新型コロナウイルスの新規感染者数、東京は5日連続で100人越え。そんな中、今年は各学校や自治体でプールを中止とする所が相次いでいます。7月7日(火)TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
★「健康診断未実施」「更衣室での三密」がネックに
各学校がプールを中止する理由について、一般社団法人・水難学会の会長で、長岡技術科学大学の斎藤秀俊教授に詳しく伺いました。
- 長岡技術科学大学教授・斎藤秀俊さん
- 「学校プールはほとんどがやらないという所が多いみたいで。一つは健康診断が間に合わない。休校がだいぶ続いてしまいましたので、健康診断が後々に伸びていると。もう一つは、大人数で一気に更衣室に入らなければいけないということで、なかなか三密を避けられないという心配がどこでもあるということですね」
実はプールの水は以前から次亜塩素酸などで消毒しているため、水中での感染リスクは低いとして、文部科学省やスポーツ庁も「密集・密接を避けるなど対策を講じれば、水泳の授業をやっても差し支えない」と通知を出しています。ですが実態は東京23区のうち渋谷区を除く22区が学校のプールを中止。(渋谷区は各学校の判断に任せるとしています)
理由は、プール参加の前提となる毎年の健康診断が休校期間の影響で間に合わないということ。そして更衣室での三密の懸念。空き教室を使って分散すればと思うかもしれませんが、今はプール以外の授業も分散して行っているので空いている教室がない、という声も挙がっています。各自治体の公営の屋外プールも同じく、三密回避などの理由から中止の判断が相次いでいます。
★プールに入れない⇒川遊びで水難事故増加の懸念
このようにプールが今年なかなか開かれないことで、ある重大な懸念があると、斎藤教授が指摘しています。
- 長岡技術科学大学教授・斎藤秀俊さん
- 「5~6月にかけて全国で7名の小中学生が水の事故で亡くなってます。7名のうちの5名が平日川で溺れてしまってる。要するに学校が休校になってたり分散登校で学校に行かなくてもいい日があった。その分家の周りで遊ぶ時間が増えてしまった。そうすると夏休みに入れば、平日学校に行かない日が沢山出てくる。例年だったら学校のプールが解放になってたり、近所の公営のプールが解放になってたり、そういう所に子供たち行ってたんですけど、今年は休んでしまう所が多いように見受けられますので子供の水難事故は増えるのではないかと予想できます」
そもそも5~6月の時点で平日も含め7人が川で溺れるというのは極めて稀なこと。(去年は2人だけだったそうです。)これから梅雨が明けてさらに暑くなる時期にプールに入れない子供たちが川で遊んでしまい、さらに事故が増えてしまうのではと懸念されています。
斎藤教授によると大前提は「川には近づくな」。海であれば、きちっと遊泳区域が決められていて、監視員が常駐しているけれど、川の場合そういう場所は極めて稀なので、やはり近づかないというのが大原則だそうです。
★「エアーういてまて教室」で水難事故防止
しかし、もし誤って川に落ちてしまった時に備えて、斎藤教授が会長を務める水難学会では、あることを提唱しています。
- 長岡技術科学大学教授・斎藤秀俊さん
- 「水難事故を防ぐための教育っていうのは実際にプールの中で浮く練習をするわけですね。それはあくまでも水があればそういうことができるということで、今年プールが使えないということになりますと、水がないわけですからどうしようかという話になるわけです。そこで水が無くても体育館の床の上でできるようにしました。例えば背浮きという実技。簡単に言えば床の上にただ寝っ転がるだけ。息を吸った状態で息を止める。苦しくなってきたと思ったら息を吐いてまたすぐ吸って。常に肺の中に息を入れている状態ですから、水の上でも浮かんでいることができる。もし万が一水に落っこちたとしても同じことをやっていただくと、
水の上でぷかぷか浮くことができるということなんです。」
学校のプールの授業は本来、水難事故を防ぐ教育の役割も果たしています。水難学会でも毎年、川に落ちたらじたばたせず浮いて待ちなさいという意味の「ういてまて教室」を全国の学校で開いていたけれど今年は水を使っての実技がなかなかできません。なので、水に入ったことを想定して体育館で寝っ転がるとなどの「エアーういてまて教室」を推進しています。