今年はインフルエンザが激減しているとニュースになっていますが、その要因の可能性として最近よく目にするのが「ウィルス干渉」と言う言葉です。一体なんなのか。そしてこの先に何が起きるのか?12月23日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは「ウイルス干渉」とはどういうことなのか?富山県衛生研究所の大石和徳所長に伺いました。
★ウィルス干渉って何?
- 富山県衛生研究所 大石和徳さん
- 「それはどういう仕組みかって言うと、ウィルス感染を受けると、ウイルスに対するこの個体が持っている「自然免疫」って言うんですけど、抗ウイルス活性を持ったサイトカインが出てくんですよ。でそれが他のウィルス感染を抑えるって言うことは、現象的にはよく知られてることなんですね。ひょっとすると、ウイルス干渉が起こっているのかもしれない」
コロナウイルスが干渉して、インフルエンザウイルスを抑え込んでいる、ということなんです。
ウイルス干渉というのは、どういう仕組みかと言うと、例えばコロナウイルスに感染すると、体の中に免疫効果のあるタンパク質=サイトカインが出てくる。それがインフルエンザウイルスに干渉して、インフルエンザ感染を防ぐ、抑え込む、という仕組み。
あるウイルスが広く蔓延すると、発症しないまでも、ウイルスをどこかで浴びることで、体内にこうした変化がありうると。
もちろん、コロナ対策として感染防止策を行なっていることも影響しているはずですが、それだけで、ここまで極端に減るとは考えにくい。
だから「ウィルス干渉」が大きな要因だと考えられるということでした。
では、ウイルスが干渉して「コロナの流行でインフルエンザが抑え込める」なら、その逆に、「インフルエンザが流行すればコロナを抑えられる」のではないのか?治療法が確立しているインフルエンザの方がマシですよね。
というわけで、「インフルでコロナを封じ込めることはありうるのか?」元小樽市保健所長でインフルエンザに詳しい医学博士の外岡立人さんに伺いました。
★インフルエンザでコロナを抑え込める?
- 医学博士 外岡立人さん
- 「ありますね。呼吸器に感染するウイルスはたくさんある。コロナウイルスも、インフルエンザも呼吸器系に感染する。ですからインフルエンザが活発に世界中に流行している時は、コロナウイルスは流行しなかっただろうといえますね。しかし、これだけコロナがたくさん増えて、流行して、変異株も沢山できて、世界中に広がっている段階では、いくらインフルエンザでも、それを抑えるのは無理で、逆にそう言ったコロナウイルスを押し除けるだけの力を持ったインフルエンザが出てきたら、逆にそのインフルエンザも怖いですよね。」
外岡さんは新型インフルエンザなどにも詳しい方なのですが、確かに「インフルエンザウイルスがコロナを抑え込む」ことはありうる。でも、コロナを押し除けるくらいのインフルエンザウイルスだったら、コロナより、そちらの方が怖いという事で、インフルでコロナを押さえ込むという発想は浅はかでした・・・
では、次の疑問。コロナはともかく、現状は、インフルエンザが激減している。これはこれでいいことなのでは?と思って伺ったんですが、実は、これも問題があるそうです。再び外岡さんに伺いました。
★インフルエンザが激減するとワクチンを作るのが難しくなる
- 医学博士 外岡立人さん
- 「今年インフルエンザが流行しなかったとしたら、来年度、どういうインフルエンザが出てくるか予想が難しいですね。今年流行したインフルエンザから、WHOは来年度のインフルエンザワクチンを考えるんです。今年流行してなかったとしたならば、来年度はどのタイプのインフルエンザが流行するか、予想が非常に難しいから、ワクチン作りも、すごく難しいですよね」
インフルエンザと一口に言っても型の種類は様々。A型とB型があり、そのA型B型の中でも、いくつか種類に別れます。
通常は、今年流行したインフルエンザから、「その型のインフルは今年流行して、もう集団免疫ができているから、来年は流行しないだろうな」などと考えながら、翌年の流行を想定し、翌年用のワクチンを考える。だから流行しないと、翌年のワクチンがうまく作れず、翌年以降、大流行するリスクが出てくる、ということでした。
コロナ禍でインフルエンザが流行しないのは、不幸中の幸いかと思っていましたが、実はその影響は翌年に出てくるかもしれないということで、改めて、コロナの影響の大きさを感じます。