日用品売り場にいくと、こんな機能や効果があるという宣伝文句が飛び込んできますが、あえてそれを目立たなくしたら、これが大変ヒットしているという話。どういうことなのでしょうか???そこで・・・。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!12月5日(火)は、レポーター近堂かおりが『”消臭剤”も”殺虫剤”も? 機能を目立たなくして売り上げ増!?』をテーマに取材しました!
★それとはわからないボトル!
それは”消臭剤”。花王の『リセッシュ』という消臭剤があります。普通は『菌やニオイをもとから撃退』とか『除菌』という言葉がボトルに書いてありますが、これとは全く違うデザインのボトルが売れているというのです。花王の広報部・武田葉子さんのお話です。
- 武田葉子さん
- 「アスクルが運営する一般消費者向け通販サイト”LOHACO(ロハコ)”で、『消臭』という文字が前面に出ていないデザインのリセッシュが発売されています。店頭ですと『しっかり消臭』とか『長時間抗菌が続く』とか、『消臭』『抗菌』というところが強調されているんですけれど、こちらはパッと見たら消臭剤とは分からないようなかたちになっています。とても好評で、”こういうのを待っていた”という声もありました。」
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消臭、などの字が小さい!
これはネット通販限定ですが、ストライプとかチェック柄など、店頭売りの商品とは全然違うデザイン。実物を見てみると、なんのボトル?と思うほど。商品名とか除菌、消臭という機能については、片隅に小さく書かれているだけ。ほとんど目立たない。これが去年2月に発売されると、8ヵ月で通常のリセッシュの7.5倍の売り上げ、というからびっくりしました。
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リセッシュ ロハコ限定デザイン
★フィルムを剥がして使うなら・・・!
消臭という言葉を目立たなくすることを花王に提案したのは、通販大手の『アスクル』。その発想は、アスクルの社員の方が営業先でみた光景がヒントになったそうなのです。商品のデザイン制作を担当するアスクルの バリュー・クリエーション・センター部長、中里裕治さんのお話です。
- 中里裕治さん
- 「トイレの消臭剤がレストランに置いてあって『消臭剤』と分かるように書かれていると、せっかくレストランに食事に来て気分がいいのに雰囲気を崩してしまうということで、パッケージをひっくり返している人もいれば、フィルムを全部はがしてしまって透明なボトルのまま置いているという方もいました。買い物をするときは『除菌』などの効果がいいものがほしいという気持ちがあると思いますが、それを家で使うときには必要な情報ではなくなっているので、お客さんが来たときなど、人にあまり見られたくないという心理があると思うんです。」
目立つデザインは店頭ではいいけど、家では浮いてしまう。そこでアスクルが暮らしになじむデザインを提案。ほかにいろいろな日用品が機能を隠して売れている。目立たなくする戦略は店頭売りの商品ではやりにくいが、ネット通販なら機能や効果はサイトで十分説明できるから、パッケージに大きく書かずに済むんですね。
★『殺虫剤』から『虫ケア用品』へ!
機能を目立たなくしようという動きがほかにもあった。それは『殺虫剤』。業界大手のアース製薬が、『殺虫剤』という呼び方を変更して、『虫ケア用品』と呼ぶことにすると発表しました。『殺虫』という分かりやすい機能が目立たなくなってしまうと思うのですが、どうして変更したのか。アース製薬ブランドマーケティング部の渡辺優一さんにうかがいました。
- 渡辺優一さん
- 「虫が出てなにか買わなきゃとなったらみなさん『殺虫剤』という単語が浮かんでくるんだと思うんです。でも殺虫剤という言葉自体が『なんか危なそうだな』と思ってしまう。そこで『殺虫剤、買おう』ではなくて『虫ケア用品、買おう』というところから入って退治するものがあったり、蚊やゴキブリを除けたりするものがあったり。そこでお客さんに選んでもらう。最近は必ずしも殺すだけの商品ではなくて、虫除け剤というものもあるんですけど、いなくなりさえすればいいという考えは最近高まってきていると感じます。成分も化学合成成分ではなくて、天然ハーブを使ったものなども最近出てきていますので、そういったもののニーズが高くなって来たり、求められる商品が変わってきているという事実はあります。」
たしかに『殺虫剤』だけじゃなくて『虫除け』という言葉をよく聞くようになりましたね。このところ消費者のニーズが変わってきて、『虫除けのニーズ』がどんどん高まっているそうです。アースの殺虫剤関連の商品のうち、25%は虫除け商品になっているんです。ところがお店の売り場には『殺虫剤』と書かれていて、実情に合わなくなってきた。そこをしっかりすり合わせたい、というのがひとつ。また、『殺虫剤』という言葉の印象が強いので、買うのを控える・・・という層が一定数いる、ということも分かった。成分としては安心安全なものなのに、言葉の強さで敬遠されてしまったり、また、強そうだから少量しか使わないという人もいる。そうするとの十分な効き目がない。虫は感染症の恐れもあるのでなんとかしたい。そこで、『虫ケア用品』という呼び方に変えようということだそうです。
★じっくり取り組んで、定着を目指します!
アース製薬のホームページではすでに『虫ケア用品』となっていて、渡辺さんは、これから小売店の売り場や同業他社など、業界全体に呼びかけていきたいと言います。ただ、インターネットでは”虫が元気になりそうな呼び方だ”とか”虫をケアするの?”という声も出ています。『虫ケア用品』という呼び方、広がるでしょうか。渡辺優一さんにぶつけてみました。
- 渡辺優一さん
- 「”オーラルケア”という言葉も最初は、分かりにくいというイメージもあったと思うんですけど、やっぱり使われるとしっかり定着してくるということがあるので、この『虫ケア用品』も、我々いろいろなところに説明はしていて、分かりにくいという意見は出てくるんですけど、賛否両論あるのは最初から分かっていたので、粘り強く言い続けていきたいと思っています。」
いつからか、口臭・口腔ケアを、”オーラルケア”と呼んでいますね。確かにすっかり定着しています。『ハンドケア、というと、ハンドを守るものですものね?』と渡辺さんに聞いたところ、『UVケア、にきびケア、などもあるように、それから守る、と言う風にも使っているんですよ。』とおっしゃっていました。虫から守る、『虫ケア用品』ということなのですね。
殺虫剤関連の市場は1200億円といわれているそうですが、アース製薬は『虫ケア用品』という言葉に変えて、100億円の市場拡大をねらうそうです。ちなみに同業他社の反応はどうか、伺うと『まだ、様子見』ということでした。
”消臭”とか”殺虫”という言葉に対する消費者の印象の変化をどううまくとらえるか。言葉のイメージは時代によって変わっていくから同じ商品でもアピールする言葉を考えないといけないんですね。
![「現場にアタック」近堂かおり](http://static.tbsradio.jp/wp-%20content/uploads/2016/03/sump_kondokaori-300x300.jpg)
近堂かおりが
「現場にアタック」で取材リポートしました。