ホテルや旅館に泊まった時に使うシャンプーや歯ブラシなどの「アメニティ」。ホテルに泊まった時に、お気に入りのメーカーのアメニティが置いてあると女性は非常に嬉しいものですが、いまそのアメニティ業界が大混乱となっています。7月23日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
この問題を追いかけている、月刊 国際商業の堀川 高誉記者になにが起きているのかお聞きしました。
★大手が撤退で大混乱
- 月刊 国際商業記者 堀川 高誉さん
- 「そもそもの混乱の原因は資生堂がアメニティ事業から撤退したこと。撤退したのは昨年の12月1日。アメニティというのは価格競争になってなかなか利益がとれないんです。このまま続けてもうまみがないということで撤退した。資生堂に変わるところをホテル側も探さなくてはいけないし、実際に生産ができないのとき継いでも利益がとれないので、なかなか二の足を踏めないという状況です。」
去年12月にアメニティから撤退した資生堂は、全体の半分のシェアを持っていました。資生堂は主にシャンプーやリンス、ボディソープを作っていたので、その3つを中心に足りなくなってきています。いまはホテルや旅館の他にも、温泉施設や特養施設などにも置いていますから、影響は色々なところに及びます。
★ポンプ不足が大きな問題!?
撤退の理由は、価格競争で利益が取れなくなったことや物流費の高騰なんですが、同時に、違う問題も背景にありました。再び堀川記者のお話です。
- 月刊 国際商業記者 堀川 高誉さん
- 「 化粧品の状況というのは、いまインバウンドでかなり売れていて外国人が日本に来て買っている。化粧品を入れる容器、特にポンプ式と言われる、押して出てくるポンプ。それを作る容器メーカーは限られているので注文が殺到して容器が足りないという状況が昨年の夏前から続いている。」
「撤退問題」に加えて、今度は「容器問題」。去年から問題になっているのは、化粧品の容器に使われるポンプ不足。今年は去年ほど不足していないということですが、それでもまだポンプ不足は続いていて、今回の問題の中心はシャンプーやリンス、ボディソープですから、問題も大きく関わってきます。
★オリジナルアメニティなどの対策も
これではアメニティを置くホテルも大変だろうと思い、話を聞いていました。旅行の企画やホテル、ゴルフ場を運営する国際興業の小泉 尚大さんのお話です。
- 国際興業 小泉 尚大さん
- 「いま世間で騒がれているように資生堂が業務用から撤退して、私が知っている限りここまで大手さんが撤退するのはなかった。資生堂の受け皿として他のメーカーさんで受けきれないというのが現状。当然ホテルでのニーズは変わらないので、新規でのホテルも増えているし、安定的な数量の確保を早いうちにワークしていく格好です。」
東京オリンピックを前にホテルの数自体も増えていますし、なんとかアメニティの数を確保するよう動いていました。国際興業では自分たちでオリジナルのアメニティも作って、なんとか乗り切りたいということでした。
★撤退表明するも、製造だけは継続!
ここまで不安な話ばかり続きましたが、じゃあどうするのか。実は、思い切った対応を取るこんな企業も出てきています。株式会社ウテナの矢野 霞さんのお話です。
- 株式会社ウテナ 矢野 霞さん
- 「うちの事業全体を経営が考えた時に、グループ会社のウテナ商事というサービス会社があるが、そこを閉鎖するということが決まりました。8月いっぱいで閉鎖となりますが、このウテナ商事で取り扱っていたのが業務用、各アメニティ。撤退することを決めたんですが、もうやめますと発表したときに「うちで営業をするので継続して」という提案があり、商品を作るということだけにして継続することになりました。」
ウテナは今年1月、アメニティの製造・販売を行なっていた会社を閉鎖し、アメニティ事業から撤退すると発表しました。来月8月に閉鎖することになっていましたが、代理店からの要望で、急遽、製造だけは継続することを決定。利益が取れないと言われたアメニティ事業ですが、他の企業と手を組むことでチャンスを見出しています。
さらに、埼玉県の化粧品メーカー「メディカルスペース」は、工場を増設すると発表。いままで1日10トン作っていた生産量を倍にする予定です。しかし工場は年内完成予定でまだ先。今年の夏は、アメニティ不足が続きそうです。