ここ数年、SNSなどの利用者が急激に増えたことで「ネットでの炎上」が話題になることが多くなりました。先日の日大アメフト部の悪質タックル問題でも、試合の映像がSNSを通じて急激に拡大したことで一気に問題化しましたが、組織としてはなるべくなら炎上を防ぎたいものです。そこできょうは、ネット炎上をいかにして防ぐかという企業の対策について、6月7日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、株式会社ホットリンク・RS事業本部・本部長の四家章裕さんのお話です。
★もしもに備える「炎上防災訓練」
- 株式会社ホットリンク・RS事業本部・本部長 四家章裕さん
- 「弊社ではSNSでの炎上を疑似体験できる『炎上防災訓練』というサービスを提供しています。その一つの『1時間だけ炎上防災訓練』というサービスは、企業の広報担当者向けのもので、仮想空間上でツイッターのようなSNSで炎上を疑似体験する画面をご覧いただいて、炎上というのはどうやって広がるのか、どんなことに気をつけるのべきかというのに、気づけるサービスとなっています。
こちら無料のサービスで当社のホームページから申し込みできます。その後、防災訓練の日時を設定頂いて、その時間になったらログイン頂き、お客様のパソコン上で体験、そこで炎上が始まるというものになります。」
昨今、ちょっとしたことがキッカケでネット炎上が起きるケースが多発しています。炎上は怖いと思っていても、実際に体験しないことには対処方法が分からないということで、事前に「防災訓練」しておこうというものです。
対象者は、企業の広報担当者や経営者。従業員のSNSでの発言が発端となり、1時間対応に追われるというシチュエーションです(後日、採点結果がレポートで送付されます)。
ちなみに有償版は完全オリジナルのシナリオで、1日かけて防災訓練を行います(企業は火消し役、ホットリンクが全力で炎上させる)。
★広報担当は、SNSの扱いに神経を尖らせている
一風変わったこの防災訓練、昨今のネット事情を鑑みて、企業からの引き合いは多いとのことです。今回は、実際にこのサービスを体験した金融会社の方に、お話を伺うことができました。
- 「炎上防災訓練」を体験した企業の広報担当
- 「広報担当として働いているので、会社に何かあったときに報道関係やお客様からいろんな問い合わせが入ってくる。その際にきちんと納得していただけるような対応がしたくて体験してみました。ネットの場合は、SNSやニュースサイトからブログに転送されるので、猛スピードでいろんな表現方法で広がっていくことにリスクを感じています。
(体験してみてどうでした?)すごくリアルで驚きました。私たちSNSを持っているので、そういったメディアが広がっていくところを、身を以て体験することができました。」
こちらの会社では、普段からSNSで会社情報の発信をしているそうですが、普段から発信の仕方には相当注意しているそうです。
★残業リストを晒した従業員の末路・・・
この方が仰っていた「すごくリアル」な体験とは、どんなシナリオでしょうか。ホットリンクの四家さんに聞いてみました。
- 株式会社ホットリンク・RS事業本部・本部長 四家章裕さん
- 「炎上は一つの書き込みから始まります。『1時間だけ炎上防災訓練』のシナリオは、従業員が『ブラック企業だ』と不満を書き込み始めるんです。次にそれに反応する人が出てきて、調子に乗って残業時間のリスト(従業員の名前入りのもの)を公開してしまうというシナリオです。その結果『それはまずいんじゃないの』とか『もっとやれ』とか煽りも入ったりして。実はその方、会社名とか実名がリンクを辿っていけば特定されますので、そこから企業に苦情が入ったり取材が入ったり、そういった様子が展開されていきます。」
ほかにも、8月にサービス開始予定の「個人向け炎上防災訓練」も非常にリアルな内容になっています。一例として「コンビニのアルバイト」という設定のものをご紹介します。
- 大学生のアルバイトがムカつくお客さんのことをSNSでつぶやく(あの客、毎日来るけど何も買わない。暇なのかよ。)
- それが拡散されてバイト先にバレる
- 大学にもバレて呼び出される
- 個人情報が特定される
- バイト先をクビになる
このような展開が次々と画面上に表示され、リアルタイムで「燃えている」ことが実感できます。
★「炎上保険」で身を守る
さらに「予防」の観点も重要ですが、炎上が起きた後の対策も必要です。SONPOリスケアマネジメント・危機管理コンサルティング部長の五木田和夫さんのお話です
- SONPOリスケアマネジメント・危機管理コンサルティング部長 五木田和夫さん
- 「損保ジャパン日本興亜では、SNSの利用者の増加に伴って企業の新たな課題になっているネットの炎上に備える保険を昨年の3月6日に販売を開始しました。これは業種に関わらず、企業が一般に加入できるネット炎上対応の商品としては国内初になります。『ネット炎上対応費用保険』と言うものです。 」
「ネット炎上に対応する保険」も出てきてるそうなんです。保険損保ジャパン日本興亜、SONPOリスケアマネジメント、ネットのリスク検知サービスを提供するエルテスの3社が提携して、提供しているこのサービス。
日頃のウェブモニタリングや、炎上後のコンサルティングサービスなどが提供され、対応窓口の設置や記者会見を開いた場合の費用などが保険で支払われます。保険料は年間50万円~100万円くらい。費用の9割を補償で、上限は1000万円までということです。
★炎上したら速やかに初期消火!でも一番大切なのは炎上対策
最後に、ネット炎上を予防するためにはどういったことに気をつけるべきか。ホットリンクの四家さんに伺いました。
- 株式会社ホットリンク・RS事業本部・本部長 四家章裕さん
- 「炎上の種を見つけて“初期消火”、初動を早めることによって延焼を大きくしないで収められるケースもあります。あるいは『神対応』って言われて人気が上がるような、対応の方法が良ければそのようなこともあるので、とにかく早く対応することが大事だと思うんです。また起こってから何かを考えるというのは遅いので、事前にどこの部署がどんなケースがあったらどんな対応を取るということを、体制と対応方法含めて事前に決めておくことが大事かなと思います。」
ネットの炎上対策は初動が全て。「燃えないために」普段からの対策も重要です。