9月29日は「クリーニングの日」。衣替えのこの時期、ちょうどクリーニングを利用する方も多いと思います。きょうは、そんなクリーニング業界が頭を悩ませている“ある問題”について、9月28日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
先日、クリーニング業界の“ある問題”に関する調査が行われました。まずは、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・事務局長の金子征実さんのお話です。
★全国9割のクリーニング店が「長期放置品」を抱えている!
- 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・事務局長 金子征実さん
- 「『長期放置品』というのは、長い間クリーニング業者を悩ませ続けてきた問題でしたが、正確な実態把握の調査は、今までやったことがありませんでした。調査の結果、約9割のクリーニング店が長期保管品があるという実態が明らかになりました。一番多かったのは3年~5年。中には25年以上という回答もあり、改めて数字で見ると、本当に多くのクリーニング店がこの問題に悩んでいることがわかりました。」
今回は、「仕上がり予定日より数ヶ月〜数年、取りに来ないこ場合」を「長期放置品」と位置づけているようです。シャツやブラウス、布団や絨毯など、様々なものが放置されていることがわかりました。
★「場所も取るし電気代もかかる」100着抱える店舗も苦悩
そこで、実際に四ツ谷でクリーニング店を営む、株式会社サンランドリー代表取締役社長の宮田雅道さんに、放置品について伺ってみました。
- 株式会社サンランドリー・代表取締役社長 宮田雅道さん
- 「長期保管してます。100着ぐらい、一応工場の方に保管してます。やっぱり場所を取るので困っている、取りに来て欲しい。単純に出したのを忘れちゃったとか、引っ越しちゃったとか、色々だとは思うんですけど、忘れてる人が一番多いのでは。一応電話番号を聞いてるお客さんには連絡しますが、繋がらないお客さんだと、こちらも探しようがないと言いますか…。」
やはり保管場所に一番困っているようで、どうしてもスペースを取るので、保管用の部屋を借りているという店もあるようです。年間を通して安定した温度で保管しなくてはならないので、空調管理が大変で電気代もかさみます。また、個人情報保護法が施行されて以降は、プライバシーを気にして、電話番号を教えてくれないお客さんも増えたと仰っていました。
★勝手な処分は許されない法律の壁
では、一定期間たったものは処分することは出来ないのか。クリーニング連合会の金子さんに伺いました。
- 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・事務局長 金子征実さん
- 「あくまでもお預かりしてるもので、所有権はお客様にある。お客様の同意なしに処分するということは、現在の法律では難しいのが現実です。品物には、洋服の価値以外にも目に見えない価値が含まれていることが多いんです。例えばご主人にプロポーズされた時に着ていた服だとか、親の形見だとか。そういったものが含まれていることがあるので、なかなかお預かりした服が20年~30年経っても処分できないクリーニング業者の思いもあるんですね。」
民法上、クリーニングに出した衣類の所有権は客にあり、処分することが出来ません。なので、「返して欲しい」と言われたときのために保管し続けるしかないのが実態という訳です。
保管期間に関する規約を最初に結んでいればいいものの、昔預けたものにはそれが無いことがほとんど。保管料を請求したくても、契約を結んでいないのでこれもまた難しいんです。
★「40年前のワンピースを取りに行っていない」ワケ
では、どうしてクリーニングの取り忘れが起きてしまうのか。街の人に聞いてみました。
- ●「単純に忘れてた。仕事が残業してしまってクリーニング屋さんに行く時間が無かったり。」
- ●「ありますよ。やっぱり冬物のセーターをそのまま忘れて、いざ寒くなって着ようとした時に無いから、クリーニング屋さんに行くと預かってくれてる。私は忘れちゃってるんです、ズボラだから。」
- ●「ワンピースを、夏の終わりに出してずっと忘れちゃってて、取りに行かなかったことがある。クリーニング屋さんに行くの怖くなってしまって、あんまり今は出してないです。もう40年ぐらい前ですね。
(もしかしたらクリーニング屋さん保管してくれてるかもしれないですね)そうかもしれない。だからクリーニング屋さんとも仲良くしておいた方がいい。馴染みの近場だと私がどこの誰さんか分かってるから『あら、あなた忘れてるわよ』とか、コミュニケーションも大事だと思う。」
みなさん、忙しかったり、忘れていたりと、理由は様々でした。3人目の方が言っていた、「思い出しても取りに行きづらい」というのは分かる気がします…(なんとなく気まずい?)。
★忘れていませんか?この機会に思い出してみて
では、この長期放置品について、クリーニング業界はどう解決していけば良いのか。最後に、クリーニング連合会の金子さんのお話です。
- 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・事務局長 金子征実さん
- 「やはり民法上の“所有権”という大きな規定がありますので、『民放の規定はこうだけど、こういう状態になれば一定の措置を講じてもいいですよ』と国が定めて頂かないと難しい。業界の自主基準だと、なかなか消費者サイドは納得されないんじゃないかと思いますので。そういった働きかけを、今回のアンケート結果をベースに、行政等に働きかけていきたいと考えています。」
現在の法律では店側が処分することは出来ないため、一定の保管期間を過ぎた場合のルール作りなどを、行政に訴えかけていくということでした。また、下(↓)ようなポスターを店頭に張り出すなどして、お客さん側にも問題を知ってもらう取り組みも行っていくそうです。