忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」。6月7日(火)はレポーター近堂かおりが『パンの食感を巡る開発競争がすごいことに!』をテーマに取材しました!
きのう新聞で「食感追及 測定に新技術」という記事を見つけました(日本経済新聞)。岐阜大学の先生が、音を使ってパンの歯応え(食感)を測定する技術を開発したというのです。サクサクとかモッチリといったパンの食感は、人間が実際に食べて判断しているのですが、これを機械を使って客観的な数値で表わせるようになったという。しかも「音」を使う。この記事が気になって、そのシステムを開発した方にお話をお聞きしました。岐阜大学の西津貴久教授のお話です。
★食感を数値で測ります!
- 西津貴久教授
- 特に何が難しいかというと、硬さ自体を測るのは別に機械があるんですけど、パンだと「きめ」がありますよね。パンというのは気泡が入っている多孔質と呼ばれる食材です。多くの孔(あな)の開いた食品という意味ですけど、その孔も、小さくて多い場合もあれば大きくて少ない場合もある。例えばビルの部屋を考えてもらうと、食感は、ビルの部屋の大きさと壁の厚みの2つが重要になってくるんですが、今回、新聞報道にあったのは部屋の大きさを見つける方法なんです。それがそれぞれ周波数に与える影響が違ってくるんです。それを拾ってやると、きめの違いがある程度見えてくる。
きめの違いとなるのはパンにあいている孔(あな)。それをどうやって測るの??と思ったら、原理としては、ビンの口に息を吹き入れた時にボーッと音が出る現象を利用している。この時、ビンの中に水を入れていくとどんどん音程(周波数)が変化する(高くなる)。その周波数の変化によって、ビンの中の空間の体積が分かる。この原理を応用して・・・。
パンに向かって一定の周波数の音を出して、その音がパンを通って出てきた時の周波数の変化を調べると、パンの中の孔の大きさや数=きめの細かさが分かる。この技術、パンに限らずいろいろな食品に使えて、特にこれまで硬さやきめの細かさを測れなかったホイップクリームとかビールの泡などの食感も表現できるという。
西津教授によれば、実は、食品開発でこの「食感」の開発というのがとても重要なんだそうです。再び岐阜大学の西津教授のお話です。
★おいしさの決め手は食感!?
- 西津貴久教授
- 有名な先生が行ったアンケートがあって、いろいろな食材を100種類以上集めてきて、その食材がおいしいと感じる特徴は何ですかと聞いた場合に、普通、食べた時の味、甘いとかすっぱいとか、いい匂いがするというのが食品の性質をおいしさを左右する一番重要な要素だと考えがちですが、実はそれをおさえて、食べた時にモッチリしているとかサクサクしているとかネバネバしているとか、実はそれが1位になるんです、食感が。あと重要なのは、人間は期待するものにいかに近いかということで評価してしまうんです。だから期待している食感とかけ離れたものはやっぱりがっかりするわけで、おいしくないと判断していく。
もちろんパン業界も、「食感」開発に相当力を入れている。例えば店頭にはいろいろな食パンがずらり。ふんわり、しっとり、サクサク、もっちり、サクもち、新食感・・・。これらは今まで感覚頼み。でも数値で表わせればさらに開発が進みそう。西津さんが研究にお忙しいのも分かります・・・。これだけ皆さんが食感の開発に力を注いでいるとなると、気になったのは、パンをトーストする時に、そのこだわりを十分活かして焼くことができるかしら?
そこで家電量販店に最近のトースター事情をお聞きしてみました。ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの家電コンシェルジェ。勝田泰幸さんのお話です。
★トースターもすごいことに!!
- 勝田泰幸さん
- 相当広がってますね。シンプルなものなら3千円ちょっとものから、2万円を超えるものまで。これまで発売していなかったメーカーなんかが出してきて、だいたいちょっと高級機種を出してくることが多いです。コンベクションタイプというのが熱風です。熱で対流させて、オーブンと同じですね。トースターもワット数が高いほど仕上がりが良くなってくるんですけど、以前は1000Wがほとんどだったんですが、今だと1250Wとか1300Wとか、差をつけるような、クリスピーな感じになります。サクサク感が増します。新規のメーカーで言うとアラジン。暖房器具で有名なメーカーなんですが、そのアラジンのヒーターの缶を使ったトースターというのも出てきてるんです。すぐ温まって早く焼ける。じゃあ、もう5千円だそうか、7千円でもいいか、となってきますね。
トースターの開発もすごいことになっていました!今や家電量販店のフロアでトースターのスペースは戦国時代。老舗メーカーがラインナップを続々と増やせば、これまでパンとは無縁の新規参入組も続々と商品を発表。キーワードはやはり「食感」。外はカリカリ、中はもっちり・・・など。今なかなかモノが売れない中で、ハイクラス商品が結構売れているという。
先ほど話に出てきたアラジンのトースターはインターネットなどで見てみると1万5千円前後ですし、ほかにはなんと2万5千円ほどのものもある! (バルミューダ社のトースター)。
バルミューダ スチームオーブントースター BALMUDA The Toaster K01A-KG(ブラック)千円台のトースターだってあるこのご時勢に、強気の価格(!)にもかかわらず、水蒸気を使って理想の「サクサクもっちり」を実現するというふれこみで注文殺到。各地量販店では入荷待ち状態が続いているという。いったいいつの間に、どうしてこんなにパンの食感こだわり派が増えたのか。ヨドバシカメラの勝田さんは、人気家電の移り変わりからこんなふうに分析します。
★きっかけは、コーヒーメーカー!?
- 勝田泰幸さん
- お客様でもパンに対するこだわりを持つ方が結構増えてきているんです。例えば、コーヒーメーカーってもう10年ぐらいずっと売れているんですよね。コーヒーにこだわると、その後やっぱりパンにこだわったり、コーヒーと一緒に食べるものを作る機械にお金を使ってくるんです。その流れで、やっぱりトースターもただパンを焼ければいいというのではなく、よりおいしく焼きたいとか、トースト以外にも例えばバターロールを温めてサクサクと食べたいとか、クロワッサンを食べたいとか、それに対応する機種が出てきてますね。特に若い方は新生活でも炊飯器は最低限でいいからトースターにお金をかける方が多くなってきたので、逆に炊飯器が心配ですね。これだけトースターが売れると。そう思っちゃいますね。
食感をめぐって、パンもトースターも、新たなお客さんを開拓しそうです。
(取材・レポート:近堂かおり)
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