けさはご飯のお供“海苔”のお話です。実は隠れた海苔の名産地・千葉県がその知名度を上げるために、今年からさまざまな取り組みを始めています。9月5日(火)は、レポーター中矢邦子がTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で『千葉県の海苔オーナー制度』について取材報告しました。
★「江戸前ちば海苔」をもっと知ってほしい!
まずは、千葉県の海苔の生産の現状について、千葉県・農林水産部・水産課でのり担当の宮部多寿さんに聞きました。
- 農林水産部・水産課 宮部多寿さん
- 「もともと千葉県って“江戸前海苔”の約97%を占めるほど江戸前=千葉でやってきたんですが、一般の方達が千葉で海苔を作っているということを知らない現状があります。また、千葉海苔は品質の良さから贈り物として使われてきましたが、最近贈り物で海苔を贈ること自体減っていて、段々コンビニの海苔みたいな海苔の需要が高まっています。実際、海苔を作る生産者の数が減っている中で、県としては、海苔をこれからもずっと作って頂けるような地盤を作っていきたいと考えています。」
“江戸前海苔”と聞くと“東京の海苔”と思われがちですが、実際には東京湾に面した千葉の内房などで200年前から作られています。しかしネーミングのせいか千葉県が海苔の産地だとはあまり認識されていないようです。実際に昨日街の方に聞いたんですが、江戸前海苔が千葉で作られていると聞いてピンとくる方はいませんでした。
そして、売り上げが減少していて、高級な“江戸前海苔”はお歳暮やお中元のギフトとして親しまれてきましたが、最近は贈り物も多様化しています。昨日聞いた人の中には、ジュースをギフトとして配っていて海苔は贈ったことがないとお話していました。
さらに、後継者不足で作り手も減っている課題もあります。
★「ちば新海苔オーナー」は初日で予約いっぱいに
このままだと千葉の海苔産業は衰退する一方・・・。そこで、千葉県は今年から「海苔販売促進基本方針」という五か年計画を打ち出し、その計画の1つが今月始動しました。いったい、どんな計画か?千葉県木更津市の金田漁港でのり生産を行う、金田漁業協同組合・石川金衛さんのお話です。
- 金田漁業協同組合 石川金衛さん
- 「”海苔のオーナー制度“を実施して、1口1万円で100枚の乾燥海苔をお渡しできればと考えています。有名デパートの贈答品売り場によくある1万5000円の値段のもの・・・それ以上と思って頂いて結構です。1月末にはイベントとして天日干・海苔すき体験・漁場見学等を行う予定です。9月1日の9時から200口という形の募集をかけたんですけど、既に430口以上の申し込みが来ています。」
募集開始からわずか5時間で定員の2倍以上の応募が来て、石川さんは嬉しい悲鳴をあげていました。応募は既に締め切っていますが、1口1万円で1万5000円以上の高級海苔がもらえて、イベントにも参加できるとなるとかなりお得ですよね。年齢層は「昔江戸前海苔を食べたことがある」という50代以上が多かったそうです。
★リピーター65%!松阪市の黒海苔オーナー
このように1年目でかなりの反響!この人気、2年目以降も千葉県としては続いてほしいところです。果たしてうまくいくのか?実は、オーナー制度では先輩がいました。三重県松阪市で、今年で8年目になるそうです。松阪=松阪牛だけではなく海苔にも力を入れているんですね。では、8年続けてうまくいっているのか?詳しいお話を松阪漁業協同組合・黒のり生産部会代表の大橋純郎さんに聞きました。
- 松阪漁業協同組合 大橋純郎さん
- 「8年ほど前から“黒海苔のオーナー制度”をやっていて、結構応募があります。リピーターさんは65%超えていて、8年続けて応募されている人も結構います。一部、企業もオーナーになって、社員食堂で皆に食べてもらったりもしています。私も71歳になりますからあと何年続けられるか分かりませんが、直接消費者さんが“去年の海苔美味かったな、来年も頼むわなー”と言われると頑張ろうと、その気になってしまいます。」
特に、地元の企業が10社ほど、地域貢献の一環でオーナーを続けているそうです。松阪漁協の海苔業者は大橋さん含めてもう2人だけという中で、オーナーさんから直接応援の手紙を貰うなどの期待の声が、海苔漁師を続ける意欲にもつながっているとお話されていました。
★金田漁協イチオシ「青混ぜ海苔」が不作・・・
松阪市のように、千葉県の海苔オーナー制度も上手く続くと良いと思ったのですが、ある問題があるそうです。ふたたび、金田漁業協同組合の石川さんのお話です。
- 金田漁業協同組合 石川金衛さん
- 「去年の秋に青海苔が無くなって黒海苔しか残りませんでした。一昨年までは、黒い海苔に青いのがポツポツ入ってる“青混ぜ海苔”は金田漁協のウリですよと言えたんですけど、去年は秋の青混ぜがほとんど取れなかったんです。」
私たちが普段食べているのは“黒海苔”。“青混ぜ海苔”は黒海苔に青海苔の胞子が少し混ざったなかなか取れない貴重なものです。
実際に私も青混ぜ海苔を食べたんですが、口に入れて少し経つと鼻までふわっと広がる“磯の香り”が黒海苔との違いでした。中には青混ぜ海苔しかもう食べられないという方もいらっしゃるそうです。
★青海苔を食べてしまうクロダイ対策が急務
金田漁協独自のウリの青混ぜ海苔。イベントでオーナーさん達にも試食してもらいたいのに、去年はほとんど取れませんでした。では、今年はどうなるのか。金田漁協の40代の海苔漁師、齊藤正臣さんは漁師仲間と共にある策を考えています。
- 海苔漁師 齊藤正臣さん
- 「クロダイが海苔を食べてしまう、青海苔も含め海藻類を食べてしまうんですね。そういうのでちょっとクロダイ対策だったり、クロダイの放流をしている団体もあるらしく、そういう所と話し合いの場を設けながらやっていこうかなという取り組みを今しようとしてる段階です。」
青海苔が取れなかった原因の1つは、クロダイによる食害と考えられています。せっかく海苔オーナー制度が始まりましたし、今年は被害が減るといいですね。