今日は、私たちの日常を大きく変える可能性があるかもしれない技術のお話。というのも、不思議な【手袋】が開発されたそうなのです。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!7月10日(水)は、レポーターの近堂かおりが『手袋をすると味が変わる?味覚を変えるテクノロジー【電気味覚】』というテーマで取材をしました。
★食べ物の味を変えちゃう手袋!
不思議な【手袋】とはどんなものなのか?明治大学総合数理学部・先端メディアサイエンス学科・教授の宮下芳明さんのお話です。
- 宮下芳明さん
- 「手に持った食べ物や、手に持った食器越しに味わう食べ物の味を変えちゃう手袋ですね。例えば薄味の食べ物が濃い味になったり、濃い味が薄味になったり、ということが実際に起こります。塩味とか酸味にあたるものがよく制御できることが分かっています。電気刺激を与えると、舌の上にある味蕾が反応して味を感じるのですけど、我々、明治大学が世界に先駆けてやったのが、食べ物を食べる時の食器に、その電気刺激を積極的に使って、食べ物の味を変えようという試みです。そういう食メディアの開発を我々10年間ぐらい続けてきました。」
舌に電気刺激を与えると味のような感覚が生じる【電気味覚】と呼ばれるこの現象、およそ200年前に発見されたものだそう。明治大学の宮下研究室では、この技術を実社会で生かそうと研究が進められています。
今回開発されたのは手袋型のデバイスで、指の部分に電極がついていて、これで食品を掴んで口に運ぶと、舌に電気の刺激が与えられる。これにより、しょっぱさや酸っぱさなどの味を変えることが可能です。
手づかみの他にもフォークやコップ、食器など、金属製の電気を通すもので食べても味が変えられるということでした。
★お~!本当に塩味が・・・!
実際に私も手袋をして体験してみました。
- ●「味が変わる手袋を左手につけています。手の甲のところに電池と回路の装置が付いています。人差し指のところに電気を通す素材が付いています。人差し指と親指でキュウリを持って食べます。おー、口を離すとかなりしょっぱいです。噛み切るまではうっすら塩味、噛み切ってキュウリから口が離れるとかなりしょっぱいです。不思議。」
本当にそんなに変わるの??と思いますよね。是非とも体験して頂きたいのですが、本当にしょっぱくなるんです!
取材した日は、宮下教授の研究室に「バナナ」「レモン」「キュウリ」「ゆで卵」と色々と持ち込んで試しました!
特にゆで卵!!コンビニで売っている味付けゆで卵ですが、普通に食べると私にはちょっと薄味。ところこの手袋を使って食べると、塩味アップでいい感じ!!
一方レモンは手袋を使って食べるとちょっと酸っぱめのオレンジくらいの味になりました。すごく不思議で、すごくおもしろい!
★面白いだけじゃない、健康に役立つ技術!
手袋を使うだけで味が変わるのでとても不思議な感覚でしたが、この技術によってどんなことが実現できるのか、宮下教授に伺いました。
- 宮下芳明さん
- 「今は、例えば、味覚検査とか、病院食を美味しくするくらいのことだと思うんですけど、将来的には、人々の生活を豊かにするし、人々がより健康で、しかも好きなものを好きなだけ食べられて、味覚面での幸せを常に得つつ、かつ健康と両立する、という未来を作るためのなくてはならない技術になるんじゃないかと思います。ダイエットとかそういった産業にも貢献すると言われています。」
健康面やダイエットでの実用化が期待されているそうです。
例えば、高血圧や糖尿病によって食事制限が必要な場合、減塩食や療養食にこの手袋を作って塩味や甘味を発生させれば、患者さんは好みの濃い味で食事ができます。結果、薄味を我慢して食べるようなストレスとは無縁の食生活が可能になるというわけです。
また、病気でなくてもダイエット中なども、好物を我慢するストレスを抱えがちですよね。そこでダイエット食に、この電気を流して好きな味付けを再現すれば、やっぱりストレスが軽減されて満足感のある食事になります。こうなれば、挫折しらずのダイエットになりそう!
宮下さん曰く、『食事は楽しむものなのに、みんな健康のため食生活を何かしら我慢している。』その矛盾を解消できる技術になるはずだというのです。
★1978年・星新一『味ラジオ』の実現!?
お話の中で、宮下教授がこんなことをおっしゃいました。
- ●「この【味を変える技術】と【ラジオ】って相性がいいんですよ。」
宮下教授、一体どういうことですか??お話を伺いました。
- 宮下芳明さん
- 「今回ラジオの取材ということでときめいたのが、この話ができるということなんですけど・・・1978年に星新一さんによって書かれたショートショートに『味ラジオ』というものがありまして、味を配信する未来のラジオの話なんですね。みんなが奥歯に味ラジオという機械をつけていて、みなさんがこの音声を聞いているのと同じ感覚で、味が配信されて、みんな口の中でその番組としての味を感じるというショートショートです。我々も実はこういったものを作れると思っていまして、一つの未来のメディアの形、味のメディアの形として、全く同じようなものを作れるんじゃないかと思って試行錯誤しているものです。」
リスナーみんなで【味】が共有できるラジオは作れる、ということで楽しみですね。
他にも、まだ実現には時間はかかるそうですが、例えばスマートフォンを使って、自分の口の中の味を操作したり、見ているテレビの映像の味を共有できたり、そんな未来も遠く無い・・・かもしれないとのことでした。
(星新一さんの「味ラジオ」は『妄想銀行』に収録されています)
妄想銀行 (新潮文庫)