新型コロナの感染拡大を防ぐため、今年は旅行や帰省を控えるよう各地で呼びかけられていますが、その影響で売り上げが苦しい状況にある「お土産業界」。そんな中、各社がアイデアを絞ってなんとかこの事態を打開しようとしています。
TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
★東京ばな奈を、東京以外で販売!
まずは、東京みやげの定番「東京ばな奈」は出張販売を始めました。株式会社グレープストーン広報・大野由貴子さんのお話です。
- 株式会社グレープストーン広報・大野由貴子さん
- 「北は北海道から、南は鹿児島県まで、全部で21道府県に出張しました。春先に、最初に感染が広がり始めて、東京ばな奈の公式インスタグラムの方にも「東京旅行行きたかったのに残念」という声が寄せられるようになりまして、それを機に、今までは皆さんが旅行にいらっしゃるのをじっと東京で待っている立場だったけれども、こんな時だから、逆に東京ばな奈の方からみなさんの街にお出かけしていこうと決めたのがきっかけです。」
これまでは東京駅や羽田空港など首都圏でしか販売していなかったのですが、4月の大阪を皮切りに全国各地の駅や百貨店などに期間限定の売り場を開く「出張販売」を開始。特に9月に出張した北海道では1日500箱売れるなど好評で、11月に早くも2回目の出張販売を行ったそうです。
さらに、東京ばな奈が誕生してから30年、これまで一度もやったことがなかった通信販売を期間限定で解禁しました。あわせて、自宅で楽しめる東京バナナのアレンジレシピ「フレンチトースト風」「冷凍東京ばな奈」などをサイトで紹介し、普段のおやつとしても食べてもらえるようアピールしています。
★紅いもタルトの「ペースト部分のみ」を販売?
続いて、やはり新型コロナの影響で観光客が大幅に減っている沖縄。その沖縄の定番みやげ「元祖紅いもタルト」が始めた新たな策とは?
- 株式会社御菓子御殿 営業本部長・久田友次郎さん
- 「新型コロナウイルス感染症拡大により、沖縄県の観光客が減少したため、主力商品の紅いもタルトの売れ行きが悪くなり、原料としている紅いもペーストを販売することに取り組みました。これまで基本的に紅いもペースト自体は単体で販売することはありませんでした。ペーストはお菓子の原料にもなりますが、ペースト自体、そもそもお芋ですので、独自で味付けをして頂いて、サラダやグラタンなど料理の材料としてもご使用いただけると思っております。」
紅いもタルトの、タルトの上に載っている赤紫色のペーストの部分のみを販売することにしたんです。業務用で、お菓子や料理の材料として使ってもらう想定です。現在、大手菓子メーカーやパン屋さん、ケーキ屋さんからの問い合わせが何件か届いていて、沖縄県外からも問い合わせが来ているそうです。
★沖縄県の紅いも農家に安定した収入を
紅いもペースト単体の販売を決めた大きな理由はやはり、観光客の減少でお土産としての紅いもタルトの売り上げが振るわないこと。去年と比べてほぼ半減しているそうですが、ほかにも、こんな理由がありました。
- 株式会社御菓子御殿 営業本部長・久田友次郎さん
- 「紅いもタルトは沖縄県産の紅いもにこだわっておりますので、仕入れは主に弊社がある地元の読谷村、久米島町、糸満市の契約農家さんから全量買い上げております。それで、そもそもの主力の紅いもタルトの売れ行きが伸びないので、紅いものペーストは現在冷凍庫で保管している状況です。冷凍庫は満杯になっておりますが、紅いもタルトが売れないのなら、紅いもペーストを販売することで継続して農家さんから紅いもを買いあげることができるので、安心して紅いもを生産して頂けると考えています。」
紅いもタルトのペースト部分は、沖縄県内の紅いもを契約農家から直接買い取って加工したもの。紅いもタルトがなかなか売れない現状では、冷凍庫が満杯、今は240トンの在庫を抱えているといいます。その保管の経費が正直負担になっているけれども、農家の皆さんが安定した収入が得られるよう、なんとかふんばっていて、その打開策としてペースト販売を始めたということです。