優れたボランティア活動を行う企業や従業員を表彰する「企業ボランティア・アワード」の表彰式が、先日、行われました。その大賞を受賞した企業の1つが墨田区の「さいとう工房」です。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日4月26日(月)は、『電動車いすを海外へ。届けるのは技術!?』。というテーマで取材しました。
★より生活しやすい電動車椅子!
この「さいとう工房」は、使う人一人ひとりの要望に合わせて電動の車いすを作っている会社ですが、今回は、その技術開発力が評価されました。私もその技術力の詰まった電動車いすを、社長の斎藤省さんの案内で体験してみました。
昇降式電動車いす体験の様子は・・・
- 近堂かおりキャスター
- 「これで今、いわゆる普通の車いすの高さですかね。」
- 斎藤省社長
- 「そうです。で、このジョイスティックを倒すと・・・」
- 近堂かおりキャスター
- 「お~上がりますね~どんどん上がりますね・・・斎藤さん、目が合いましたね!・・・これはすごい!」
- 斎藤省社長
- 「これだとね、冷蔵庫の上の段が見えるし、それからね、普通の車いすだと、煮物しててもお鍋の中、見えないんですね。ちょっと昇降すると見えるようになったり・・・」
- 近堂かおりキャスター
- 「そうか!お鍋の中、見えないんですね・・・」
![](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2021/04/IMG_9963-300x400.jpg)
昇降式電動車いす。斎藤さんと同じ高さまで、上がりました!(撮影のためマスクを外しています)
車椅子の高さが変えられる車椅子なのですが、高さだけでなく、座面の傾斜も自在に変えられます。
![](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2021/04/IMG_9036-534x400.jpg)
この操作画面を見ながら、ジョイスティックで操作します。
![](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2021/04/IMG_9045-300x400.jpg)
低くなりました。
![](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2021/04/IMG_9039-534x400.jpg)
こんな風に横になることもできます。
調理をする、低めのテーブルで食事を取る、洗面台で顔を洗う、など、高さや傾斜を変えるだけで、自然な姿勢で行うことができます。
実際に車いすに乗ってみると、普通の車いすの高さのままでは、立っている斎藤さんと話していても、見上げ続けて首が痛い・・・でも、昇降機能で背の高さを合わせると姿勢も楽だし、何より目線が合うと気分も良かったです!
★届けるのは技術です!!
そして「さいとう工房」が今回受賞したもう1つのポイントは、途上国への支援。途上国に車いすを届けているのですが、届け方にある特徴があるのです。斎藤さんに伺いました。
- 斎藤省さん
- 「日本で不要になった、電動車いすを送って、その国の障がい者が整備をできるっていう、そういう技術を、特にパキスタンを中心に関わっています。日本では6年間使うと、耐用年数にきたってことで、次の車いすを申請することができるんですね。それを有効に使えれば、ってことで。あえて壊れてたら壊れてるまんまで送っていくんです。」
- 近堂かおりキャスター
- 「宿題みたいですね!」
- 斎藤省さん
- 「そうそう。そして壊れてるのを直すことによって、直す技術を彼らが持つことによって、提供した先で壊れても直せるようになるんで。」
日本で不要になった車いすを集めて、途上国に届けているのですが、その中に壊れているものがあっても直さずに、あえて壊れたままで届けるのです。
ただし、同時に斎藤さんたちが現地に出向いて、修理やメンテナンスの技術を一緒に届けて、もう10年技術を伝え続けています。
車いすそのものだけでなく、技術も届ければ、安心して長く使ってもらえますよね。この使う側に立っての支援が、とても評価されたようです。
★車椅子無い生活だったから、嬉しいです!
取材の日、ちょうど車いすを贈られた方がいらしていたのでお話を聞きました。ベトナムから福祉関連の研修に来ていた、ヒョウ・ルーさんです。
- ヒョウ・ルーさん
- 「斎藤さんからは、車いすをもらいました。ベトナムでは、私、車いす使っていませんでしたから、車いすどこでも行けるは、とても便利。ありがたいですよ。とても嬉しいです。」
- 近堂かおりキャスター
- 「車いす、ピンクで可愛いですね」
- ヒョウ・ルーさん
- 「ありがとうございます。」
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ヒョウ・ルーさん。ヒョウさんは立ち上がれるので、昇降しないタイプの電動車いすです(撮影のためマスクを外しています)
脳性麻痺という障害を持つヒョウさん。立つことはできますが、手足の動きはスムーズではありません。しかし、ベトナムでは車いすは無かった。斎藤さんから車椅子をもらって、自由に動き回れる日々はとても楽しい。その体験を活かして、帰国後は、車いすを必要な人に届ける仕組みを作りたい、とおっしゃっていました。
それにしても、日本に一年半居ただけなのに、日本語がホントに上手!しかも、日本のドラマは面白かったです~なんて言われて、びっくりしました。(おんなじドラマ見てましたw)
★使われない車椅子が山となって・・・
では、なぜ斎藤さんが「相手の側に立って」活動するようになったのか?何より途上国に「技術も一緒に届ける」ことにしたのか?実は、斎藤さん自身が見た「ある景色」がきっかけになったそうです。
- 斎藤省さん
- 「結構海外、途上国ずいぶん行ったんですね。そこでは、日本からに限らず、いろんなNGOから大量に車いす、贈られるんですよ。だけどね、使ってないのが山になってるんです。みんなニコニコして貰ってる写真が出たりとかして、あ~いいことやってんな~って見えるかもしれないですけど、それほとんど使われてない。っていうのは、車いすを一台作るんでも、一人一人の障害に合わせて、サイズもそうだけど、みんな違うわけなんですよ。まして、要らなくなったものだから、身体のサイズに合わせるとか、そういう知識があるわけでなく、政府の人がなんか配っちゃうんですよ。使えなくなったり、身体をさらに悪くしたり、だから、このやり方はダメだ、と。物じゃなくて、技術の方が必要だ、と。」
使われるのを待ったままの車椅子の山、この景色が目に焼き付いているんですね。
車いすを使う人に合わせることをシーティングと言うそうですが、その技術と、車いすのメンテナス技術、これらを届けることで、各国から届いた車いすはやっと使えるものになる、ということなのです。だから技術を届けることが大事なんですね。
車いすって物じゃないんです、という斎藤さんの言葉が印象的でした。