最近、遠近両用レンズの開発が盛んになっていて、新技術、新企画の商品が、次々出ているんです。そこで・・・。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!7月25日(水)は、『遠近両用市場が活況!まさかの商品・技術が登場!』をテーマに近堂かおりがレポートしました。
★ワンタッチで遠近両用メガネに変身!
開発盛んな遠近レンズ。今、話題になっているのが、今年2月に発売となったメガネ『タッチフォーカス』。どんなメガネなのか?開発した三井化学株式会社新ヘルスケア開発室のグループリーダー早瀬慎一さんに伺いました。
- 早瀬慎一さん
- ●「このメガネはオフの状態は、遠方と中間距離が非常に見やすいレンズになっています。中間というのは足元であったり、デスクワークのパソコンの画面、運転をするときのカーナビです。ただ、この状態では近くには焦点が合っていないので、近くを見たいときには、タッチセンサーを触っていただくと、液晶レンズが切り替わって、近くに焦点が切り替わる、という商品です。」
ワンタッチで遠近レンズに変わる??なんだか不思議ですよね。こちらが実物です。
いわゆる普通のメガネに見えますが・・・これがすごいんです。
普通にかけると、遠くから中程度の距離が見える、普通のメガネなんですが、つるにある金属にタッチすると、レンズの下の方に手元を見る部分が現れて、遠近両用レンズに返信するんです。
なんで変身するのか?つるの端っこに小さい電池が付いていて、その電流が流れると、レンズの中の液晶が、縦になったり、横になったりして、レンズが変化する、という仕組みだそうです。
サンプルをお借りして体験してみましたが、手元の小さい文字が見たいときに”パッと切り替わってくれる”という感じ。あっという間に切り替わります。
電車などで一瞬スマホが見たい、というようなシチュエーションで、便利に使えそうで、実際、早瀬さんも「スマホに便利」とおっしゃっていました。
★より快適な遠近両用を求めて!!!
でも、なんでこんなメガネを作ったのか?再び三井化学の早瀬さんに伺いました。
- 早瀬慎一さん
- ●「従来の遠近両用メガネもいいメガネです。一つで遠くから近くまで見えるので。ただ、欠点もあって、一枚のレンズの中で、度数を変化させると、焦点の合わないところも出るので、揺れ、歪みを感じて不快に感じますし、あとは、レンズの一番下の所に手元を見る度の強いレンズがあるので、足下とか、特に階段とかが、高齢の方が危ないという問題があるんです。そこで、そういうところを改善できないかと開発したのが、このタッチフォーカスです。」
普通の遠近レンズでは足下に不安がありますが、タッチフォーカスの場合は、街を歩いているときなどは、通常モードにしておけば、手元を見る度の強い部分がないので、足下が歪む心配はありません。また、老眼にありがちな、メガネを外したり、遠近をかけかえたりするわずらわしさも無くなるので、スマートな日常を送れそうです。
また、このタッチフォーカス、デザインは3つのラインナップがあり、それぞれに何色か色が用意されているなど、ファッション性にも気を使っています。
さて、気になるお値段ですが、なんと25万円!今では格安メガネが増えたので高い!と思いますが・・・
一方、今、普通の遠近レンズも技術革新が進み、最高級はレンズだけで18万円!このタッチフォーカスは、格安メガネではなく、こういう高級レンズと競争する商品のようです。(ただ、非常に順調に売れているというお話・・・ニーズはあったんですね!!)
★コンタクトレンズも遠近!その上・・・!?
遠近レンズ競争は、コンタクトレンズでも熾烈になっていて、コンタクトのシードは40億円を投じて遠近レンズを強化。ジョンソン・エンド・ジョンソンも、アドバイザーを増やして、遠近レンズの販売強化したそうです。
こうした中、9月にも、「日本初」というコンタクトレンズが登場します。何が「日本初」なのか?開発した株式会社アイレの代表取締役社長、荒江健さんに伺いました。
- 荒江健さん
- ●「遠近両用のコンタクトレンズというのは、他社さん、大手さんも出されていますが、そこにカラーコンタクトの機能を組み合わせたものは、この「ネオサイトワンデー スマートフォーカス リング UV」というのが日本で初めて、おそらく世界でもないのでは。カラーコンタクトレンズは、一度して、その良さを実感してもらうと、なかなかやめることができない。より美しくなった自分を、保っていたいというのは思うところなので、カラーコンタクトは老眼が出たところで諦めるという方が大変多かったんですけども、その希望を叶えるということで開発をしました。」
瞳を少し大きく見せるサークルタイプのカラコン。若い女性のイメージがあるカラコンに、なぜ遠近?と思うかもしれません。ただ、カラコンも普及して20年とも言われています。となるとカラコン世代も40代ですので・・・大人向けを作ったのです!確かに、ニーズはありそうです!
また一部報道では、老眼が始まると、コンタクトを卒業してメガネに切り替える傾向=『老眼卒業』というのがあるそうです。今では遠近コンタクトもたくさんありますが、この老眼卒業の影響で、コンタクトの遠近両用の使用者は5%程度しかいない、というデータもありました。
そう考えてみると、遠近のカラコンがあれば、カラコンを使いたい女性が取り込まれて、今より遠近コンタクトが広がりそうですよね!!
★高齢化・団塊ジュニア老眼世代・老眼の若年化
このように、遠近両用レンズの開発に今、各社力を入れているのですが、背景となっているのは、『高齢化』に加え『団塊ジュニアが老眼に突入』したこと。団塊ジュニアはボリュームゾーン。市場としては魅力的ですよね!!
加えて、もうひとつ意外な事情もありました。それは『老眼の若年化』!若いうちから、遠近や老眼鏡を買う人が出てきた、というのです。イワキメガネ渋谷店の雲林院一也さんのお話です。
- 雲林院一也さん
- ●「30代後半から作られる方が出ています。若い人の老眼自体は、症状としてはあったんだと思います、過去も。ただ、今ほど近くを見る作業というのが、そこまでなかったんだと思います。ただ、今はスマホ世代。特に読書と違って、スマートフォンって距離が近いんです。読書の距離だと少し離れた感じになると思うんですけど、スマートフォンって、電車で見てると、普通の読書の距離より近いんですね。それで、手元が見えない、老眼かもってなり、老眼に気づく速さが進行しているようです」
30代で老眼??驚いてしまいますね!
ところが、実は、目の調節能力は10代がピークで、あとはだんだん衰えて、目に近いところから、だんだん見えにくくなっていくそうです。ということは、10代から老眼が始まる??
昔は、読書の距離、45センチくらいまで老眼が進んで、ようやく老眼だと気づいていましたが、今は、スマホのせいで、もっと早く気付いてしまう!この、変化が、遠近レンズ競争過熱の一因のようです。
30代で老眼と聞くと、ちょっと違和感ありますね。こうなると、もう、老眼という呼び名も変えた方がしっくりくるのでは・・・
遠近レンズをめぐる開発競争、メーカーは大変ですが、ユーザーとしては、選択肢が広がるのでいいですよね!!