- 札幌市選挙管理委員会事務局・選挙課長・木村真治さん
- 「札幌市内に設置されている宿泊療養施設のうち1か所に不在者投票記載所を設置致しました。その記載所の中はアクリル板で仕切って、グリーンゾーンとレッドゾーンに分けて対応。案内等で、宿泊療養者に接近する方については防護服を着用して感染防護に努めたという形になっています。」
札幌市内の宿泊療養所となっているホテル2か所、そのうち一方の駐車場に4/23(金)のみ仮設の投票所を設置。もう一方のホテルで療養している投票希望者は感染予防対策を施したタクシーでその投票所まで輸送しました。参議院の再選挙があった広島県も、県内の宿泊療養所に投票所を設置。長野県の参院補選は宿泊療養所近くの公共施設の駐車場を活用する形で投票所が設けられました。
その背景にはこの3つの国政選挙について総務省が「ホテル等の宿泊施設に投票所を設けることなどを積極的に検討するよう求める通知を出した」ということがあります。ただ、同じく25(日)に行われた名古屋市長選や、直近の千葉県知事選、福岡県知事選ではこういった対応はされていません。やはり「もし投票所で感染が起きたらどうするのか」という懸念があるとみられます。
★新型コロナ陽性者を「郵便投票」の対象に
札幌市も宿泊療養所の投票所を設置しない方針でした。スペースや人員のめどが立ってなんとか今回は実現したものの、北海道選挙管理委員会と連名で国には元々別の形の要望を出していました。
- 札幌市選挙管理委員会事務局・選挙課長・木村真治さん
- 「国には法改正、具体的には、郵便による不在者投票ができるように法改正してほしいという要望を行いました。ただ今回の補欠選挙に向けては法改正については慎重な議論が必要という感じでした。今回は札幌市の一部の地域だけが対象となる補欠選挙。規模が小さいからこそ、今回の措置での対応ができたのかなと思っています。札幌市全域を選挙の範囲とする一般選挙になりますと、今回と同じ対応が取れるかどうか。非常に不安に思ってますので、そういった意味では、何かしら抜本的な法改正なりをして頂く必要性があると思っています。」
アメリカ大統領選挙では広く活用された郵便投票ですが、日本では「要介護5」の重度の障害がある方など限られた人しか投票ができません。もし郵便投票の対象をコロナの療養者に拡大すれば、感染者に投票所に来てもらう必要がなくなります。
また、今回ホテルでの療養者は希望すれば投票できましたが、自宅療養者について札幌では具体的な対策がとられておらず、そういった人たちも投票しやすくなると考えられます。
しかし、国は法改正に時間がかかるといって及び腰。ネックとなっているのは「郵便投票の場合、不正をどうやって防ぐのか」ということです。
★衆議院選挙に向けて対策は急務
日本選挙学会理事長で早稲田大学教授の池谷知明さんは「郵便投票の不正対策のため例えばマイナンバーで管理するという考えもあるかもしれないが、個人情報の観点から問題もある」と指摘。そんな中、比較的すぐ対応できそうな案として、韓国の選挙で実施されているこういった例を挙げています。
- 日本選挙学会理事長で早稲田大学教授の池谷知明さん
- 「例えば韓国では郵便投票の他に、自宅療養している人に投票所が閉まる時間を2時間くらい延長して、感染者、自宅療養の人に投票してもらうという制度を作ってる。好きな時間に投票できるということではないが、最低限の権利保障ができる。国がちゃんとした制度をもう一回洗い出して、公職選挙法の改正等に踏み込むべきだと。」
こういった時間を区切っての対応にしろ郵便投票にしろ何らか方法はありそうですが、今後の各自治体の選挙そして衆議院選挙に向けては東京都など7都道県も先月連名で、感染拡大防止と自宅療養者等の投票の権利の確保を両立した形で選挙を執行するために、選挙制度の改正を含めた対応が不可欠という要望書を総務省に提出しています。
今は各自治体バラバラな対応をとっていて、それが一票の格差と同じような問題になってくるので、国が指針を出すべきだと池谷さんは指摘します。