梅雨時期に収穫期を迎える「梅」。梅干しには塩分やクエン酸が含まれていることから、ここ数年の猛暑でも熱中症対策に効果的と注目が集まっていますし、また、昔から、健康に関する言い伝えがあれこれあります。そうした健康効果について、最近、科学的に検証することが進んできました。7月8日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは長年、梅や梅干しに含まれる成分を調べている、和歌山県立医科大学・準教授の宇都宮洋才さんのお話です。
★梅の成分“バニリン”がアレルギー症状を抑える
- 和歌山県立医科大学・準教授 宇都宮洋才さん
- 「梅を毎日食べている人と食べてない人で、花粉症のシーズンの生活変化を聞き取り調査すると、梅を食べているとアレルギー症状が少ないのが分かった。梅干しや梅に含まれるにおいの成分で“バニリン”というものがあるが、その成分が細胞内にあると、花粉症の症状を出しにくくなるということが分かった。」
しかも、1日に何個も梅干しを食べる必要は無く、「1日1個」で効果が出るようです。宇都宮さんは梅の一大産地、和歌山県の大学ということもあり、地元の人達の協力を得て20年以上梅干しに関する健康効果を科学的に検証し論文にまとめています。
★ピロリ菌の動きを抑制する作用も
さらに梅干しに関する“言い伝え”を研究していくと、他にもつきとめた効果があるそうです。再び宇都宮さんです。
- 和歌山県立医科大学・準教授 宇都宮洋才さん
- 「ピロリ菌は顕微鏡で見ないと分からないが、胃の中を元気良く動き回っている。昔からの“言い伝え”が本当なら梅はピロリ菌に効くと思ったのだが、ピロリ菌に梅を加えると、実際にピロリ菌の動きを止める作用があった。科学的な研究はあまりされていなかったので、効果を確認した時は震えましたね。」
昔から「梅干しには抗菌効果や殺菌効果、解毒効果がある」などど言われてきましたが、宇都宮さんは、梅干しに含まれる成分のポリフェノールの一種が、ピロリ菌の動きを邪魔することを科学的に付きとめました。宇都宮さんの長年の研究で古くからの“言い伝え”が次々と証明され、ますます梅干しに注目が集まりそうです。
★梅干しパワーの恩恵に喜ぶ「うめ課」課長
実際に、南高梅の産地である和歌山県「みなべ町役場」の方にお話を聞いてみました。うめ課・副課長の長瀬一也さんに、梅に関する研究結果について率直な感想を伺いました。
- みなべ町・うめ課・副課長 長瀬一也さん
- 「梅が効くっていうのは本当にびっくりした。なんか信じられない。熱中症に良いとは聞いていたが、ピロリ菌の抑制効果というのは素晴らしい発見。身近なものでみんな梅干しを食べているし、健康な人も多いので「梅干しパワー」のおかげです。」
みなべ町には梅の生産者だけでなく、梅干しなどの加工品を作っている会社も多くあるそうで、自分たちが作っているもの、しかも毎日食べている梅干しの効果が科学的に解明されたことに非常に喜んでいました。
★人手不足の解消にも期待
さらに、「梅干しパワー」の証明がもたらす効果は大きいと、長瀬さんは話していました。
- みなべ町・うめ課・副課長 長瀬一也さん
- 「いま特に課題になっている「人手不足」。全国的にそうだが、みなべ町でもかなりの人手不足で、雇用対策には苦労している。梅が売れれば価格も安定してくれるし、若い人も梅を作ってもらえば後継者が増えていくことに繋がるのではないかと思う。」
「収入が安定しないなら、跡を継がない」という悪い流れを、今回の研究結果で断ち切れるのではないかということでした。
★「1日1個」でOK。梅干しを食べて健康に
長年の研究で次々と明らかになってきた梅干しによる健康効果ですが、研究を続けている宇都宮さんは梅による健康効果を多くの人に実感して欲しいと、最後にこんな話を聞かせてくれました。
- 和歌山県立医科大学・準教授 宇都宮洋才さん
- 「一つは朝ご飯、昼は弁当、夜は梅酒や梅ジュースで良い。梅干しだけである必要はなく、人それぞれの生活習慣にあった摂り方で良い。薬は病気にならないと飲めないが、梅干しは健康な時から食べられる。梅干しは私たちの分からない秘めた力があると思う。」
また、食べるだけでなく産地を訪れることで、和歌山県内の経済効果にも繋がると期待していました。