先月、消費者庁が、スニーカーやウォーキングシューズなどの「靴底の剥がれ」が原因で転倒事故などにつながるケースについて、報告書をまとめ発表しました。こうした運動靴のトラブルについて、7月31日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
詳しいお話を、消費者庁の消費者安全課・事故調査室の米山眞梨子さんに伺いました。
★運動靴の靴底の剥がれ、素材の劣化などが原因
- 消費者庁・消費者安全課・事故調査室 米山眞梨子さん
- 「一般の方から消費者調査安全委員会に『10年位前に買って最近も1週間に1回時々履いていたようなスニーカーを履いて歩いていたら、底が剥がれて転んでケガをしてしまった』という報告があった。それをきっかけに、確かに靴底って剥がれることあるよね、ということで、状況を調べてみようということになった。
一般の方にインターネットアンケートをした結果、“割れた”“剥がれた”という方もいっぱいいたが、“靴底が剥がれて滑って転倒した”という方が、2400人中、延べ111人もいた。」
今回のアンケートでは、革靴やサンダルではなく、運動靴について調べたものです。この、運動靴の“靴底トラブル”の原因については、靴底に使われているポリウレタン素材の経年劣化や、靴本体と靴底の接着に使われているポリウレタン系の接着剤の経年劣化でくっつく力が弱まって、剥がれてしまうことがあるようです。
更に、「靴底のトラブルの経験はありますか?」と2400人に尋ねたところ、例えば「スニーカーを持っている」と答えた約2200人の内、「靴底が割れたことがある」が287人、「歩行中に靴底が剥がれた」が292人、「歩行中に靴底が剥がれて滑った、転倒した」という人が32人もいたということです。
また、消費者庁には、事故事例として『昔買った新しい靴を履いて階段を降りていたら、靴の先が剥がれ、点灯しそうになった。メーカーに連絡したら経年劣化が原因と言われた』、『5年前に購入し、数回しか履いていないテニスシューズ。プレイ中にソールが剥がれ、転んでけがをした』などの報告も寄せられいるようで、あまり履いていなくても、長期間保管していた靴が経年劣化し靴底が剥がれた、という事例もあったということです。
★長期間保存しているその運動靴、大丈夫?
では、運動靴で靴底が剥がれるなどの経験、みなさんはあるのでしょうか?街の方に聞いてみました。
- ●「ランニングシューズで経験ある。感触的にペコペコして、ちょっと見てみたら全体的に剥がれかけていて捨てようと。2年ぐらい、ずっと使っていた。」
- ●「スニーカーがつま先からパコってめくれた。劣化してたので、新しいのに代えた。」
- ●「パカって、先端からペロンって。安い靴だったからか、割れたというより剥がれた。接着剤買ってくっつけたけどダメだった。そんなに履いてなかったが、当然危ないよね、つまずいたりするから。」
- ●「運動靴のかかとが剥がれた。4~5年くらいして。つま先もペロンとなったことがあるが、接着剤で直した。1年位大丈夫。」
幸い、転んでケガをしたという方はいませんでしたが、意外と多くの方が、運動靴の底が剥がれた経験を持っていました。
★靴底の剥がれ、知らない人も多かった
一方、靴底の剥がれについて聞いていると、こういった声も多くありました。
- ●「普通の靴は剥がれるけど。今聞かれて『スニーカーも剥がれるんだぁ~』って感じですね。私も剥がれたことないし、見た事がない。」
- ●「地元が田舎なんですが、田んぼ道に一本だけ道路があって、そこにペロンって落ちてた。」
- ●「スニーカーは外れるイメージが全然ない。革靴はしょっちゅう剥がれて修理屋に持っていくが。」
- ●「経験無いから剥がれるって思ったことがない。長く使った靴もあるが、汚れて捨てちゃったり、剥がれるまで履いてない。」
靴底が剥がれた経験もないし見たこともないので、靴底そのものが剥がれるとは思っていなかった、という人。それから、革靴だったら剥がれた経験があったり、剥がれている人のを見た事があるけれど、まさかスニーカーの靴底が剥がれるとは思っていなかった人も多くいました。
★違和感があるときは、靴底のチェックを!
こうした声は消費者庁もアンケートで把握しているそうで、事故調査質の米山さんは、最後にこのように話してくれました。
- 消費者庁・消費者安全課・事故調査室 米山眞梨子さん
- 「靴底の剥がれを知ってる方が多いような気がしていたが、実際にアンケートしてみると、『知らなかった』という方のほうが、若干ながら多かった(剥がれる事を全く知らない=56・5%)。
特に、これから健康のために靴を履いていっぱい歩きましょうという中高年が増えてきたときに、靴底が剥がれるかもしれないということをちょっとでも知っていていただければ。履く前に『大丈夫かな』とか、歩き始めたときに『なんか変だな』と思ったら、靴底を確認してみようと。そういうことをみなさんに知ってもらって、靴底の剥がれで転ばないようにして頂きたい。」
消費者庁の調査では、運動靴の靴底が剥がれることについて「知らない」という人が半数以上もいたということで、まずは、「剥がれることがある」という認識を持ってもらい、いつもと違いを感じた場合は、靴底のチェックをして転倒事故などを防いで欲しいと話していました。