「コロナ不況」の影響は幅広く出ていますが、スポーツ業界も大きな打撃を受けています。そんな中、まずは選手たちに手を差し伸べようと新たなプロジェクトに踏み切った企業がありました。11月25日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
渋谷でパーソナルトレーナーを育成するスクールを運営している、ジェイエルネス代表取締役、樗澤一樹さんのお話です。
★トレーナースクールの授業を無償提供!?
- ジェイエルネス代表取締役 樗澤一樹さん
- 「プロのスポーツ選手やオリンピックを目指しているようなトップリーグの方々が、コロナで試合がなくなってしまったり、そもそもリーグ戦自体が全くなくなってしまった状況で、自分の働く場所がなくなってしまった。そしてセカンドキャリアを考え始めたりしたけれど、何をしていいかわからない、という風に途方に暮れてる方が非常に多いと伺いました。そこで、もともと70万円で半年間ぐらいのプログラム提供しているんですけども、このトレーナー育成プログラムを、現役のプロアスリートの方々に対して無償で提供して、彼らのセカンドキャリアをしっかりと支援するという支援をやっております。もともとですね、私自身もサッカーをずっとやっていたんですけども、膝の怪我を経験してサッカーボールを蹴れない足になっちゃったんですけども、その時に本当に何をしていいかわからないっていう絶望感が今でも忘れないぐらい衝撃的で、何かそういった人たちがいたら、助けたいなっていうふうにはずっと思ってました。」
こちらの会社は、プロのパーソナルトレーナーを育成するスクールで、解剖学などからしっかり学ぶ、半年間70万円のプログラムがあります。これを今年5月から、活躍の場を失ったトップアスリートに無償提供し、卒業した後の就職支援まで行うサービスを始めました。
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ジェイエルネス公式サイトから
今回は、緊急支援なので、まず5名、完全に会社の持ち出しという事。
ただ、今、健康ブームでジムに通う人が増える中、プロのスポーツ選手、それも地元出身の選手をパーソナルトレーナーとして迎えたいというニーズは全国のジムにあるようで、こちらのスクールで選手をトレーナーに育成した上でジムに紹介して、ジムから手数料をいただく事で、この無償支援を広げていきたいという構想もあるそうです。
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こちらが代表取締役の樗澤一樹さん
支援が始まった5月から半年となる先週、記念すべき1期生が授業修了したという事でしたので、1期生にお話を伺いました。プロのラグビー選手で、日野レッドドルフィンズで活躍されている新井信善選手のお話です。
★リーグ中止のラグビー界での選手達の苦悩
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- 日野レッドドルフィンズ 新井信善選手
- 「コロナで試合が少なくなって、運営費も削減されていく中で、ラグビーというのは企業スポーツなので、資金が減る=僕ら選手の給料あるいは選手のクビを切るっていうことなので、来年の契約あるかどうかわからない段階で、セカンドキャリアを考えるようになって、トレーナーになってみようと思って、勉強してました。悩みというか、試合出てナンボという状況で、その試合が無くなったら自分の評価を上げる場所がないわけで、どうしたらいいねんって、逆にコロナなかったら試合に出て給料上がってたっていう可能性もあるので、僕自身の中ではコロナのおかげで悔いが残る選手生活でしたね去年は」
契約目前の3月にリーグが中止、新井選手も契約が続けられるかどうか危ぶまれていました。
その後、最終的には、給料は下がったものの契約更改できたので会社には感謝しているそうですが、選手として戦えなかった日々の悔やしさは残る、ということでした。
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試合中の新井選手のパフォーマンス!(日野レッドドルフィンズ公式サイトから)
悔しい気持ちで過ごす中、コロナが長期化し、先行きが見通せない、また31歳という年齢的にもアスリートとしての未来も長くない。悩みながらセカンドキャリアを考え始めた所、知人からこの支援を紹介されて、参加したそうです。
では、コロナで選手としては悔いが残るシーズンだったという新井さんですが、コロナで始めたトレーナーとしてのセカンドキャリアについてはどう考えているのか?新井選手に伺いました。
★コロナで浮き彫りになったアスリートのセカンドキャリアの課題点
- 日野レッドドルフィンズ 新井信善選手さん
- 「ラグビーやっていたのでラグビーに関わりたいというのはあったんですけど、トレーナーっていう部類でなりたいっていうのは最初はなかったです。こうやって勉強していく上で、間違ったこともやっている、まぁ、感覚でやってる選手が多いと思うんです、アスリートっていうのは。解剖学を理解して、こうだからこういう動きですよっていうのは多分、理解している人は少ないわけで。それって損だと思いまして、それをスポーツやってる人とかに伝えたり、しっかり勉強して頑張ってきたいです。この話を頂かなかったら、こういう考えはなかったですし、コロナになって社会のあり方も全部変わって行った。自分のセカンドキャリアをコロナのおかげで考えられたというのもあり、自分を見つめ直すいい時間を作ってもらったんで良かったと思います」
アスリートのセカンドキャリアは長年の課題。今回は、コロナで少し早く気づき向き合う事で、今まで思いもしなかった道が開けて良かったそうです。
ただ、こうした事例はまだ少数。この問題は、コロナが終わっても残る問題です。アスリートが自分の経験を活かせることは、社会にもプラスになるので、所属企業やチームの支援、そしてジェイエルネスのような支援も広がるといいなと思いました。