今、新たなスーパーフードに注目が集まっています。それは海藻の「ダルス」。10月1日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
ダルスとはどんな海藻なのか?試験養殖に取り組んでいる、宮城県水産技術総合センターの増田義男さんにお話を伺いました。
★スーパーフード!海藻「ダルス」とは
- 宮城県水産技術総合センター 増田義男さん
- 「ダルスは海苔とか寒天の原料の天草の仲間です。冷たい海に生息している海藻で、特徴としては高タンパクで低カロリーのダイエット食品として良い。あとは鉄分も多く、サーロインステーキ100gよりもダルス8gの方が多くの鉄を含んでいる。食感があり美味しいといえば美味しい。宮城では漁業者が個人的には食べているが、一般の人は食べていない。」
ダルスは、北海道や本州北部の太平洋側に生息しており、試験養殖は宮城県が初ということです。欧米では栄養価の高いスーパーフードとしてサラダやスープの食材に利用されていますが、日本国内でも注目が集まり始めています。
現在、昆布の一大産地の北海道・函館市では、養殖ロープに自然に付いたダルスを佃煮に加工して食されているそうで、今後はより広い範囲で商品化を考える動きも出てきているようです。
気になる味は、「生で食べると食感は梨のようにシャキシャキ。炒めるとベーコンのような味」と増田さんは話していました。
★ダルスは手のかからない子
ダルスの試験養殖が宮城県内で進められている訳は、ワカメの養殖に取り組む漁業者の収入アップに少しでも役立たせたい、という思いがあるようです。再び増田さんのお話です。
- 宮城県水産技術総合センター 増田義男さん
- 「ダルスは非常に成長が早い。11月に海に入れて12月~1月には収穫できる。ワカメは10月に海に入れて2~3月にならないと収穫できない。あと、ダルスの場合は光とか温度を注意すれば、何もしなくても順調に育つという事で手間が掛からない。そう言った面でも漁場が開いていれば同時並行でやる事は可能です。」
ダルスは、育てる手間がほとんどかからないという特徴があるようです。さらにワカメや昆布の既存の養殖施設で育てる事も可能で、ワカメの養殖と同時並行出来る上に、収穫時期も重ならないというメリットがあります。
ゆくゆくは県内の特産品として、増田さんたちは新たな新食材にしたいと仰っていました。
さらに県内ではダルスを使った麺類の開発も模索されるなど、活用方法は大きく広がりそうです。
★食べるもよし、肌にもよし
一方、ダルスを食品ではなく化粧品として商品化する動きも出てきました。化粧品原料の製造・販売を手掛けるソワレ・インターナショナル・会長の澁谷恵子さんに、詳しいお話を伺いました。
- ソワレ・インターナショナル・会長 澁谷恵子さん
- 「昨年から試作しているのは化粧水、美容液、クリーム。実験をして作ってみて、初めて確認した事も多くあり、タンパク質・ビタミンA・12・E・B・Cも含んでいる。ですから美白やシミ・シワを何とかしたい女性にとっては凄く良い素材。」
ダルスを使った化粧品の開発は、産官学が連携した北海道大学の海藻活用研究会が進めていて、共同でソワレで開発を行い、来年春の完成を目指しているという事です。
★ネックだった「ベーコンが酸化した臭い」
ダルスを使った化粧品の開発の裏は、「ダルス特有の問題点」の改善に苦労があったようです。
- ソワレ・インターナショナル・会長 澁谷恵子さん
- 「一番難しかったのは匂いの問題。よく食べるとベーコンの味がすると言われるが、肌に付けるとベーコンの酸化した匂いで良い匂いではなかった。女性の肌に付けると「何この匂い」と…。“良薬口に苦し”ではないけど、本当に匂いは悪い。いくら肌に良いと言っても、匂いに耐えられない事が一番難しかった。試作9回目でやっと匂いを解消できました。」
試作に試作を重ね、「ベーコンが酸化したような」独特の匂いは、現在では解消したそうです。
★ダルス養殖にチャレンジする漁業者を増やしたい
まだまだ知名度の低いダルスですが、今後は更に注目が集まりそうで、宮城県水産技術総合センターの増田さんは最後にこんな思いを聞かせてくれました。
- 宮城県水産技術総合センター 増田義男さん
- 「まだ試験養殖の段階で今のところ他の漁業者さんは静観と言うか見守っている段階。今年も養殖して成功して売れるようになれば自分もと声が上がってくると思います。いろんな人がやりたいと言えば私も仕事としてやりがいを感じるので色々な人に作ってもらって色々な人に食べてもらいたいと考えています。」
地元の漁業関係者の収入アップのためにも、ダルスを全国に広げていきたいということでした。