新型コロナの感染者数が拡大し、「医療崩壊寸前」という言葉が連日聞こえてきていますが、今、保健所はどうなっているのか?12月24日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
病院と同じく逼迫しているのが「保健所」。今、保健所はどんな状況なのか。埼玉県の草加保健所の所長さんに聞きました。
★40人で56万人をカバーする保健所。崩壊寸前の現状
- 埼玉県・草加保健所 所長
- 「40人で56万人をカバーする保健所。崩壊寸前の現状陽性者が急増している中、それに伴う調査や濃厚接触者の選定に追われている。陽性者が出た場合、入院かホテル療養かの選定や、どこまで濃厚接触者にするか等、様々な相談を行っている。あとは患者をホテルに搬送する業務。遠い所だと往復6時間かかることがあるので、職員が取られるのは非常に痛手。県の保健所なので、草加・八潮・三郷・吉川っていう4市で、約56万人の管轄ですね。スタッフは約40人の職員と臨時で7人派遣されているが、保健師だろうと事務官だろうと、全ての職員で対応している逼迫した状況。」
埼玉県でも感染者は増えていて、 昨日は「230人」と過去最多を記録。話にあったように、草加保健所は、県内の4つの市=およそ56万人が管轄なのですが、それを、およそ40数名のスタッフでカバーしているのでとにかく大変。
業務の内容は、鳴り止まない電話相談に(取材中も後ろで電話の着信音が何度も聞こえていました)、濃厚接触者の特定。さらには受け入れ体制がある病院を探して患者を車で迎えに行き、病院やホテルまで送り届けたり、学校や企業で多くの接触者が出ている場合は複数の職員でPCR検査のキットを持って現地にむかったりと、コロナ関連だけでも業務は多岐に渡ります。
これを40人、ほぼ24時間体制で対応する厳しい状況ですが、それでも仕事が回らない…。
★「保健所の職員を増やして!」批判覚悟で始めた署名運動
人手が足りなくなっている保健所は他にも多くあるようですが、この状況を何とかしようと、大阪で署名活動を始めた人がいます。発起人の、大阪府関係職員労働組合の委員長、小松康則さん。
- 大阪府関係職員労働組合・委員長 小松康則さん
- 「「保健所の職員を増やして!」批判覚悟で始めた署名運動「保健所の職員と保健師を増やして欲しい」という呼びかけ。コロナの前から、職員を増やして欲しいと要求。2000年当時、大阪府内に61箇所保健所があったが、今は18箇所になっていて相当な規模で減っている。例えば保健所は自殺予防の対策なども行っていて、保健所に繋がれば相談対応しているが、実際繋がってないケースも多くある。こんな状況で災害が起これば対応できないと、ずっと声をあげていたが、なかなか私たちの声が届かず、コロナ禍になった。公衆衛生を向上させるために保健所が必要だという思いを、府民、国民に知ってもらうために、署名をスタート。厚生労働省、大阪府知事宛に出したいと考えている。」
小松さんによると、全国的に保健所の数が大きく減っているそうです。背景には、およそ20年ほど前から、「小さな政府」、「スリムな自治体」と言われ、公務員はより少なく、民間でできることは民間で、どんどん職員が減らされていきました。その中で、保健所もまたスリム化され、まさに心配していた人手不足の弊害が、コロナ禍で浮き彫りになってしまったということです。
保健所ではコロナの他にも、結核や性感染症に関するもの、自殺予防、飲食店の許認可に食中毒の調査、薬局や医療機関の監視など幅広いものがありますが、これまでの「当たり前」を維持することが困難になっており、いま声を上げないと救える命が救えなくなると、10月から思い切ってオンラインでの署名活動を開始。保健師の計画的な採用と増員、保健所の職員の定数を増やすことなど訴えていました。
★これ以上感染者が増えると機能停止も
最後に、コロナ禍で初めて迎えるえる年末年始を前に、先ほどの草加保健所の方はこんな風に話しています。
- 埼玉県・草加保健所 所長
- 「これ以上感染者が増えると機能停止もかなり件数が増えていて、2週間前と比べて非常に数が急増しています。今でも2週間で80名増えてるので、これ以上増えたらもうやり切れないというか対応しきれない。これ以上増えて誰か体調不良になって欠けても、そうすると機能自体が停止してしまう。もう限界に来ているので、これ以上増えてほしくない。」
結局、「保健所崩壊」となると、その地域の公衆衛生が打撃を受けてしまいます。そう考えると、対応してもらえない感染者が出たり、追跡されない濃厚接触者が出て、感染拡大、さらには命のリスクもあるのではと、お話を聞いていて心配になりました。
春から言われていた保健所の問題ですが、国はいっこうに改善できていない…。
保健所崩壊を招かないためにも、せめて、市民のみなさんに助けてほしいようで、埼玉県草加保健所の方は、
- 「マスク着用」
- 「濃度60%以上でのアルコール消毒」
- 「外食自粛」
- 「換気」
この4点の協力を訴えていました。