きょうは、各地で様々な形の実証実験が行われている「車の自動運転」について、1月8日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
ここ数年、車の自動運転の実現に向けて、大手自動車メーカーだけでなくIT企業も開発を進めています。そうした中、今月11日に、都内では初となる自動運転の実証実験が東京・杉並区で行われるそうです。まずは、杉並区・都市整備部・交通対策課長の星野剛志さんに、どんな実験か伺いました。
★自動運転車が市街地を走る!
- 杉並区・都市整備部・交通対策課長 星野剛志さん
- 「今回はアイサンテクノロジーが実験の主体となり、東京大学(頭脳部分の開発)と地元の協力会社の4者で協定を結び、公道で実験を行います。場所は、荻窪駅南側の一部の区道。これだけの人が行き来する場所では初めてです。」
現在、自動運転のレベルは「レベル1」から「レベル5」に分類されますが、杉並区で行われる実証実験は「レベル3」。アクセルやハンドル、ブレーキの全てを車のシステムで行うというものです。交通規制もない普通の道路で、後部座席に人を乗せて走行します。一応運転席にも人が乗りますが、これはあくまで緊急時の対処をする補助的な役割とのことです。
★杉並区の“高精度の地図”に白羽の矢
でも、どうして杉並区が実証実験の舞台なのか?星野さんに理由を伺いました。
- 杉並区・都市整備部・交通対策課長 星野剛志さん
- 「杉並区は、平成23年に地籍調査の事業の中で、区内全域の道路の測量を実施したんです。その方法が、高性能の三次元情報を取得できるシステムを使って計測して図形化するというものでした。この高精度の地図は特に珍しいモノではありませんが、『区内全域で』作っているのは珍しい。今回の話は、杉並区この地図を活用するというのが一つのきっかけです。」
自動運転は、車のシステムのみで動く訳ではなく、実は人間が見ているのと同じように、「ここに信号がある」「停止線がある」「横断歩道がある」などの、三次元で情報を得る事が出来る“高精度の地図(3D地図)”が必要となります。その高精度の地図を、杉並区は7年前に独自に作成していたために、今回白羽の矢が立ったということでした(今回は街のPRのため荻窪が選ばれたそうです)。
★ニーズの高い、人口密集地の自動運転
これまでにない市街地を使った実証実験。システム開発を手掛けるアイサンテクノロジーの佐藤直人さんにお話を伺ってみると、今回の実証実験に期待する部分は、やはり大きいようです。
- アイサンテクノロジー 佐藤直人さん
- 「今までも、全国各地で様々な自動運転の実証実験を交通規制のない公道でやっていますが、やはり東京都、特に市街地での実験はハードルが高い。車も人も多い人口密集地で、交通環境は難しいが、今回敢えてチャレンジしてみようと思った。将来性を考えると非常にニーズが高い地域なので、価値のある実証実験だと思います。」
杉並区は自動運転に必要な地図を元々持っているので、製作コストや時間が掛からないのもメリットが大きいようですが、当然ながら安全第一なので、杉並区や地元警察署などと入念に準備してから実験に臨みたいと話していました。また、「レベル3」の実証実験を成功させることで、1つ上のレベル(人が乗らない「レベル4」)の実験にも繋げていきたいということです。
★超高齢化社会に向けて、自動運転は期待大
杉並区の星野さんも今回の実験の成功を願いつつ、最後にこんな思いを聞かせてくれました。
- 杉並区・都市整備部・交通対策課長 星野剛志さん
- 「自動運転は1つのコンテンツに過ぎず、上手く行けば、自動の車椅子などに技術が拡がる可能性は十分にあります。
超高齢化社会に突入する中で、高齢者の事故も多く、免許を返納する人も増えて、移動手段は限られてくる。ターニングポイントはおそらく2020年。オリンピック会場の周辺には必ず自動運転が入って来るので、その先に、杉並のような一般の市街地で動かせる日が実現してくるだろうと思います。」
バスなどの公共交通機関や運送業の人手不足、更には超高齢化社会の課題を解決するため、自動運転の実用化に期待が高まります。