台風19号が様々なところに大きな影響を及ぼしていますが、鉄道への被害を取材しました。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」10月16日(水)は、『台風19号、鉄道への影響長引く』というテーマで近堂かおりが取材をしました。
★浸水被害のあったJR武蔵小杉駅
都心では、JR武蔵小杉駅が浸水の影響で、自動改札機やエスカレーター、エレベーターが使えない状態になってしまいました。このため、朝の通勤時間は大混雑。私が取材に行った帰宅時間帯もやはり大混雑でした。
- 駅アナウンス
- 「大変ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。現在ホーム上へは階段のみのご案内となっております。東急線お乗り換えのお客様、連絡通路、大変、混み合っておりまーす!」
- ●「使える自動改札も制限されていて、2列に並んで通りの向こうのスーパーの角を曲がった先まで、300mから400mぐらいかな。なおかつ、エレベーターもエスカレーターも止まっている状態で、狭い階段で降車するお客さんとすれ違いながら、あちらの階段、こちらの階段、いずれも大混雑で。帰りも壮絶でした。」
- ●「明日(16日)、とどろきアリーナでBリーグ(バスケット)の試合があるので、すごい混みそう。試合の時は4千人ぐらい体育館に行くので、それが一気にここに来ちゃうと心配かな。」
★なぜJR武蔵小杉の新南口が!?
武蔵小杉駅は近年、タワーマンションが次々にできてどんどん人口が増えているところ。以前は、JR南武線と東急東横線2路線の駅だったのですが、JR横須賀線の駅も新たに作った。その新しくできた駅のエリアにはタワーマンションがたくさんあります。つまり普段から混雑する駅。
今回は、そのJR横須賀線に乗る人が利用する新南口の改札やエレベーター、エスカレーターが故障してしまった。なぜ、横須賀線側の新南口だけが被害にあったのか、鉄道ライターの杉山淳一さんにお聞きしました。
- 杉山淳一さん
- 「武蔵小杉駅の中でも南武線・東急線とは離れている場所なんですけども、ちょっと低い位置にあるんです。ちょっとすり鉢状みたいな感じになっていると思うので、水が溜まりやすいところだったみたいです。元々、人が最近増えていて混雑が問題になっている駅だけに、人の流れがかなり狭まっている、ボトルネックになってしまっているので、なおのこと人が並ぶような感じになるでしょうね。」
自動改札機はすでに臨時のものを設置したりして対応しているのですが、エスカレーター、エレベーターの復旧はまだかかりそうとのこと。きのう復旧作業している方に伺ったところ、少なくとも今日の朝は難しいとのことでした。
★北陸新幹線が車両基地で水没
台風19号は首都圏の鉄道ばかりでなく、新幹線に大きな影響。北陸新幹線が水に浸かっているニュース映像をご覧になったかと思います。こちらの影響についても、鉄道ライターの杉山さんに伺いました。
- 杉山淳一さん
- 「ニュースの映像を見て、”あれっ、なんか浮いているな”って思ったんです。新幹線の車両は非常に気密性が高いんですよ。高速でトンネルの中に入ったりすると耳がツンとしちゃったりするので、なるべく気密性を高めてそういう影響が少ないようにできてるんですね。ところが今回それが仇になっちゃって、空気がどこからも抜けていけませんから、例えて言うならアルミ製の弁当箱みたいな構造なんですよ。浮いちゃうと、架線柱とかにぶつかって車体が壊れるっていうことがまずひとつと、ずれたときに水が引くと脱線ということになります。あとは真水であればきれいに乾かせば使えるかもしれないですけど、今回、泥水なので、やっぱり半導体であることもそうですし、とにかく電装品っていうのは泥水に浸かっちゃうともう使えない。そうなるんじゃないかなと思いますね。」
★北陸新幹線はいろいろと特別なんです
こうなると、北陸新幹線の復旧は長びきそう・・・。そこで、ほかの新幹線もあるので、車両を代用できないのか? 杉山さんに聞いてみました。
- 杉山淳一さん
- 「借りてくるということに関しては重要な問題がありまして、北陸新幹線というのは、関東と関西を結ぶ路線なので、電力の周波数が途中で変わるんですよ。軽井沢までは関東の周波数で、佐久平から糸魚川までは関西の周波数で、糸魚川駅だけはまた関東の周波数に戻って、そこから金沢まではまた関西の周波数と、周波数が変わるんですね。北陸新幹線の車両っていうのはそれに対応した車両なんです。東北新幹線や秋田新幹線や上越新幹線というのは全て関東側なので全て50ヘルツにしか対応していません。なので、そっちの車両を持ってくるというのはできないんですね。」
北陸新幹線は、ほかの新幹線と違っていろいろ特別なので、代えがきかない。周波数のこともそうですし、難所である碓氷峠を超えるのに適したモーターやブレーキを搭載している。
★1965年に東海道新幹線では・・・
しかも、この北陸新幹線の車両基地周辺は、ハザードマップで10メートル以上の浸水が予想されるなど洪水の危険性が指摘された地域だった。であるなら、事前に何かできなかったのか。杉山さんのお話です。
- 杉山淳一さん
- 「東日本大震災ときもそうでしたけど、この経験をどこがどのように活かしていくのかということを考えなきゃいけないですね。新幹線の問題にしても、誰かが気を利かせて車両を退避させておけば助かったかもしれないですよね。東海道新幹線は1965年に大雨が降るので機転を利かせて、大阪車両基地の新幹線車両を全て本線、お客様を乗せて走る線路に移動させて退避させて事なきを得たっていう事例はあります。今後同様な台風が来るとかいうことになったときに、とにかく車両はもう低い位置にある車両は全部高い位置に上げろと、今後二度と同じことを起こさないような仕組み作りを始めていくことになるんだろうなと思います。」
なぜ北陸新幹線を移動させなかったのか。この点についてはJR東日本からまだ説明はありませんが、事前に何かできたのではないか・・・。
あの震災以来、『想定外』はなくさなければと痛感したはずで、特に今回は、先人が水害を回避した事例があったのに・・・残念。しかし今度こそ、教訓としてしっかり活かしてほしいですね。