小中学校などの『体育館』について気になる話題がありました。
文部科学省が9月に、全国の小中学校の教室のエアコン(冷房)の設置状況を調査して、先週、その結果を発表しました。普通教室(子供たちが普段、授業を受けている教室)の設置率は、全国で77・1%(前の年は58%)。急速に普及しています。
ところが、体育館の冷房施設が、まだまだ進んでいない、ということなのです。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!9月24日(火)は、レポーターの近堂かおりが『避難所となる体育館 断熱化が急務』というテーマで取材をしました。
★公立小中学校の冷房設置状況~東京都
小中学校の冷房設置が全国でいちばん進んでいる東京都の状況をお聞きしました。東京都教育庁の西山公美子さんのお話です。
- 西山公美子さん
- 「普通教室については、東京都では100%、整備されているという状況です。東京都の小中学校の体育館への設置状況については、令和元年9月1日現在で24・3%と、着実に進めてきているという状況です。昨今かなり災害が多い日本ですので、小中学校というのは避難所に指定されているところがございますから、避難所の機能の強化ということも併せて、体育館への空調設置をしていきましょうということに視点を置いています。」
普通教室は100%なのに、体育館は24・3%。一番進んでいる東京都でもこのくらい。これが、全国の小中学校の体育館ということになると、冷房が設置されているところは、3・2%。ほとんど設置されていない。
この数字を見て心配になったのは、災害のときのこと。避難所として、場合よっては長期間生活する場になるのに、これはつらい。台風15号のときは、通過後に気温が急上昇しましたからね・・・。
各自治体では、普通教室に続いて、体育館へのエアコンの導入を進めていく、ということですが、できるだけ早く、進めてほしいものです。
★エアコンも大事だけど断熱を!
ただ、このままエアコンを導入するのはどうなのか、と指摘している方がいます。建築家で、東北芸術工科大学教授の竹内昌義さんのお話。
- 竹内昌義さん
- 「去年、豊田市で熱中症で亡くなったお子さんがいて、それを受けて政府がエアコンを入れるための補助金をものすごく充実させたので、その結果として今、エアコンの導入が全国津々浦々に広がるようになったんです。でも、それだけではなくて【断熱】もセットにしないと、断熱性能のないところにエアコンを付けるとものすごく電気代がかかるんじゃないかということです。エネルギーをものすごく無駄にしちゃうよという話なんです。日本の住宅もオフィスもそうなんですけど、どちらかというとエアコンに頼っていて、断熱性能を上げる努力をあまり今までしてこなかったという状況です。」
竹内さんのお話では、学校の建物だけでなく、日本の建物はおしなべて、ヨーロッパなどと比べると断熱化がかなり遅れているそうです。つまり、体育館もそう。
夏は暑くなりやすく、冬は寒くなりやすい。その状態でエアコンを導入してもエネルギーを無駄にするばかり、ということなのです。
★屋根の断熱は比較的やりやすいんですよ!
といっても、各自治体も予算の問題がありますから、なかなか断熱までは・・・。そんな中、『それならとりあえず、屋根から断熱化』という動きがあるそう。建材の製造・販売会社『田島ルーフィング』の東京支店、石原勉さんにお聞きしました。
- 石原勉さん
- 「体育館は災害時に避難所になって生活空間にもなることがありますので、壁や窓も当然やるべきだとは思うんですけど、やはり断熱材を入れるとどうしてもお金がかかってしまうのと、あと工事的に難しいこともあったりします。体育館の屋根だと比較的、防水するときに一緒に断熱材を入れることはできるので、少しずつ最近、話が来ているような状況です。」
小中学校の体育館の屋根は、多くが鉄板で凹凸型や波型になっています。改修などで防水工事をするときに、凹凸屋根のへこんだところに板状の断熱材を敷き詰めて、その上に、防水シートが設置する。
断熱材を敷くと屋根の凹凸もなくなるので防水シートを施工しやすいというメリットもあるし、断熱効果もある。さきほどの建築家の竹内さんも、エアコンと断熱材の両方セットで導入できなければ、まず屋上の断熱化から、とおっしゃっています。(仮に室温が30℃、屋根の上が70℃だと、体育館内の体感は50℃!)
★しっかり断熱をするとここまで効果が!
竹内さんによると、断熱効率の優れた建物は日本にはほとんどないそう。でも、中には先進的な取り組みを進めているところもあって、岩手県の紫波町(しわちょう)では、屋根や壁にも断熱材を使った体育館があるそうです。どのくらい快適なのでしょうか。
- 竹内昌義さん
- 「その体育館は屋根にグラスウールという断熱材が入っていて、バレーボールの専用体育館なので窓がほとんどない体育館なんです。断熱性能をきちんとしたことで、冬でも暖房がそんなにいらなくて、マイナス15℃ぐらいまでいくんですけど、(体育館内は)10℃よりも下がらないという状況になっています。夏もエアコンはついているんですけれど、朝1回かけるとその冷気が溜まっているので非常に快適だと聞いています。」
体育館は子供たちの場所であると同時に、災害時の避難所にもなるので、エアコンだけでなく、断熱化も進めてほしい。屋根に断熱材がしっかりと入ると遮音の機能もあると聞きます。断熱化すれば、エアコンを余計に使わずに済むので、CO2も減らせる。『断熱』について、もっと見直していきたいですね。
![「現場にアタック」近堂かおり](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/03/sump_kondokaori-300x300.jpg)
近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。