「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」。毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。
今回は6月14日の紙面。『よしずの出荷ピーク』という、梅村武史記者の記事です。首都圏の情報を伝える「メトロポリタン」面に、「心地よい風 通します」という涼しげな言葉と、よしずを編む写真。蒸し暑い日々が続く中、思わず目を止めてしまいました!
★今年はコロナの関係で注文が多いね
今年は例年以上に注目が集まり、大忙しということなので、その様子を、40年以上よしずを作り続けている、栃木市の『松本よしず商店』松本八十二さんにお話を伺いました。
- 松本八十二さん
- 「今年はいまのところは製品が間に合わない。コロナの関係で表の空気と入れ換えしろって形だから、よしずがあれば涼しいから。そういう形で、が多いんじゃないかな、って思ってるんですよ。だいたい一割ちょっと多い。だいたい二千枚くらいかな。一日にうんと編めるものじゃないから。よその国でも、よしずは作っているんですけども、国産のがよしずがいいってことが、使っている人が分かってくれたんで、それで製造する人が少ないから結局間に合わない。順番待ち。」
エアコンだけでは換気ができないので、新型コロナの対策としては、時々、窓開け換気が必要。そこで日差しを遮り、風を通す、「よしず」が威力を発揮すると、注目を集めているのです。さらに、ここのところ一気に蒸し暑くなり、例年以上に注文が増えたそうです。
しかし、一方で作る人が減って、なかなか製作が追い付かない状況も。
松本さんたちのよしずは、栃木、群馬、埼玉、茨城の4県にまたがる渡良瀬遊水地で育った天然のヨシを使って、多くは手作業で作ります。1960年代には800人の生産者がいたのに、今は松本さんをはじめ、数人しか残っておらず、大量には作れないのです。
★今年のよしず作りは、出だしから大変でした
松本さんが今年も2000枚ほど作るよしず。大量には作れない、というお話でしたが、それは作り手の少なさだけでなく、とても手がかかるから。それに加え、今年は、去年の台風の影響で、さらに大変だということでした。
- 松本八十二さん
- 「12月の10日ごろかな、早くてもね。沼に入って材料の刈り取りが始まるんですよ。2m70、3mとかっていう、その材料を選別する、それから今度は機械で半分くらい皮を?いて、あとの半分は手で一本一本皮を?くんですよ。それから今度は製品に編む段階に入るんですよ。一枚編むには時間がかかるんですよね。手だとだいたい2時間くらい。だいたい手作業だね。今年は20キロくらい先の川の堤防が切れちゃったんですよ。それで、畑の土だとかが、遊水地に流れてきちゃったんですよ。前の年の三分の一しか、刈り取りができなかった。」
よしずを作る工程のほとんどが手作業なんですね!皮むきも、半分は機械でできるですが、柔らかいところは、機械でむくとヨシが割れてしまうので、結局、最後は手作業…本当に手がかかる。
しかも今年の分のヨシは、去年の秋の台風19号で、生息地である渡良瀬遊水地が冠水したため、刈り取る作業が例年以上に難航した。ヨシに付いた泥を取り除く作業もあり、例年以上の手がかかっています。去年の台風は大災害でしたからね。
★一本のヨシで作るよしずは違う!
いろいろと大変なよしず作りですが、今、コロナの影響で「よしず」が見直されているだけでなく、最近は「安い中国産ではなく、やっぱり国産がいい」と、使った人の口コミで「国産」が見直されている、ありがたい、と松本さん。
では、国産と中国産、具体的にどう違うのか?松本さんに教えて頂きました。
- 松本八十二さん
- 「なんで違うかっていうと、うちで使ってるのは、1本のヨシで編むんですよ。一本のヨシで3mも編むんですけども、中国のは足してあるんですよ、短いから。足してあるからヨシに力が無いから、立てておくとしなっちゃうんですよ。日本のは力があるから全然しならない。国産の場合は自然のものだから、いくらかヨシが右に曲がったり左に曲がったりしてるけども、そのまま編むものだから、隙間ができるんだよね。だから風が入って来て、部屋の中が涼しいんですよ。中国のはやっぱり短いから、足してあるから隙間が無いから風が入ってこないんですよ」
中国さんのよしずは、背丈の低いヨシをつなぎ合わせて必要な長さにしている。松本さんのよしずは、背丈のある一本の自然のヨシを使う。一本で3m!
この違いが大きくて、立てかけたとき、1本ものだと弾力がありますが、つなぎ合わせたものは、そこで折れてしまい、しなってしまうことが多い。
松本さんのよしずは「色は褪せるけど、7年くらいは持つよ!」と。
梅雨明けごろまで続く作業、あとひと踏ん張り!頑張ってください!
新型コロナの対策で「新しい生活様式」と言われていますが、その「新しい」の中には、こうした「昔ながらの古い」物を見直す「新しい」生活があるんですね!まさに「温故知新」!