先日告示された東京都知事選挙。その争点の一つが新型コロナの影響で延期となっている「東京オリンピック開催の是非」ですが、今回取り上げるのは、東京オリンピックにものすごく振り回されている展示会業界です。6月23日(火)TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。
★展示会業界はトリプルパンチの大打撃
日本最大の展示会場・東京ビッグサイトがオリンピックの影響で長い期間使えないため、展示会業界は困っています。詳しいお話を、一般社団法人・日本展示会協会理事の堀正人さんに伺いました。
- 一般社団法人 日本展示会協会 理事・堀正人さん
- 「五輪と、コロナと、五輪の延期ということで展示会業界はトリプルパンチの大打撃を受け、各方面が死活問題に直面している。そもそも日本は展示会場が大変少ない。そういう中で、泣きっ面に蜂というか、会場がそもそも足りない展示会業界において東京五輪を開催するということで、(ビッグサイトが)メディアセンターになってしまう。また五輪延期でこれから1年以上制限されてしまうと約4兆円の売り上げが損失される。」
今年2020年の東京五輪開催が予定されていた段階で、東京ビッグサイトの使用制限は2019年4月~2020年11月までの20か月間。その間、大会を誘致した国や東京都がその分の展示会場を用意してくれるかというとそういう訳ではなく、一応、同じ青海エリアに仮設の展示場が建設されたものの、展示面積としてはこれまでのおよそ半分の規模。そんな中、代わりの会場を確保できない展示会主催者も多く、実際におよそ250の展示会が中止となっていました。
そこにさらに、新型コロナの感染拡大で今年2月以降ほとんど展示会を開けず、3月末に五輪延期が決定。もし五輪が来年の夏開催となった場合は、さらに1年ほどビッグサイトの利用制限が続くため、影響はあわせて13万社以上の展示会主催社・出展社に拡大。その額は4兆円に上るという試算が出ています。
★中小企業にとって、年に一回の営業チャンス
東京ビッグサイトの利用規制によって特に困っているのは、大企業というよりは中小企業なんだそうです。再び、日本展示会協会の堀正人さんのお話です。
- 一般社団法人 日本展示会協会 理事・堀正人さん
- 「展示会というのはそもそも、特に中小企業の皆様が、年に一度の営業の場、販促の場になっている。下町ロケットのような大変高い技術を持った企業の皆様が、例えば営業マンがいないだとか。そういうときは、この展示会の2~3日間が一年分の営業、販促の場になるわけですね。この1年に1回の場が無くなるということは、経済が動かなくなってしまうということにつながります。」
例えばある中小企業からは、「ビッグサイトで毎年展示会に出展し8千万円を売り上げていた。零細企業で宣伝や全国営業ができないので、使用制限の一年延長により倒産の危機に追い込まれる」という悲鳴の声も上がっています。
そんな中小企業など572社が発起人となり、東京都などに嘆願書と署名を提出。新たな仮設の展示会場の建設や、ビッグサイトに複数ある展示場のうちいくつかは展示会場として使えるようにしてほしいなど訴えています。
★展示会の完全オンライン移行は困難
一方で、展示会業界のトリプルパンチのうち「新型コロナウイルス」については、対策をしながら展示会を行うためのガイドラインを日本展示会協会が作成しました。来場人数を従来の半数程度に制限するほか、商談が長引く場合はウェブ会議を活用、といったことも書かれています。
ただあくまで展示会の現場に行くことが大前提となっていて、全面的にウェブに移行する形にはなっていません。その理由について、日本展示会協会の堀正人さんに伺いました。
- 一般社団法人 日本展示会協会 理事・堀正人さん
- 「ウィズコロナ、アフターコロナを目指したオンライン展示会。現時点では、すぐに移行するのは難しいと考えている。やはり展示会で一番面白いのは偶発的に出会える場というのが大変大きい。例えば食の展示会では試食ができない。あるいは商談でビジネスを成立させるためには、決裁者に会って人柄とか信頼性が合って商売を始める。私の予測ではリアルとオンライン、ハイブリッド型に近い将来なるのかなと」
展示会はオンラインで代替できない要素もたくさんあり、もしリモート化するにしても部分的になるのではというとことです。そういった意味でも、展示会場の整備はやはり急務と考えられます。