今日は、電車で通勤・通学している方に特に注目してほしいお話です。4月11日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
ここ最近、駅のホームでとある異変が起きているんです。どういうことなのか。京成電鉄株式会社 広報担当 新田亜希子さんのお話です。
★ベンチの向きが垂直!?
- 京成電鉄株式会社 広報担当 新田亜希子さん
- 「ホーム上にあるベンチなんですけれども、今までは線路に対して並行になっていたけれども、線路に対して垂直の向きに変更しました。一番は、安全対策という所が大きい。お酒を飲まれているお客様ですと、ベンチから立ち上がってそのまま真っすぐ前に歩いてしまう。そのまま、従来の平行型ですと線路に落ちてしまうということも実際の事故としてはございましたので、そういったところを防止するという意味でもベンチの向きの変更を行ったものでございます。」
通常は、線路に対して正面を向く形で座りますが、新しいベンチは椅子の向きを90度変えて、線路に対して横を向く形になっています。京成電鉄では今年の2月から3月にかけて、こういったベンチを8駅に設置。他にもJR、京王線、小田急線の一部の駅などでも同様のベンチが増えています。これは、酔っ払いの乗客の転落防止のためだということですが、この新しいベンチについて、京成線ユーザーのみなさんに反応を聞いてきました。
★新しいベンチの向き、京成線ユーザーの反応は!?
- ●「学校から帰ってきて座ろうと思ったら向きが変わってるのに気づいて。結構大人とか両親から、ふらふらしてる人いるから気を付けてねとか言われます。安全ですごくいいと思います。」
- ●「私も多少あるけどね。三歩進んで二歩下がるじゃないけど、そういう感じになるよね、本当に飲みすぎたら。ちょっと場所は取るだろう
けども、いいよねあれは。」
- ●「やりたいことは分かりますけどね。それよりもホームドアとか付けてもらったほうがもっと安全かなって気はするんですけどね。」
ホームドアは、ホームと線路の間の壁となって電車が到着するまでは開かないので、転落防止の効果は高そうですが、ベンチの向きを変えるだけでは心許ないというご意見。京成電鉄の新田さんに直接ぶつけたところ、こんな答えが返ってきました。
- 京成電鉄株式会社 広報担当 新田亜希子さん
- 「ホームドアですと、費用面が非常に大きくかかってしまう。ホームドアになりますと本当に数十億、一駅の設置でかかるもの。今回のベンチの設置ですと、本当にグッと、数十万ですとか、そういった費用になりますので、かなり差があるということになります。ホームドアのほうが安全の強化
という意味では効果はあるとは思うんですが、できることできないこと、の中でできる限りの取り組みを進めておりますので、そういった意味でベンチは効果があると思っております。」
驚きの費用ですよね。ホームドアは2006年から、駅の新設や大規模改良の際に原則として設置が義務づけられているにも関わらず、設置率は全体の3割にとどまっています。その背景にはコストの問題があって、京成電鉄のように、まずは取り掛かりやすいベンチの向きの変更からやっていこう、という鉄道会社が出てきているということなんです。
★先駆者に聞く、新しいベンチの効果の程は!?
ですが、ベンチの向きを変えるだけで転落防止に実際どれくらいの効果があるのか?実は、このベンチの向き変更は、4年前にJR西日本が全国に先駆けて始めたものなので、JR西日本に直接聞いてみました。駅業務部の高橋和也さんのお話です。
- JR西日本 駅業務部 高橋和也さん
- 「実際に発生したホームの転落等の事例を参考に、お酒に酔ったお客様の行動分析を行いました。結果、約6割のお客様が線路に向かってそのまま真っすぐ歩き出し、そのまま転落するというような分析結果を得ました。またお酒に酔われたお客様につきましては、線路に転落するまでの前兆行動としまして、ベンチに座られているケースも確認しておりまして、ベンチの方向転換というささいな取り組みではございますが、一定の効果があると考えてます。」
ホームの端を千鳥足で歩いて足を踏み外してしまうイメージが強かったのですが、それは全体の2割にも満たず、直前までベンチや床に座り込むなどしていた人がホームに向かって真っすぐ歩き出す例が6割にのぼったそうです。そして、実際にベンチの向きを変更してみて、一定の効果が表れているということなんです。
ただ、ちょっと気になるのは、ホームが狭くてベンチを垂直に設置することが難しい場合。JR西日本では、どのような対策を取っているのか。再び高橋さんのお話です。
★90度ではなく、もはや180度回転!?
- JR西日本 駅業務部 高橋和也さん
- 「向きを変える方向につきましても、ホームのお客様の導線上、ホームのスペースを考えながら、垂直にする方法をとったり、線路と反対側に180度回転させて、線路とは違う向き。柵など安全な方向にベンチの向きを変えるというような取り組みをさせて頂いております。」
JR宝塚線の伊丹駅。線路に背を向けて、金網の方向を向いています。ホームドアも必要ですが、手っ取り早くベンチの方向を変えるのは有りかもしれないですね。