レジ袋の有料化が始まり、マイバッグを持参する方も増え、プラスチックのゴミも少しは減ったのかなと思っていたんですが、残念ながら、ここにきてプラスチックごみは増えているようです。7月23日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
プラごみは増えているのか?いま処理場はどうなっているのか?千葉県にあるリサイクル業者、エム・エム・プラスチック株式会社の代表取締役、森村努さんに伺いました。
★コロナで増えるプラごみ。巣篭もりの影響か
- エム・エム・プラスチック株式会社・代表取締役 森村努さん
- 「弊社では家庭から出る「容器包装プラスチック」をリサイクルしているが、今年の3月位から徐々にプラスチック量が増えてきた。3~5月の集計で見ると、計画していた量が約3100トンあったが、実際に持ち込まれた量は3500トン。計画に対して110%増えている試算。例えば冷凍食品の包装材、生鮮食品のトレーなど、やはり皆さん自宅で食べる機会が非常に多くなっていると思う。年末が傾向としては例年多いが、それでも計画に対してプラス5%。その5%を超えて10%増になっているというのは、尋常じゃない。今日も増えてるな、今月も増えたなと身にしみて感じている。」
「プラ」と書かれた容器包装がありますが、こちらの会社は、家庭から出る「プラ」のごみを集める、千葉県富津市のリサイクル業者です。千葉内と、近隣の東京23区、神奈川県の自治体が集めたプラごみを工場内に運び込んで、選別し、水洗いし、新たなプラスチック原料を作って、外部に販売。
3、4、5月は予想より「110%」の増量。元々、予想量は多めに見積もるそうなので、予想よりも多いこと自体、珍しい。この6月と7月も、引き続き、予想の「110%」増量をキープしそうだとのことでした。
影響しているのは新型コロナウイルス。みんなが自宅にいて、自宅で飲食していることで、家庭からのプラごみが増えてしまったようです。
★いま、耳鼻科で重宝されるプラスチックストロー
さらにプラスチックごみを調べていくと、家庭ごみとは別に、医療分野でも、あるプラスチック製品のニーズが高まっていました。シバセ工業株式会社の、玉石一馬さんのお話。
- シバセ工業株式会社 玉石一馬さん
- 「飲食店向けにストローを製造販売しているのがメインだが、この3〜4月位から医療用・工業用に採用するユーザーが増えている。耳鼻咽喉科向けの「薬剤噴霧ノズル」。鼻や耳に使う細いノズルの先端をカバーするストロー。今までは患者さんごとにアルコール消毒が一般的なやり方だったが、プラスチックのストローは使い捨てなので、医療機器は衛生を保ったままリスクが格段に下がる。製品は2年前から販売を開始したが、当時は一本も売れなかった。それがいきなり2万本。これが紙製品や生分解性ストローでは、なかなか対応できない。紙ストローで作るとコストがものすごいことになるし、まず製造的に不可能かなと思う。」
耳鼻咽喉科で使われる、鼻の奥に薬剤を吹き付ける医療器具。その長く伸びたノズルのカバーとして、ストローの需要が高まっているようです。
ストローといえば、プラスチックゴミを減らすために、紙ストローに変えるお店も増えて、減少傾向だったのですが、やはりこちらも新型コロナウイルスの影響で激変。感染防止重視で、ノズルカバーとして需要が高まり、昔は1本も売れなかったものが、今、2万本と、売れているそうです。
医療分野では、他にも、防護服もフェイスシールドも医療用手袋も全てプラスチックの使い捨てなので、コロナ禍でのプラスチック需要は、様々、高まっているようです。
★政府が掲げた一括回収。これがあってもリサイクルは進まない?
ただ、そうなると気になるのが環境への影響。プラスチックのゴミについては、自治体によって処分方法がバラバラになっていましたが、それをなんとかしようと、政府が「全国、どの自治体でも、家庭から出たプラごみは『資源ごみ』として一括回収しましょう」という方針を固めました。
コロナでプラスチックゴミが増えていますが、この新ルールで、リサイクルが進み、環境への影響は押さえられるのか?環境問題に詳しい、共同通信の編集委員、井田徹治さんに聞いてみました。
- 共同通信・編集委員 井田徹治さん
- 「一括して集めてリサイクルしましょう、と言うと聞こえは良いが、現状、集められたプラごみの6~7割は燃やされてしまっているのが、日本のリサイクルの実態。ちゃんと分別してリサイクルして資源として回っているという「幻想」を持っているが、お金も手間もかかるので燃やしてしまおうというのが大きな流れ。
ただ、100%リサイクルするのは不可能なので、使い捨てのプラスチックごみ自体を減らす対策が必要。
リデュース、リユース、リサイクルはこの順で重要。まずは減らす(リデュース)、その次に、そのまま使い直す(リユース)、リサイクルは3番目。日本は3番目のリサイクルが過剰に重要視されている。
水道の蛇口を閉めないとどうにもならないところまで来てしまっていると思う。
」
井田さんによれば、まず医療ゴミは、感染防止の観点から、燃やすことになっています。家庭ゴミに比べ、現状、量はまだ少ないので、「今のところは」この対応が安全と。
問題は、家庭から出るプラスチックゴミですが、プラスチックと一括りに言っても、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリプロピレンなど材質が細かく異なるので、食品容器、シャンプーの容器、おもちゃ、バケツなど、全部を混ぜてリサイクル処理はできず、回収したものをさらに細かく分別するのは、自治体の仕事でお金が大変。
結局、回収方法が変わっても、また燃やされる可能性が高いのではということでした。
もちろん、燃やすと言っても、プラスチックごみを燃料に転換する仕組みなので、その分、石油の省エネにはなります。が、限りある資源の使い方としてそれでいいのかどうか。
井田さんは、根本的には、ゴミを減らす、そのためには、欧州などで議論になっているように、生産者である企業にゴミ処理費用を負担させる仕組みを作ることも必要ではと話していました。