東京商工リサーチによると、飲食業の今年の10月までの倒産件数は、去年の2割増しで推移。その背景には、人件費の高騰などで、人を確保できない人材不足があるといいます。きょうは、そうした飲食業の人手不足を補う”機械”のお話です。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!11月15日(水)は、レポーター近堂かおりが『食品業界の人材不足を、小さい食品機械が救う!?』をテーマに取材しました!
★卓上焼き鳥串刺し機
まずは、焼き鳥などの食材の自動串刺し機、シェア9割のリーディング企業、コジマ技研工業常務の齋藤信二さんのお話です。
- 齋藤信二さん
- 「以前は工場で・・・焼き鳥が刺すのが大変だ、簡単な機械でいいので作れないの?という声が多かったもので、卓上機に食材を置いてレバーを下げれば2秒で刺しあがってしまう機械を準備しています。うなぎなんかを一度に刺す機械も取り揃えておりますので6種類くらいの卓上機を取り揃えています。それがうなぎ上りに売れるようになった。本当に毎日問い合わせ頂いています。今日も10件くらい頂いた。そもそも売れるというのは、人手不足というのがある。仕込みするのが開店に間に合わないくらい。人がいなくて刺すことができなくなっている。すぐやめてしまうのが実情。これ高齢化の波も来ている。1時間に100本くらい刺す人がおられなくなってしまった。それだけ刺す仕事は、難儀だ、ということなんですね。」
今までは、工場で大量に串刺しをできる機械をつくってきたのですが、ちいさな店舗からもっと小さい簡単な機械はないのか、という声が多くなってきた。そこで開発したのが、”ちびスケシリーズ”という、お店のテーブルにも乗る、卓上サイズの串刺し機。これが大人気!!
縦横約50センチほどの機械で、専用の型の上に食材を並べ、ボタンを押すと大体2秒に1本串を刺す。つまり1時間で300本ほど出来上がる!熟練の人でも、1時間に100本~150本、と言いますから、大体3人分の作業に相当!!正直、これはスゴイですよね。人手不足の解消に、時給を上げて人を集めるか、小さな機械を買ってまかなうか・・・両者を比べてみて、機械のほうが安い!と導入を決める店主さんも多いようです。
引き合いが多い背景には、アルバイトの人などを雇っても、その串刺し作業の難しさに定着しない、という現状があるということでした。機械ならば、熟練・新人にかかわらず、同じ品質の仕込みができるようになりますからね。
★見回してみると、小さな機械増えてますよ!
そうした人材不足に対応するための機械、ということについて、齋藤さんはこんなことを感じているそうです。
- 齋藤信二さん
- 「やはりまだまだ食品業界はアナログ思考が強いんですよ。なんでかっていうとものが寸法があってないようなもの、肉の厚みまちまちなもんですから、ロボットが対応するのは難儀するんです。その中でロボット化というのは多くなっています。最近の声としたら、やはり機械がコンパクトになっています。つくねを丸くする機械が店舗向け卓上機も出てきている。肉をカットするマシーンも本当に加工工場で使うような機械が、お店で使えるようなものに変化している。コンパクトになっている、戦略は似ているのかなと。そこはお手頃価格を開発に盛り込みながら作っていきます。」
小規模のお店にも入るような、小さな機械が増えている、と実感があるそうです。やはり、そういった需要が増えているのでしょうね。齋藤さんたちは価格については、小規模の飲食店でも手が届きやすい値段、ということも意識して機械をつくっている、と話してくださいました。そういった小さな食品機械を扱う業界団体、日本厨房工業会にうかがったところ、厨房機器市場はリーマンショック以降、毎年3%増。業界団体でも把握しきれないほどの数の機器があって、具体的にどの機器が伸びているとまでは言えないそうですが、厨房の中の機器が買われているのは、確か、といえそうです。
★異業種から食品機械市場へ!!
そうした、市場に可能性を感じて、異業種から参入する会社もでてきました。精電舎電子工業、東日本支店営業部、山本泰裕さんのお話です。
- 山本泰裕さん
- 「私どもは、プラスチック樹脂を溶着・切断するという機械を作っておりまして、その技術はいろんな応用ききますので、食品の方に転換したという形です。ケーキというのは、必ず中にフルーツが入ってることが多いですよね。フルーツが入っている断面ですと、普通の刃物で切りますと、スムーズに切れなくて、断面、フルーツが下がって汚くなってしまって。それで超音波カッターだとスパッときれますので作りました。お客様の要望で、手で切りたいという職人気質の人が多かった。そのために包丁によく似た形の超音波カッターを作りまして、今ご案内している形です。」
こちらの会社は、もともとは、超音波を1秒に2万回から3万回振動させて、プラスチックの樹脂などを切ったりする、特殊な工業機械を作っていたのですが、その技術を食品に展開。中にいろんな硬さの食材が入った”テリーヌ”。いちごやみかんが入った”ゼリー”、ケーキバイキングなどの小さい四角いケーキなど。そうしたものを綺麗に切りたい、という需要があるということです。
★おいしく作る、って大変!
ただ当初は、加工工場のような大きなスペースで、プレス機の上に載せて、上から下に切るようなカッターを作っていたそうなのです。しかし最近は、手で持つ、ハンディタイプのカッターの販売に力を入れています。
その理由について、山本さんのお話です。
- 山本泰裕さん
- 「私ども全くの異業種参入ですから教えてくださいと色んな食品会社を回った。ハンディカッターは、全く考えてなくて、工場のラインに売ろう売ろうと思っていた。いやいや待てよ。実際にはチェーン展開で10店舗20店舗だと機械化できてなくてパティシエが一個一個切っていて、そこでもうちょっと人手を増やすとなると、アルバイトの延長みたいな人が増えてくる。そうなるとクオリティのところで困っている。ケーキっていうのも安いようで高い、ホールケーキ一個失敗してしまうとロスになる。ただ機械化というのは大きな装置を考えるが、小さな機械が欲しい。今売り手市場で採用がなかなか難しい時期に入っているんで、限られた人数の人間で熟練じゃなくても、ものがちゃんと切れるというのは重要。」
やきとりの串を刺すにしても、ケーキを切るにしても、訓練や経験が必要な技術です。しかし、特に中小規模のお店では、そういった技術を持った人材を確保するのも、技術がつくまで育てていくのも、難しくなっているのです。人材不足のなかで、味や見た目など・・・いかにその店の商品のクオリティを揃えていくか、いかに均一の品質を実現するか、というのは共通の課題なのですね。
人材不足はまだまだ解消される気配がありません。そうなると、小さめの食品機械はますます広がりをみせそうです。