先日、日本コカ・コーラが、新しいサイズのペットボトルを導入することを発表。定番の500mlサイズの販売を縮小し、代わりに一人で飲み切るのにちょうど良い350mlを、首都圏の一部のスーパーなどで順次導入していくということでしたが、実は、こうした「小さくする」動き、いろいろな商品に広がっているんです。11月20日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、飴です。カンロ株式会社、高島稔昭さんのお話。
★わずか6粒の小袋サイズ
- カンロ株式会社 高島稔昭さん
- 「一般的な売り場にある袋タイプの飴を、手に乗るようなサイズにした。ジッパーをつけて、6~8粒程、裸の飴が入っているのが特徴。「大きな袋」の飴は個包装で、人とシェアできたり、持ち運びに便利。ただし入っている量が多い。また「スティックサイズ」でも少し多いという声も。一度紙を破ると、鞄の中でバラバラになったり湿気てしまうこともありました。今回、小袋「コンパクトサイズ」のキャンディーは一回で食べきれる量で、いつでもどこでもすぐ食べられるという利便性を追求した商品になっています。」
従来の袋タイプは15~30粒、スティックタイプは10粒ほどですが、コンパクトサイズはそれよりも少ない6~8粒。「健康梅のど飴」「金のミルクのど飴」などの定番商品から季節限定商品まで様々出ています。
去年の4月からコンビニ限定商品として売り出してから売上は上々。実はここ数年飴の売上が伸び悩んでいたそうですが、コンパクトサイズのおかげで市場が盛り返している状況なんです。
そして今では他社メーカーもコンパクトサイズの販売を始め、コンパクトサイズ専用の棚がある位、人気のカテゴリーに成長しました。
★マイボトルも小さく!
そして、コンパクト化の流れはこんな商品にも来ていました。デザインワークスエージェントの代表取締役、小林裕介さん。
- デザインワークスエージェント・代表取締役 小林祐介さん
- 「いわゆる水筒。ステンレスボトルで「ポケトル」という商品を、120mlのサイズで作りました。これまで大手が作っていた一番小さいサイズは200ミリ位でしたが、この120ミリは湯のみ一杯分ぐらい。女性の鞄がものすごくコンパクト化されてきてる流れは知っていた。飲み物をコンパクトに持ち歩くことが、完全に時代ニーズとしてハマっているはずだと腑に落ちていたので、思い切ったサイズ展開をしてみました。企画した時は年間で3~5万本売れたらいいなと言っていたんですが、今85万本ぐらい売れていて、年内に100万本に到達できる推移で動いています。」
東急ハンズやロフトで買うことができるそうで、去年の12月に発売して以来の大ヒット商品。120ミリ、びっくりするくらい小さい!
小林さんが出張で新幹線を利用する際、500ミリのペットボトルを買うことが多いそうですが、丸一日営業してホテルに戻ってくるといつも半分ぐらい残ってしまっていたそうです。そこで、OLさんが通勤の1時間でどれくらいの量を飲むのか想像してみたら、120ミリ位じゃないかと・・・
いまウォーターサーバーがある会社も多いので、継ぎ足しながら飲む方も多く、あくまでも必要最低限だけ持ち歩きたいというニーズに合致し、大ヒットとなったようです。
★若い女性を狙ったはずが・・・
さらに、この水筒はこんな人たちにも受けているようです。
- デザインワークスエージェント・代表取締役 小林祐介さん
- 「シニア層が物凄く買っているという情報を、小売り店から聞きました。理由を尋ねたら、常備薬を持っている方が多く、出先で常備薬を飲む時に水を持ち歩けるコンパクトなボトルが欲しかったという物凄く大きな市場があったんです。あと、極端に重たいものを嫌うことと、そもそもそんなに飲み物を必要としてないところがマッチしたのではないかと思っています。」
売り出す前はOLさんがメインターゲットだったんですが、蓋を開けたら五分五分ぐらいでシニアの購買層が多いことがわかり、小林さんも驚いていました。出先で薬を飲むのに、丁度良い大きさでもあったようです。
★商品名も小さく!?
一方で、今度は商品の「ロゴ」を小さくするというコンパクト化の流れもありました。通販サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営している、アスクル株式会社の田島眞弓さんのお話。
- アスクル株式会社 田島眞弓さん
- 「ナショナルブランドのメーカーの商品は、ドラッグストアなどの店頭で、いかに自分の商品のブランド名が大きく出て、これは何だ!私は誰だ!と主張するようなパッケージがほとんどなんです。ハンドソープなら「花王のビオレ」「ライオンのキレイキレイ」など、ひと目で分かるような「主張型」のパッケージです。でも実は、その「煩い」パッケージをむいて使っているという声もあるんです。やっぱり家の中に置くとなると取りたくなる。そこで、その商品がどうすれば生活の中に馴染んで心地良いデザインになるのか、メーカさんと一緒になって開発しています。」
こちらは「暮らしになじむデザインを」という発想でスタートしたLOHACOの取り組みです。
SNSなどを参考にして、今、みんなどんなインテリアの部屋に住んでいるのか研究。そして、基本的に中身は変えず、商品の外側のパッケージのデザインを、そうした部屋になじむようにメーカーと一緒に考えて作成。そしてオリジナル商品としてLOHACOのサイト内で販売しています。
「暮らしになじむLOHACO展」という企画タイトルで展開していて、扱っているのは、ティッシュ、トイレットペーパー、洗剤などの日用品。他にも食品や飲料など、これまでに約200点の商品を世に出してきたそうです。
▼LOHACOオリジナルデザインの商品
実はデザインだけでなく、機能的にも合理的なんです。例えば、液体の石鹸をおしゃれな陶器のボトルに詰め替えて使う方がいますが、その場合、どうしてもノズルが純正でないので、メーカーが計算した適量を出すのが難しくなります。ですが、元々のボトルを陶器風のおしゃれなデザインにしておくと、詰め替える必要もなく、純正のノズルで、石鹸の濃さに見合った量を出せる、というわけです。
こうした商品は、元の値段よりも20〜30円位割高なものも多いそうですが、売上は伸びているということでした。
★ネット通販=ECならではの付加価値
でも、こんなにロゴを小さくしたら、どんな商品なのか、わからないので不親切なのでは?と思ったので、再び田島さんに聞きました。
- アスクル株式会社 田島眞弓さん
- 「LOHACOはネット通販(=EC)でもあるので、棚に並んでいるわけではなく、サイトの商品の写真の横で、名称や機能や特徴などの説明が、同じ画面の中で出来るので、商品自体のパッケージを自己主張させなくても良いんです。なので、パッケージにすべてを詰め込まなくてもいい。だったら色んなデザインの可能性が広がって、お客様が本当に望んでいるようなデザインができるんじゃないかというところからスタートしています。」
確かにネット通販では、店頭と違って、商品のパッケージを細かく見たりしないですよね。商品名や効用などは、テキストで見ちゃうので、パッケージはおしゃれでOK。
実はこれ、ビジネス的な狙いもあるそうで、ネット通販は価格競争に陥りがちですが、パッケージデザインで付加価値をつけることで、値引きせずに売っていく、という戦略とのこと。LOHACOはネット通販後発だからこそできるというお話でした。
一口に「サイズ」と言っても、みなさん時代に合わせて創意工夫、消費者の心をつかんでいました。