先日、厚生労働省が、新型コロナウイルス感染症の「後遺症」について、8月から実態調査を行うと発表しました。新型コロナでは重い肺炎が報じられていますが、後遺症というのはどういうことか?7月16日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
後遺症の患者さんを診断しているという「陣内耳鼻咽喉科クリニック」理事長、陣内 賢(じんのうち・けん)さんに聞きました。
★コロナの後遺症が続々報告。実態は・・・
- 「陣内耳鼻咽喉科クリニック」理事長 陣内 賢さん
- 「コロナの感染で陽性になって、陰性化して退院した後に、微熱がまた出たり、頭痛・倦怠感、痺れ感、体の痛み・かゆみ、下痢、息苦しい・動悸がする、喉の違和感など、そういう全身の不快な症状を人によって複数個、訴えられる。通院している患者さんで、ちょっとおかしな症状がある人がいたのでこれは何なんだろうと考えて、これはもしかして「後遺症」なのかなと感じたのが最初です。治ったと言われて退院したけど、いつまでも調子がおかしくて会社に行けないという感じ。かなり皆苦しんでいる。やっぱり自分が何だかわからないのが一番不安なんじゃないでしょうかね。」

「陣内耳鼻咽喉科クリニック」ホームページでは、後遺症についての考察が記載されています
こちらは、耳鼻咽喉科と漢方内科が専門の、笹塚にあるクリニック。医師の陣内さんが後遺症の存在を疑い始めたのが、4月の上旬頃。この頃から、「治ったはずなのに体がだるい」「腕がピリピリ、湿疹がでる」「少し動くと疲れて寝込む」「会社や学校にも行けない」という人が、ぽつぽつ出始めたそうです。
年齢層は若年者〜高齢者まで幅広く、症状自体は、数週間から、長い人で2〜3ヶ月間続いているそうです。
また、報道でも「ベッドから起き上がれず、トイレにいくのもままならない」「4月から学校に行けていない」など特効薬もないので、対処療法をしながら、ずっと休むしかないという深刻な状況が伝えられています。
こうした不調を訴える「元・感染者」を、陣内さんはこの数ヶ月で10人は診てきたと仰っていた。
★原因は、免疫が暴走する「サイトカインストーム」か?
でも新型コロナは「肺炎」というイメージですが、何故、全身に障害を引き起こすのか。考えられる原因について、聞いてみました。
- 「陣内耳鼻咽喉科クリニック」理事長 陣内 賢さん
- 「「サイトカインストーム」という状態。ウイルスが体に入ってきた時にウイルスに対して戦わなきゃいけない、免疫が頑張らなきゃいけない状態になるが、ウイルスがいなくなった後も「排除しなきゃ!」という過剰な免疫の状態がずっと続いて、色んな炎症の物質が体中を駆け巡って、行った先で炎症を起こしたり、色んな所に色んな症状を出す。よく「車輪」に例えるんですが、車輪がずっと回りぱなしで、だんだん熱を帯びてきちゃうような状態。以前に中国で流行ったサーズという感染症のときに、結構話題になった。普通の風邪などではあまり起こらない現象だと思います。」
まだ仮説の段階ですが、免疫の暴走=「サイトカインストーム」という現象が起きているのではと推察していました。というのも、こうした「感染症」と「後遺症」の関係は、他の病気では明らかにされていて、例えば感染症の一種、「エボラ出血熱」では、回復した後も、倦怠感・関節痛が続いたり、「日本脳炎」では、麻痺がみられるケースがあるなど、感染症の専門家によって指摘されています。
ただ、新型コロナの後遺症については、肺炎の後遺症ではとか、ウイルスの影響で血栓ができるからでは、とか、様々説があり、まだ解明されていない部分が多いんです。
★過去の検査数の少なさが、「後遺症」という形で尾を引いている
しかしそんな中でもイタリアでは、コロナの入院患者の8割に、退院後、何らかの「後遺症」が出てきているという調査結果が、既に報告されています。
一方で、日本は、8月から調査…。陣内さんが2ヶ月前に気付き始めたことを考えても、遅すぎるのではないかと疑問が残りますが、さらにお話を聞いていると、実は、取り返しのつかない自体も起きているようです。
- 「陣内耳鼻咽喉科クリニック」理事長 陣内 賢さん
- 「「陽性」じゃなくても、後遺症であろう人が苦しんでいることを、皆さんに理解して欲しい。ちょっと危ないと思って保健所に電話しても、「PCRの対象のじゃありません」と断られた方も、結構いる。症状が出てすぐにPCRまで持っていければ、もう少し陽性者は増えたと思うが、ずっと最初のうちに断られ続けて、みたいなことがある。終いには、心の病だとか、コロナ鬱とか色んなこと言われて。結局、混乱させてるのは患者さん。何もエビデンスが出てこないので、ずっと苦しまれているわけですから。そういう人達が漏れないようなシステムが必要だと風に思います。」
春頃は、熱が出ても「4日間自宅待機してください」と言われて検査を受けられない人が沢山いて、そうした人の中には、自分がコロナかどうかわからないうちに、熱が下がって治った人もいます。そして、そういう人が今、後遺症に苦しんでいるパターンもあるということ。
こうなると、コロナだったという診断が出ていないので、コロナの後遺症とわからず、他の病院で「精神的なものでは」とされて、ずっと苦しむことになります。
こちらのクリニックで診断した“後遺症疑い”の人の中にも、保健所から検査の「対象外」と言われた人がおよそ30人もいたということで、当時、国の指針によって検査数が絞られてしまった結果、今、苦しんでいる人が出ていることがわかりました。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!