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Channel: 現場にアタック – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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新治療の保険適用が続く「膀胱がん」

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膀胱がんは、がんの中では、比較的早期発見しやすいがんと言われますが、早期発見できないと、全摘出の可能性が高いがん。いま、その膀胱がんの治療が、やさしい治療へと大きく変わりつつあります。病気の特徴と、最新の治療について。1月22日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

 

 

★膀胱がんとは!?

膀胱がんの年間の罹患者数は、2万1千人、その内亡くなる人は、8800人です。男性の方が女性より3~4倍多く、かかるがんです。膀胱は、骨盤内にある臓器で、腎臓で作られた尿が運ばれ、一時的に溜まる場所です。袋のような形をしている膀胱は、粘膜に覆われているんですが、膀胱がんは、その粘膜が、がん化することによって引き起これます。

★特徴的な症状は「血尿」

やはり他のがんと同じく、大事なのは、早期発見。ほとんどの膀胱がん患者さんは、血尿で発見されています。尿が赤く血が混じっている、または排尿の後血がポトンと垂れた、という発見の仕方です。ただ、この出血を知っても放置している人が少なくありません。というのも、一度血尿が出ても、その後しばらく、出血がないケースがあるからです。2年後に久しぶりの血尿が出て、その時には、がんが、かなり進行していることも。また、血尿で特段の痛みが無いことも、放っておいてしまうことにつながっています。逆に痛みのある場合は、かなり悪性度の高いがんの可能性もあります。

★リスクはタバコ・化学物質

特に、リスクの高い人は意識して、40歳を超えたら、尿の検査を受けてほしいですね。リスクとしてはっきりしているのは「タバコ」で、リスクはニコチンの量に比例します。タバコを吸っていると、リスクがおよそ4倍になることがわかっています。また、現在は使用や輸入が制限されている化学物質が、リスクを高めることも。ゴム・皮などの工場で、染め物の材料として使われる、アニリン色素などの化学薬品です。膀胱には、成人ではおよそ300ミリリットルの尿が、一時的に、貯めるわけですが、排尿を我慢することが続けば、そうしたリスクも、一緒に溜め込むことになります。十分な水分をとり、尿を我慢しないことを心がけるのが良いでしょう。検査でがんの疑いが出れば、どこまで深く浸透してしまっているか、検査します。大きく分けると2つ、まだ浅い段階のがんと筋肉にまで入り込んだ段階のがんの2つです。それぞれの治療を見ていきます

★早期発見だと完治治療も

まず、浅い段階で早期発見できた場合、内視鏡で、がんの部分を削りとっていきますが・・・手術はこれだけではありません。この膀胱がんは、膀胱がん内で、何度も再発することが、特徴のがんです。そのため、再発を抑えるための処置が必要になります。ここで利用するのは、膀胱の「溜め込む」機能。再発防止の処置として、膀胱内に抗がん剤、もしくはBCGを注入します。BCGという言葉は聞き覚えがあると思いますが、結核予防のためのワクチンです。なぜBCGを注入するのかと言うと、BCGでがん細胞を直接叩くのではなく、BCGを注入して炎症を起こすと、リンパ球や免疫物質が出てくる。それががん細胞を叩くのです。このBCGの投与は、毎1回、1か月から2か月ほどの期間行います。ちなみに、膀胱がんになった85%の人は、早期の悪性度の低いがんです。5年生存率も9割を超えますので、しっかり治る段階です。また、膀胱をしっかり残すことができますので、血尿を見つけたら泌尿器科で受診を。

★進行すると・・・全摘出

筋肉にまで入り込んだ段階に進んでしますと、内視鏡の段階を超え、多くの場合は、膀胱を全て切除する手術となってしまいます。その後は、人工的に、尿の通り道作ったり、人工的な膀胱を用意することになります。ただ、最近大きく変わりつつあるのが、この全摘手術の段階に至った人への治療です。まず、この手術で大変なのが、出血が多いことです。手術中に大量の輸血や、止血作業が必要な上、術後に再出血するリスクがありました。そうしたこともあって、特に、心臓などに病気がある人は開腹手術すらできませんでした。

★出血の少ないロボット治療

こうした課題を抱える膀胱がんの手術に、いま期待が集まるのが、ダヴィンチを使ったロボット手術です。出血量が開腹手術の10分の1程で、手術時間も短く、傷口も小さく済みます。これまでこのロボット手術は自費でしたが、この春にも保険適用の可能性があります。いまロボット手術を行っているのは、弘前大、秋田大、順天堂、神戸大、鳥取大です。ダヴィンチの特許が切れたので、日本製の安いロボット手術の機器も近々登場します。

★キイトルーダは保険適用

一方で、中には、手術を希望しない、または、摘出手術ができない、例えば他の臓器への転移が進んだ患者さんもいます。こうした場合は、全身化学療法として、抗がん剤治療が残り少ない選択肢となります。ただ、抗がん剤は、使っているうちに、徐々に効果が薄れてきます。手術や抗がん剤治療など手を尽くしたのに、また再発する可能性もあります。そこに、新たな選択肢として、登場し期待を集めているのが、「キイトルーダ」です。「キイトルーダ」は、免疫の働きを生かし、がん細胞を叩く「免疫チェックポイント阻害薬」の一つです。この「キイトルーダ」が、膀胱がん治療で、先月から保険適用になりました。

★膀胱がんの特性に合った薬

キイトルーダは、免疫の働きを生かす、ほかの薬オプジーボなどに比べても、遺伝子変異が多いがんに効果が高い、という特徴があります。膀胱がんは、遺伝子変異が他のがんに比べて多い特徴があるので、イトルーダは、実際、延命効果を出しています。抗がん剤治療にくらべ、死亡リスクが27%減少したので、あまりの効果に臨床試験が中止されました・・・抗がん剤を使っている人が、かわいそうとなったからです。このように新たな選択肢が、広がりつつはあるものの、やはり膀胱がんも、なんとか早期発見、早期治療で、膀胱切除を、食い止めたいところ・・・・。

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180122080000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)


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