最近、インターネット上で話題になっている記事があります。見出しは「ペッパー君さようなら」ということなんですが、一体どういうことなのか。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」で、レポーター真野淑實(まの よしみ)が取材報告しました。
ペッパー君さようならhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20181030073228
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★ペッパー君が次々とクビに・・・
お店の案内役などで見かける人型ロボット、ペッパー君。企業向けのレンタル開始から今月でちょうど3年、つまり3歳になったタイミングで、かなりの数のペッパー君がクビになっているそうです。そう、「ペッパー君さようなら」になってしまっているんです!なぜ、さようならなのか?調査を行った「日経 xTECH」の記者、染原睦美さんに詳しいお話を聞きました。
「日経 xTECH」記者・染原睦美さん
- ちょうど3年契約が今終わるところなんですけども、そのタイミングで更新すると答えた企業は15%程度にとどまりました。もう少し頑張ってほしかったですよね。コストとそれに見合う効果。コストは1台レンタルすると大体3年で200万かかる。それに見合う効果があったかというと、なかなか使いこなせない所があった。ショッピングセンターでインフォメーションセンターの代わりにペッパーを入れた企業からは、案内役として入れたのに役目が果たせていなくて、ペッパー不要となったケースも見受けられました。
海外の事例なのですが、イギリスのお店で販売員を勤めていたペッパー君、お客さんが「牛乳はどこにありますか?」と尋ねると「乳製品売り場にあります」。その乳製品売り場がどこにあるか知りたいんだけどなぁ…という感じで、案内がうまく出来ずクビになってしまいました。
他には、3年前は物珍しさもあって“客寄せパンダ”ならぬ“客寄せペッパー”として雇用する企業も多かったのですが、飽きられてしまったと判断して、契約更改しない企業も多いようです。
★「はま寿司」のペッパー君はバリバリ働いてます!
一方、ネット上では「企業側がうまく使いこなせてないんじゃないの?」とペッパー君を擁護する声もあります。特に「うちの地元のはま寿司ではバリバリ働いてた」など、回転ずしのチェーン店、はま寿司の名前が多く挙がっています。ペッパー君は「はま寿司」でどのように働いているのか「日経 xTECH」の染原さんに聞きました。
- 「日経 xTECH」記者・染原睦美さん
- 受付の所にペッパーを置いて「今日は何人で来ましたか?」とか、「これ位待ってくださいね」、席が空けば「どうぞ〇番テーブルに行ってください」というようなご案内をして、お店側もそれをやる人が削減できる。お客さんも楽しみながら待ち時間を過ごせるということで、目的が合ってそれを解決したいという思いと戦略がある企業はうまく使っているケースも出てきているみたいです
実際に行ってきました。はま寿司のユニフォームを着て立っているペッパー君、わずか15秒のやりとりで、すぐ席に案内してくれました。はま寿司では全国497店舗に一体ずつペッパー君がいて、今後も雇用し続ける予定だそうです。
ペッパー君の同僚である一般の従業員の方にもお話を聞いたところ、特に店内が混んでいる時、案内をテキパキこなしてくれるので他の業務に専念できとても助かっていると言っていました。
はま寿司の他にも、図書館で本を案内する、介護の現場で体操を教えるなど、ペッパー君が担う役割がはっきりしている企業が、今も採用し続けている傾向があるそうです。
★ペッパー君のライバル「食品盛り付けロボット」
そんな中今度は、ある役割に特化した新しい人型ロボットが10月、発表されました。秋葉原のロボット関連ベンチャー、株式会社アールティの代表取締役、中川範晃さんのお話です。
- 株式会社アールティの代表取締役、中川範晃さん
- 食品工場の中のお弁当の盛り付けが自動化する「食品盛り付けロボット」。頭の上にカメラがついていて、色が分かるカメラと距離が分かるカメラが搭載されている。食材までの距離、お弁当までの距離を認識して、からあげとかトマトとかをつかんでいく。お弁当工場は募集をかけても人が来てくれない、仕事が成りゆかなくなってきた。自動化できないかというのでお話が上がってきた。
食品盛り付けロボットの顔に、細長い目のようなカメラがあり、何のおかずか見分けます。手の部分はトングのようにおかずが挟めるようになっていて、お弁当のトレイの所定の場所に載せてくれます。さらに、そのおかずがから揚げなのかトマトなのか認識することで、力加減を自動で調整してうまくつかめるようになっているそうです。この食品盛り付けロボットを今後人手不足解消に役立ててもらう上で、特に意識した点を中川さんに聞きました。
★目指すは「ロボットと人間の協働」
- 株式会社アールティの代表取締役、中川範晃さん
- ロボット自体は何でもできる訳ではなくて、掴みにくいものもあります。そこは人がやっていかなきゃいけないので、人とロボットと共同で働ける環境を提案していく。すぐ隣に人がいるなら筋肉マッチョマンがすごいスピードで作業してるのと、同じくらいの背丈の女性が一緒に作業してるのでは安心感が違う。サイズ的にも女性のサイズと同じ位にすれば怖くないだろうと。喋ってほしいという要望もあって、おばちゃんの愚痴を聞いてくれるロボットとしてやっていくとか。ロボットや機械と思うより一緒に働く仲間として思ってほしいという思いはあります。
このロボットは、身長130~150センチで小柄な女性を参考にしています。形状も、角ばっていなくて柔らかさを意識した作りになっています。もしかしたら私たちの愚痴も聞いてくれるようになるかも?この食品盛り付けロボットは来年に量産型モデルを発表予定で、再来年2020年の発売開始を目標としています。
ロボットと人がそれぞれ得意な仕事を担って、一緒に働く考えもあるのですね。

真野淑實が「現場にアタック」でリポートしました!