これまで捨てられていた色々な“カス”が、今、活躍しているんです。5月20日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、お茶で有名な伊藤園が、昨年末に造った公園について。株式会社伊藤園・広報部広報室長の古川正昭さんのお話です。
★「お〜いお茶」の茶殻でできた公園
- 株式会社伊藤園・広報部広報室長 古川正昭さん
- 「公園の名前は「常盤橋TEA’s Park」といって、弊社で作っている「お〜いお茶」などの茶殻を再利用して、加工した充填材を敷き詰めた人工芝が広がっている。「お〜いお茶」」525mlのペットボトル1万2300本ほどの茶殻を利用して、この芝生の充填材として使用しています。」
人工芝の土の部分に埋め込む充填材に「お〜いお茶」の茶殻を混ぜ込んで、つぶ状に加工したものを使っています。「常盤橋ティーズパーク」は、東京駅近くのオフィス街に休憩スペースとしてあり、面積はテニスコートよりも少し大き目の290㎡。また、人工芝だけでなく、公園にあるベンチも緑色、自動販売機も緑色と、公園一帯に茶殻が使われています。
さらに、伊藤園では公園以外にも、ダンボールや封筒にも製紙会社とコラボして茶殻を混ぜ込んだりと、これまで100種類もの商品を開発しているそうです。開発の中で特に拘ったのは、茶殻が濡れた状態でも腐らせないようにする技術の研究。茶殻は濡れた状態が続くと腐ってしまうので、試行錯誤の末、茶殻リサイクルを実現しました。
★みかんジュースの搾りかすが化粧品に
こうした取り組みは伊藤園だけではありません。続いては愛媛県。愛媛県では、特産物を使って研究を進めています。愛媛県産業技術研究所・主任研究員、福田直大さんのお話です。
- 愛媛県産業技術研究所・主任研究員 福田直大さん
- 「愛媛県は柑橘王国で、みかんの皮がすごく捨てられている。「廃棄に困っている」という声も県内の企業から相談があり、その廃棄物を有効に利用できないか、活用できるのではないかと着目して研究を始めた。今研究では、化粧品や食品にできないかということで、化粧品だと日焼け止め・ハンドクリーム・乳液とか、そういった分野に使えないかなと思っています。」
愛媛県では、みかんなどの柑橘類をジュースにした際に出る「搾りかす」を使い、化粧品などに役立てるための研究をしています。その中で、「柑橘由来のセルロースナノファイバー」という成分を抽出することに成功。
これは愛媛県独自の開発で、粘り気がとても強いという特徴を活かし、肌により浸透しやすい化粧品を作ることができるそうです。産業技術研究所では、2年後の商品化を目指して研究開発を進めているということでした。
★ブドウのカスで、有害物質を分解
さらに、みかんの次は山梨県の特産物、ぶどうです。山梨県では、ワインの「搾りかす」でこんなものを開発している企業がありました。株式会社NIPPO 技術研究所の大橋貴志さんのお話です。
- 株式会社NIPPO・技術研究所 大橋貴志さん
- 「今回製品化したのは、ワインの搾りかすを原料にした、有害物質を分解する薬剤です。“栄養ドリンク”みたいなものなので、土の中にこの薬剤を入れると、土の中にいる微生物が活性化され、活性化したことによって有害物質を微生物が食べてくれる。」
ワインを製造する過程で出たぶどうの皮や種が、土壌汚染や水質汚染を緩和させる薬剤に使われています。例えば、金属製品・電子機器の工場などの周辺で起きた土壌汚染に効果があるそうです。この会社では、廃棄されるものを利用することで、なんとコストを2割〜4割程抑えられたそうです。
★もうカスとは呼ばせない!
環境面にも金銭面にもやさしく、あらゆるところで有効活用できる「カス」について大橋さんは、このようにお話してくれました。
- 株式会社NIPPO・技術研究所 大橋貴志さん
- 「「カス」と呼ばれてあまり活用されていなかったものに、脚光を浴びさせたかった。製品として非常にキャッチーだし、これを使っていただくと“未利用資源”を活用したことになり、使うだけで貢献できるので、カスと言わず、企業イメージのアップにつながればなと思っています。」
この企業では「カス」にこそ価値があると考え、ぶどう以外にもサトウキビや米ぬかなど、10種類ほどの廃棄されてしまう食物で実験をしたそうです。捨てられてしまうものほど大きな可能性を持っていて、そうした商品を使うことによって、企業も消費者も環境問題に貢献できるかもしれません。