休刊・廃刊が相次ぐなど苦境に立たされている「雑誌」ですが、一度休刊した雑誌の復刊も相次いでいます。5月9日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で竹内紫麻キャスターが取材報告しました。
★紙の雑誌はもう古い?
出版科学研究所によりますと、紙の雑誌の売り上げは21年連続の減少。なぜ雑誌が買われなくなっているのか。街で若者を中心に聞きました。
- ●「10代です。紙の雑誌を買ったら家にたまっちゃうし、いちいちおカネをかけるのがばからしい。インスタで無料で見れてるから、雑誌にお金かけるよりも無料で見れるんだったらそっちをみちゃいます。」
- ●「載ってる服とかが高いじゃないですか。買っても自分は買えないなと。SNSのほうは安いですし、マネもしやすい。」
- ●「SNSのほうが分かりやすい。どこに売ってるかとか。アカウント自体がそこのお店だから分かりやすい。」
昨日渋谷で聞いたところ9割がた「雑誌ではなく、インスタグラムやLINEなどSNSから情報を得ている」という回答でした。無料・かさばらない・情報が分かりやすい、という反応が多かったです。そういった事情を受けてか、去年もおよそ30誌が休刊となっています。
★ギャル向け雑誌「egg」の復刊
そんな中5月1日、2014年に休刊していたとある雑誌が紙で復刊しました。ギャル向けの雑誌「egg」。どんな反響があったのか、編集長で22歳の現役ギャル、赤荻瞳さんに聞きました。
- 編集長 赤荻瞳さん
- 「ほぼ完売になりました。おかげさまで、ありがとうございます。どこ行ったら買えますか?とか十件はしごしましたとか声を頂いていて。大半が今の若い子達なんですけれども、エッグの紙面を昔見ていた30代のお母さんが娘さんと見られてるとか30~40代の方が懐かしんで読んでもらえたりとか、あ、今こういう感じのギャルなんだみたいな感じて買って頂いてる方もいます。」
3万部がほぼ完売。実際に私も、都内の書店やコンビニで探したのですがなかなか見つからず。また復刊に先駆けてツイッター上で行われたキャンペーンに数時間で1万人以上が参加するという盛り上がりっぷり。
★今の時代になぜ「紙」なのか?
雑誌が売れない今の時代にすごい反響でとても驚いたのですが、「egg」の元読者でもある赤荻さん、なぜ今あえて紙の雑誌として復刊しようと思ったのか、聞いてみました。
- 編集長 赤荻瞳さん
- 「ギャルをアピールする場がストリートからSNSになったんで、ギャルの子がすっぴんで渋谷来たりとかもするんですよ。ただがっつりお化粧したときは写真撮ってSNSにアップして「私はこういうファッションとかメイクです」っていうブランディングをしている。隠れているというか見えにくくなっている。ウェブだとわざわざ調べてもらわないと触れられないけど、雑誌は「あ、エッグまた売ってるんだ、ギャルってまだいるんだ」と分かってもらえるな、というのはあります。」
復刊版「egg」を読んだ読者からは、「地元では浮くけどやっぱり私はギャルが好きなのでギャルをつらぬこうと思いました」など反応が届いたそうです。
★「CHOKiCHOKi」待望の復刊への軌跡
さて、今月末にはもう1誌復刊が予定されています。2015年に休刊したメンズ向けヘアスタイルとファッションの雑誌「チョキチョキ」。こちらは復刊を望む読者から資金を集める「クラウドファンディング」を活用して復刊にこぎつけました。「チョキチョキ」編集長の三浦伸司さんのお話です。
- 「チョキチョキ」編集長 三浦伸司さん
- 「辞めてからウェブに移行していたが、「チョキチョキは雑誌で見たい」という声が届いていた。なかなか従来のビジネスモデルでやるのは難しいと分かっているが、欲しい人が買ってくれればいい。以前は10代男性向け雑誌だったが、復刊するにあたり美容師寄りになっている。4000円で自分が出れる。7500円で作品が出せる。1万円で両方できるなど、段階的に上は60万円まで作りましたね。」
薄く広く10代の若者に向けて売るのを辞めて、これまでもターゲットとしていた美容師に特化した内容にしたそうです。
美容師さんは個々にインスタなどで発信をしてはいるけれど、個人の発信には限界がある。ただ現状ではエース級の限られた美容師しか出られない専門誌と街で無料で置かれているフリーマガジンくらい。そこで、その中間の、「エース級にはまだ遠いけれど自分の個性を発信していきたい」というニーズをチョキチョキがくみ取り、活躍の場を提供しようとしています。
その狙いは当たって、クラウドファンディングには目標の100万円をこえる215万円が集まりました。
ただ、三浦さんからは、今の時代に雑誌を作る上での本音も聞こえてきました。
★紙の雑誌を作ると言う現実
- 「チョキチョキ」編集長 三浦伸司さん
- 「クラウドファンディングについてはもう大成功。ただビジネスとしてはキツいだろうなとちゃんと見てる自分もいますし、なんでお前今頃まだ雑誌欲しがるんだよツライんだぞって思ってたりとか。紙と印刷代は絶対的にかかるものですから。足りない部分は自分で頑張ってかき集めてる。さすがにあの金額では出せないので、元々全てを賄ってもらおうとは思ってなかったですし、こっちもある程度リスクを背負っていかないと一緒にやってる感も出ないし、自分がやるべき所かなと。」
紙の雑誌を作るのは決して楽ではない。だけど皆さんの希望に答えて頑張ると。紙の雑誌の文化が衰退していくのは寂しいですし、頑張ってほしいですね。