スペシャルウィークの今週は【あなたの街の現場にアタック!】と題して、身近な街の話題を取り上げます。8月23日(水)に取り上げた街は、神奈川県の相模原市。いま相模原市では、公民館の有料化をめぐって、一度立ち止まるべきではないか、という声が上がっている、というのです。そこで・・・、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは、公民館の有料化に反対する市民グループ『相模原の宝 公民館を守る会』代表の中屋重勝さんに聞きました。
★公民館は相模原の宝なんです!!
- 中屋重勝さん
- 「唯一といっていいくらい大事なのが公民館。例えば、相模原は市バスとか市立の病院とか無いんですよ。前は、野原の所が、今や住民が増えて、それで政令市になったという経過があるわけ。みんな市外から来る人ですから、そう人たちが公民館で色んなサークル活動したり、学級をやる中で繋がりを作っていく、という役割を公民館が果たしてきた。公民館で育ったという人がいっぱいいるわけですよ。1時間百円だとか、一人当たり40円だとか70円だとか説明するんだけど、そういう額の話ではなくて、有料と無料の間にある、大きな隔たりを説明すべきだし、すごく怒りを感じますね。」
そもそも公民館とは、社会教育法で規定されている、図書館や博物館と並ぶ、教育機関で、市町村などが一定の区域内の住民のために設置するものです。そこを拠点にして、地域の住民が、PTAの活動や、サークル活動などで、集まる場。特に相模原市は、神奈川県内でも一番多い、32の公民館があり、それぞれが非常に活発な活動が行われているのです。
現時点での市の案では、一部屋当り、大体100円から500円の負担で、年間7000万程度の収入を想定しています。
市は現状では、公民館に関しては年間5億7千万円を負担しているので、その一部を担ってもらえないだろうか、ということなのです。(ちなみに人件費や光熱費や掃除の費用に充てる想定。)
しかしある市民団体の試算によると、例えば一つのサークル単位で、年間25万円。ひと月1人あたり2000円の負担なります。そう考えると、結構な値段ですよね。守る会では、8月10日には相模原市長に2万4千を超える有料化反対の署名を提出。一般市民への周知も不可欠、ということで、独自にチラシを配るなどの活動をしています。
★相模原市民の意見は・・・?
- ●「知っておりました。普段やはり公民館使ってるし、サークル活動。正直痛いですけど仕方ないのかなと。使わない人のことを考えると・・・。」
- ●「市役所前の駐車場とか有料化になってるから公民館も有料になると聞いている、せめて市民が使う物くらい、世知辛い世の中、無料のものがあればいいな。年寄住みにくい!」
- ●「優しくないなって。子供の発表会とか、そういうので使う時とかも、有料と無料じゃ気持ちが違う。他のことにお金をかけれるので、ステージ飾りだのなんだの、有料で設備が増すならいいんですけどね。」
お金とるんだったら設備を求めてしまう!という意見には、思わずなるほど!と思ってしまいました。相模原駅前で話を聞いたところ、有料化の話について7割くらいの人がご存知。みなさん、何かしら公民館の利用をしているようで、自分と公民館の関わりを話してくれました。お話を伺った印象としては、やはり相模原のみなさんにとって公民館が非常に身近な存在だ、ということ。
★相模原の公民館は大変評価されている!
ここまでしっかりと公民館が相模原市民に根付いているのには、歴史的背景があるそうなのです。相模原市で10年間の公民館職員の経験もある、元教育委員会職員の安立武晴さんに教えていただきました。
- 安立武晴さん
- 「昭和24年から相模原の公民館は作られていく。その後昭和49年に相模原市公民館整備基本計画というのが策定される。そこでは公民館は『社会教育の機関』だよと位置づいて作られていく。昭和50年代には、10年間で15の公民館が作られる。この間は、相模原市は人口急増で1年間に学校を5つも作るそんな時代。ですから私たちは公民館の4つの原則を作って。それは教育委員会、市が作っている。その一つは、貸し館の無料の原則をうたっている。60万都市の中で、それだけの体制は全国的にも非常に珍しいほとんどない。そう意味で大変評価されている。こういう歴史があるんですね。」
相模原市には『公民館は、社会教育の機関』という位置づけをした、昭和49年の計画があった。その後、人口増加に合わせて、公民館も増えていく中で、公民館の4つの原則を設けました。4つの原則とは、”住民主体であること””地域主義であること””教育機関あること”そして、”無料であること”。反対する人は、この原則の一つを破ることに抵抗をもっているのです。
★市としてももちろん公民館は大切なのですが・・・。
それでも有料化しないといけないのはどうしてなのか?相模原市役所の生涯学習課 藤田知正さんに聞きました。
- 藤田知正さん
- 「長い間無料だったものを頂くとなると、抵抗があるかなと思います。右肩あがりの時代でしたらよかったのかもしれませんが人口推計で行くと、平成31年度をピークに下がっていくだろうという見通し。今後のことを考えると、一部負担を頂かないといけないなと。平成24年のときに市で受益者負担の在り方の基本計画を立てまして、例えば例えば図書館や博物館入場料とりませんという決まりが法律上あるんですけど。
そういう規定がない場合は、施設を維持していくためにも、お使いになる方ならない方の公平性を鑑みて、使用料を頂くというというお願いを決めたところです。」
公民館が大切な場であることは、市としても同じ。しかしながら、財政が厳しいというのがまず一つ目の理由。そしてもう一つ、平成24年に作った受益者負担の在り方の基本計画(使う人がお金を負担するという市の計画)。公民館というのは、社会教育法という法律に沿って作られたもので、その中では、公民館の利用について有料か無料か、は書かれていないのです。
その点、図書館や博物館については、それぞれ明記されています。
★公民館の利用は無料、と書かれていないのは・・・?
ただ、先ほどの元教育委員会職員の安立さんは、”書かれていない””明記されていない”ということの意味について、こんな話をしてくださいました。
- 安立武晴さん
- 「社会教育法にもともと、公民館の利用は無料と書かれていたらこんな問題は起きていない。公民館は、社会教育の施設。教育施設というのは、一般の施設と同じように受益者負担の対象になるのかというところで、そのとらえ方が、間違っていると思います。公民館は、有料無料の議論の余地がない、自明の理であるから、あえて書かれていないと法を解釈する人はいっぱいいます。昭和49年、相模原公民館基本計画を作った時にも、その中にも有料・無料は何も書かれていない。私も参加していましたが、そんなこと議論にもならなかったですよ。」
当時を知る人は、教育機関としての公民館は、無料が当たり前という空気があった、といいます。だからわざわざ無料と有料という決まりもなかった、 自明の理だから明記されていないんだ、という理解なんだ、と。相模原の公民館有料化の問題は、根幹である社会教育法の解釈の違いにも関係する問題でした。
全国的に、有料化や業務委託が増える公民館。今回の取材をしてみて、歴史もあり、活発な形でしっかりと地域に根付いている相模原市の公民館だからこそ、このままの形で残って欲しいな、公民館のあるべき姿を全国に見せ続けて欲しいな、という気持ちになってしまいました。来月9月の議会に公民館の有料化案が提出され、そのまま通れば、来月6月から実施になるそうです。
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近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。